太っている、いびきがうるさいことを理由に、夫に「もう無理。別れたい」と離婚を突きつけられたーー。弁護士ドットコムに40代の女性が悩みを寄せています。
相談者夫婦は結婚8年目、子どもはいないようです。結婚後に20キロ太り、夫に「痩せたら? いびきがうるさい」などと言われることが何度もあったといいます。
相談者は夫に離婚を突きつけられてから、ダイエットといびきの治療を始めたようです。しかし、夫からは「(相談者が)痩せても、いびきが治っても、1度離れた俺の気持ちが戻るかは分からない」と言われてしまったとのことです。
相談者は離婚をしたくないと考えています。このような理由でも、離婚が成立してしまう可能性はあるのでしょうか。
●ただちに離婚が認められることはない
夫婦2人の話し合いにより合意すれば、どんな理由であっても離婚することは可能です(協議離婚)。しかし、今回のケースの場合、相談者は離婚をしたくないと考えていることから、協議離婚は難しいでしょう。
協議離婚できなかった場合には、裁判所での調停、裁判へと進みます。この場合には、法律(民法770条1項)が定める離婚理由が必要となります。
民法770条が定める離婚事由は、(1)不貞行為 (2)悪意の遺棄 (3)生死が3年以上、明らかでないとき (4)配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき (5)その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき、の5つです。
今回のケースは、(1)から(4)にはあたらないでしょう。しかし、「(5)その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」と判断されれば、離婚が認められる場合があります。
ただし、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるか否かの判断はケースバイケースです。判断にあたり、裁判所はさまざまな事情を総合考慮します。
そして、夫婦関係が破綻し、回復が困難であり、これ以上は結婚生活を続けていくことが難しいと判断された場合に、離婚が認められることになります。
相談者の夫は「いびきがうるさくて眠れなくなり、健康に支障をきたした」と「健康被害」を訴えているようです。しかし、妻が太っていることやいびきがうるさいことのみで、ただちに「婚姻を継続し難い重大な事由がある」と判断されることはないでしょう。
●「人の気持ちばかりは法律では強制できない」
もし、いびきが原因で相談者が夫と別居をすることになった場合は、別居期間も考慮されます。別居のみで離婚が認められることはありませんが、長期間の別居が続いた場合は、夫婦関係が破綻しているとして、離婚が認められる場合もあります。
ただし、長期間の別居が続いていたという理由で、ただちに離婚が認められるわけではありません。別居期間中に夫婦の間に定期的な交流があるなどの事情があれば、夫婦関係が破綻していると認められにくくなります。
小田紗織弁護士は「夫が離婚したい理由は『妻が太っている、いびきがうるさい』ということですが、結局はそれを受け入れることができないほど愛情がなくなってしまったということです。人の気持ちばかりは法律では強制できません。そのため、夫が離婚に向けて、別居などの具体的な行動を起こせば、いつかは離婚になるでしょう」。