離婚して苗字を変えない「婚氏続称」の手続きと期限・デメリット

離婚後も苗字を変えない「婚氏続称」。実は、約46%の方が離婚後の苗字を変えない選択をしています。

この記事では、婚氏続称のメリットや手続きと期限、子どもの戸籍の扱いなど、将来後悔しないためのポイントを解説します。

目次

  1. 離婚して「苗字を変えない」割合は約46%|旧姓に戻す場合との違い
  2. 離婚して「苗字を変えない」メリット・デメリットと後悔しやすいポイント
  3. 旧姓に戻す場合に必要な名義変更の手続き一覧
  4. 離婚して「苗字を変えない(婚氏続称)」ための手続きと期限
  5. 離婚して苗字を変えない場合でも「子どもの戸籍」手続きは必要
  6. 離婚後に苗字を変えなかった後、やっぱり「旧姓に戻す」ことはできる?
  7. 【まとめ】離婚後の苗字は、手続きの負担と将来の気持ちを踏まえて決断を
  8. 離婚後の苗字に関するよくある質問(FAQ)

離婚して「苗字を変えない」割合は約46%|旧姓に戻す場合との違い

離婚の際、「苗字を変えないのは少数派?」と不安になる方もいますが、決してそのようなことはありません。 離婚後の苗字の選択に関する統計データ

※参考:法務省「戸籍統計(2024年度)」より作成

法務省の「戸籍統計(2024年度)」によると、離婚後も婚姻中の苗字を使い続ける手続きである「婚氏続称(こんしぞくしょう)」を選ぶ割合は「約46.2%」にのぼります(離婚件数18万7,680件に対し、婚氏続称は8万6,741件)。半数近くの方が、「離婚後も苗字を変えない選択」をしているのです。

離婚すると自動的に「旧姓に戻る」のが原則

民法では、離婚が成立すると婚姻によって氏を改めた人は「婚姻前の氏に復する」と定められています。これを「復氏(ふくし)」と呼びます。 たとえば、結婚で夫の苗字に変えた妻は、離婚届が受理された時点で自動的に旧姓に戻るのが原則です。特に別の手続きをしなければ、離婚後は旧姓で生活することになります。

離婚後も今の苗字を名乗れる「婚氏続称(こんしぞくしょう)」

離婚後は「婚姻前の苗字に戻る」のが原則ではありますが、婚姻中の苗字をそのまま使い続けたい方には、「婚氏続称(こんしぞくしょう)」という制度があります。 婚氏続称は、仕事上のキャリアを維持したい方(旧姓に戻ると取引や実績等に影響が出るなど)、銀行口座・免許証などの煩雑な名義変更の手間を避けたい方にとって、有用な選択肢となります。

苗字をどうするか?に婚姻期間の長さは無関係。自分の意思で選べる

婚氏続称について、「婚姻期間が短いと使えないのではないか」という誤解がありますが、法律上、婚姻期間の長さは一切問われません。 結婚生活が半年であっても10年であっても、本人の意思で婚氏続称を選ぶことができます。また、離婚に至った理由も関係ありません。

元配偶者や義実家の許可・同意は不要

婚氏続称は、苗字を変えた側が自分自身の意思で決められる権利です。そのため、元配偶者や義実家の同意・許可は法律上、一切必要ありません。 相手が「自分の苗字を名乗ってほしくない」と反対していたとしても、ご自身が市区町村役場に「婚氏続称届」を提出すれば、適法に苗字を使い続けることができます。

離婚して「苗字を変えない」メリット・デメリットと後悔しやすいポイント

離婚後の苗字は、単なる手続きの問題だけではありません。 仕事への影響、子どもへの配慮、そしてご自身の気持ちなどを総合的に考える必要があります。 婚氏続称(今の苗字を変えない)を選択した場合の主なメリット・デメリットと、後悔しやすいポイントを整理しました。

メリット1:銀行や免許証など、各種名義変更の手間を省ける

旧姓に戻す場合、生活のあらゆる場面で名義変更の手続きが必要です。主な変更先だけでも以下のようなものがあります。

  • 銀行口座、クレジットカード
  • 運転免許証、パスポート
  • 健康保険証、マイナンバーカード
  • 年金手帳、生命保険
  • 不動産の登記、車の車検証
  • スマートフォン、公共料金の契約

それぞれの手続きで戸籍謄本や本人確認書類の提出が求められ、窓口に出向いたり郵送でやり取りしたりと、時間がかかります。 離婚直後の精神的・体力的に疲労している時期に、これら多くの手続きをこなすのは大きな負担です。

メリット2:職場で旧姓に戻すことによる仕事への影響を防げる

仕事上の名前が変わると、取引先や日常業務で関わる同僚に離婚の事実を知られるきっかけになりがちです。 特に、職種によっては、現在の名前がキャリアや信用の一部になっているケースもあるでしょう。苗字を使い続けることで、取引先や顧客に対して名前を変えずに済み、キャリアの連続性を保ちやすくなります。

苗字を変えない場合でも、多くの場合、配偶者控除(年末調整)や社会保険などの手続きの都合上、勤務先の人事・労務担当者などへは離婚した旨を報告する必要があります。

メリット3:子どもの苗字が変わらず、学校等での負担を減らせる

離婚後、親権を持つ親が旧姓に戻ると、親と子どもの苗字が異なる状態になります。 子どもが学校や友人関係の中で「なぜ親と苗字が違うのか」と聞かれることが精神的な負担になる場合もあるでしょう。 苗字を変えない選択をすれば、親と子どもの苗字が同じままになるため、子どもが学校生活で余計な説明をする負担や、プライバシーを詮索されるリスクを減らすことができます。

【デメリット】後悔しやすいポイント:元配偶者の苗字を名乗る精神的な負担

離婚後、苗字を変えない選択をする最も大きな懸念点は、ご自身の心理的な負担です。 離婚の原因が相手の不倫やDV、モラハラなどであった場合、元配偶者の苗字を使い続けることに強い抵抗感や嫌悪感を抱く方も少なくありません。 実際に「数年経ってからやっぱり旧姓に戻したくなった」と後悔するケースもあります。 手続きの負担を減らすことも大切ですが、ご自身が将来「元配偶者の苗字を名乗り続けること」に納得できるかどうかを、慎重に考えて決断することが重要です。

旧姓に戻す場合に必要な名義変更の手続き一覧

今の苗字を変えない(婚氏続称)を選ぶかどうかを判断するうえで、「もし旧姓に戻した場合、どれくらいの手続きが必要になるのか」を具体的に知っておくことは重要です。 旧姓に戻す場合、あらゆる名義変更が必要になります。主な手続き先と対象を一覧表にまとめました。

手続き先・種類 名義変更が必要なものの例
役所・警察など マイナンバーカード、国民健康保険、国民年金、印鑑登録、運転免許証、パスポート
金融機関・保険 銀行口座、クレジットカード、生命保険などの各種保険
インフラ・契約 スマートフォン・携帯電話、電気・ガス・水道、インターネット回線
財産関係 不動産の登記(法務局)、自動車の車検証(陸運局)
勤務先 社内システム、名刺、給与振込口座などの登録情報

これらの手続きの多くは、「氏名が変更された戸籍謄本」や「変更済みの本人確認書類のコピー」の提出を求められます。また、平日の日中に窓口へ出向かなければならないものも少なくありません。 離婚前後は、引越しや今後の生活基盤の立て直しなどで精神的にも体力的にも疲労が溜まりやすい時期です。そのため、負担を避けるために、「今の苗字を変えない(婚氏続称)」を選択する方も多くいます。 ご自身の状況に合わせて、無理のない選択をしてください。

離婚して「苗字を変えない(婚氏続称)」ための手続きと期限

離婚後も苗字を変えないと決めた場合、具体的にどのような手続きが必要なのでしょうか。 手続きのステップと、守るべき「期限」について解説します。 とくに「期限」は、過ぎると手続きが複雑になってしまうため注意が必要です。

1. 離婚届の「婚姻前の氏にもどる者の本籍」欄は空欄にする

離婚届の「婚姻前の氏にもどる者の本籍」の記入方法 離婚届には「婚姻前の氏にもどる者の本籍」を記入する欄があります。この欄は、旧姓に戻る場合に記入するものです。 今の苗字を変えない(婚氏続称を選ぶ)場合は、この欄は空欄にしておきます。 離婚届だけでは婚氏続称の手続きは完了しないため、別途以下の届出を行う必要があります。

2. 離婚届と同時に「婚氏続称届」を提出する

役所の窓口で、離婚届と一緒に「婚氏続称届」を提出します。
(※正式な書類名称は「離婚の際に称していた氏を称する届」といいます。)
書類は市区町村役場の戸籍担当窓口でもらうか、自治体のホームページからダウンロードして入手できます。記入内容は氏名、生年月日、本籍地などの基本的な情報です。 離婚届と同時に提出すれば、戸籍の記載が一度で済み、手続きが最もスムーズです。 離婚届を先に出してしまうと、戸籍上、一度旧姓に戻ってから再び婚姻時の苗字に変更する処理となり、戸籍が複雑になるなどの手間が発生します。

3. 【要注意】離婚から「3ヶ月」を過ぎると家庭裁判所の許可が必要

婚氏続称の届出は、原則として、「離婚の成立日(協議離婚の場合は離婚届の提出日)から3ヶ月以内」に提出しなければなりません。 この3ヶ月の期限を過ぎてしまうと「旧姓に戻る」ことが確定し、役所への書類提出だけでは今の苗字(婚氏)を名乗ることができなくなります。 期限経過後に「やはり婚姻中の苗字を名乗りたい(旧姓から婚氏に変更したい)」という場合は、家庭裁判所に「氏の変更許可」を申し立てる必要があります。 近年は、このケースでの変更許可も比較的緩やかに認められる傾向にありますが、手続きには時間や費用がかかり、裁判所に「やむを得ない事由」を説明しなければなりません。 苗字を変えないと決めているのであれば、手間を省くためにも、離婚届の提出と同時に婚氏続称届を出すことをおすすめします。

離婚して苗字を変えない場合でも「子どもの戸籍」手続きは必要

婚氏続称を選んだ方がよく見落としてしまうのが、子どもの戸籍に関する手続きです。 前提として、離婚すると夫婦の戸籍は以下のように分かれます。

  1. 筆頭者(多くの場合、結婚時に苗字を変えなかった側):元の戸籍に残る
  2. 配偶者(結婚時に苗字を変えた側):元の戸籍から抜け、新しい戸籍を作るか旧姓の戸籍に戻る
  3. 子ども:親権の有無にかかわらず、自動的に元の戸籍(筆頭者の戸籍)に残る

新しい戸籍を作るか旧姓の戸籍に戻る側が、親権者になって子どもを引き取る場合、「子どもの戸籍も、自動的に自分の戸籍に移るだろう」と考えがちですが、離婚届を出した直後は、親と子どもは別々の戸籍に入っている状態になります。

苗字が同じでも、離婚直後は子どもと「別の戸籍」になる

たとえば、結婚で夫の苗字に変えた妻が、離婚して婚氏続称を選んだとします。 妻は婚姻中の戸籍から出て、自分を筆頭者とする新しい戸籍(婚氏続称の戸籍)を作りますが、この時点では、子どもはまだ元夫の戸籍に残ったままです。 つまり、苗字が同じであっても、戸籍上は母親と子どもが別々の戸籍に入っている状態になっているのです。親権を決めただけでは、子どもの戸籍は自動的に移動しない点に注意が必要です。

子どもを自分の戸籍に移すための2つの手続き

子どもを自分の戸籍(新しい戸籍)に入れるためには、以下の手続きを行う必要があります。

  1. 家庭裁判所に「子の氏の変更許可」を申し立てる
  2. 許可を得た後、役所に「入籍届」を提出する

「苗字は変わらないのに、なぜ『氏の変更許可』が必要なの?」と疑問に思うかもしれません。 実は、法律(戸籍法・民法)上は、「婚姻中の戸籍の苗字」と「婚氏続称で作った新しい戸籍の苗字」は、呼称が同じであっても別物として扱われます。そのため、子どもを新しい戸籍に入れるためには、形式的であっても家庭裁判所で「子の氏の変更許可申立」の手続きを経る必要があるのです。

手続きを忘れると将来の不便につながることも

子の戸籍を移す手続きを忘れてしまうと、戸籍上は子どもが元配偶者の戸籍に入ったままになります。 そのままにしておくと、将来、子どもの戸籍謄本を取得する際に、「元配偶者が筆頭者になっている戸籍を取らなければならない」といった事態になり、不便や混乱を招く可能性があります。 婚氏続称を選んだ場合でも、ご自身が親権者となって子どもを引き取る場合は、必ず子どもを自分の戸籍に移す手続きを行いましょう。 みんなの法律相談には、「離婚後の子どもの戸籍」に関する相談が寄せられています。

子の氏の変更許可申立書の手続きについて

相談者の疑問 1年前に離婚しました45歳男性です。子供2人(16歳と21歳)の親権は子供と同居している元妻が持つことにしました。
>> 質問の続きを見る

川添 圭の写真 弁護士の回答川添 圭弁護士 > 【質問1】
> 手続き進め方について、間違いや不足があればご指摘頂けますでしょうか。

お子さん達が、自分で申立てを行うことを認識していることが当然の前提ですが、>> 回答の続きを見る

離婚後に苗字を変えなかった後、やっぱり「旧姓に戻す」ことはできる?

離婚直後は手続きの負担を避けるために今の苗字(婚氏続称)を選んだものの、心の整理がついた後で「やはり元配偶者の苗字を使い続けることに違和感がある」「自分の旧姓に戻したい」と考えるケースは少なくありません。 一度婚氏続称を選んだ後に旧姓に戻すことができるのか、その手続きと注意点をご説明します。

家庭裁判所での「氏の変更許可」の手続きが必要になる

婚氏続称届を提出して今の苗字を使い続ける手続きをした後、やはり旧姓に戻したくなった場合、市区町村役場への届出だけでは変更できません。 家庭裁判所に「氏の変更許可申立」を行い、裁判所の許可を得る必要があります。 この手続きには申立書の作成や戸籍謄本の提出が必要なほか、収入印紙や郵便切手などの費用もかかります。

旧姓に戻す場合の裁判所のハードルは比較的低い

家庭裁判所が氏の変更を許可するのは、法律上「やむを得ない事由」がある場合に限られます。 一般的な苗字の変更ではこの条件が厳しく審査されますが、「婚氏続称から旧姓(婚姻前の氏)に戻す」ケースにおいては、比較的緩やかに(認められやすく)判断される傾向にあります。 なぜなら、日本の法律では「離婚後は旧姓に戻るのが原則」とされているためです。離婚から数年〜10年以上が経過し、社会的に今の苗字が定着している場合であっても、変更が認められるケースが多くなっています。 ただし、以下のような不当な目的がある場合は不許可となる可能性があります。

  • 借金の取り立てや債権者からの追及を逃れる目的がある
  • 犯罪歴を隠すなど、社会的に弊害がある
  • 短期間に何度も氏の変更を繰り返している

【まとめ】離婚後の苗字は、手続きの負担と将来の気持ちを踏まえて決断を

離婚後の苗字を「旧姓に戻す」か「今の苗字を変えない(婚氏続称)」かは、それぞれにメリット・デメリットがあります。 「後からでも旧姓に戻しやすい」とはいえ、家庭裁判所での手続きには一定の時間と手間がかかります。 5年後、10年後のご自身を想像して、もし少しでも「将来、やはり自分の旧姓に戻したくなるかもしれない」と感じる事情があるなら、当面の手続きの負担を避けることだけを理由にせず、離婚時に旧姓に戻す選択をする方が、長期的にはスッキリするかもしれません。 目先の手続きの負担と、将来の心の問題の双方を踏まえたうえで、ご自身にとって最も納得できる選択をしてください。

離婚後の苗字に関するよくある質問(FAQ)

Q1: 婚姻期間がたった半年です。それでも「婚氏続称」をして批判されませんか?

法的には、婚姻期間の長さや離婚理由は一切関係ありません。

結婚生活が半年でも10年でも、届出さえ行えばご自身の意思で今の苗字を使い続けることができます。ご自身が最も納得できる選択をして問題ありません。

Q2: 離婚から数年経っていますが、今から旧姓(婚姻前の苗字)に戻せますか?

戻せる可能性は十分にあります。

一度婚氏続称の届出を出した場合、役所への届出だけでは変更できず、家庭裁判所に「氏の変更許可」を申し立てる必要があります。

許可には「やむを得ない事由」が必要とされますが、離婚すれば本来は婚姻前の氏に戻るのが原則であることから、旧姓へ戻すケースでは比較的緩やかに判断される傾向にあります。実際、婚氏を10年以上使い続けた後でも変更が認められた裁判例が複数あります。

ただし、借金の取り立てから逃れるなど不当な目的がある場合や、短期間に何度も苗字を変えるようなケースでは認められません。具体的な見通しは、弁護士などの専門家に相談して確認することをおすすめします。

Q3: 苗字を変えない場合、戸籍謄本などの書類を揃える手間は減りますか?

はい、大幅に減らすことができます。

旧姓に戻る場合は、銀行や免許証などあらゆる場面で「氏の変更を証明する戸籍謄本」を提出し、名義変更を行う必要があります。婚氏続称を選べばこれらの氏名変更手続きの大部分が不要になるため、これが大きなメリットとなります。

Q4: 苗字を変えないと、離婚したことが周囲にバレにくいですか?

日常生活や職場の同僚・取引先などには、苗字が変わらないため即座に知られることはありません。

ただし、多くの場合、配偶者控除(年末調整)や社会保険の手続きなどで、勤務先の人事・労務部門には離婚した事実を報告する必要があります。

この記事の監修者
小林 芳郎弁護士のプロフィール画像
マイタウン法律事務所新横浜事務所
小林 芳郎 弁護士
(神奈川県弁護士会)
監修者のプロフィールを見る

この記事は、公開日時点(2026年07月08日)の情報や法律に基づいています。

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