政府は民法の成人年齢を「20歳」から「18歳」に引き下げるための改正案を、早ければ来年の通常国会に提出する方針を固めた。
成人の年齢については、選挙権を得られる年齢が18歳以上に引き下げられたことを受け、自民党の特命委員会が2015年、民法の成人年齢も合わせて引き下げるべきとの提言をまとめていた。
民法の成人年齢が引き下げられることで、18歳、19歳にはどんな影響があるのか。お酒やタバコなども18歳、19歳に認められることになるのか。髙橋直子弁護士に聞いた。
●「消費者被害の拡大を懸念」
「現行の民法においては、未成年者が単独で行った法律行為については、未成年者であることのみを理由として取り消すことができます(5条2項)。
成年年齢を18歳に引き下げると、18歳、19歳は未成年者であることを理由に法律行為を取り消すことができなくなります。
その結果、悪徳業者のターゲットとされて、不必要に高額な契約をさせられたり、マルチ商法の被害にあったり、オンラインゲームで高額な課金をされたりするなど、消費者被害が拡大することが懸念されます。
また、自立が困難であるにもかかわらず、18歳、19歳は親権の対象からはずれ、親の保護を受けられなくなることや、未成年者に不利な労働契約を解除できるという権利(労働基準法58条2項)を失うことにより、労働条件の劣悪ないわゆるブラック企業等による被害が拡大するおそれがあることも、デメリットとして指摘されています。
反面、成年年齢を引き下げることで、自己決定権を早期に十分に実現し、大人としての自覚を促すことができるというメリットがあるともいわれています」
●酒タバコ「子どもの利益と社会全体の利益を実現する観点から、個別具体的に検討を」
お酒やタバコなど、未成年には禁止されている嗜好品も解禁されることになるのか。
「若年者の健康被害の防止の観点から、未成年者飲酒禁止法、未成年者喫煙防止法は、20歳に達しない者の飲酒、喫煙をそれぞれ禁止しています。民法の成人年齢引き下げによって、当然に、飲酒、喫煙の年齢も引き下げられるわけではありません。
とはいえ、民法の年齢引き下げの議論の中で、選挙年齢と民法の成人年齢をそろえるのが法制度としてシンプルであるという意見も出されており、民法の年齢引き下げがなされると、引き続き、他の法律の成人年齢もそろえる方向の動きが強まることは予想されます。
成年年齢について定めた関係法令は、民法の他にも少年法、競馬法など200以上存在するとされています。それぞれの法律によって、立法目的や保護法益は異なっています。
年齢区分については、一律に引き下げればよいというものではなく、子どもや若者の最善の利益と社会全体の利益を実現する観点から、個別具体的に検討される必要があります」