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養育費

2017年07月31日

離婚後の「養育費」をもれなく支払ってもらうための手段と手続きの流れ

離婚するとき、子どもの親権者となった親は、親権のない親に「養育費」を請求することができます。 養育費とは、未成年の子どもが成長するために必要なお金のことです。生活費や教育費、医療費などが含まれます。 ここでは、次のポイントを詳しく解説します。

  • 養育費の金額の目安
  • 養育費について取り決めるための手段
  • 支払いが滞ったときの対処法

目次

  1. 養育費とは
  2. 養育費の金額はどのように決めるのか
  3. 話し合いで決まらなかったら調停の手続きを利用しよう
  4. 相手が養育費を支払わない場合

養育費とは

子どもを養い育てるためには、衣食住の費用はもちろん、教育費や医療費、最低限の娯楽費や交通費など、様々な費用がかかります。 このように、子どもが社会的自立を果たすまでに必要な費用のことを「養育費」といいます。 離婚によって、法的な夫婦の関係は解消されますが、親子の関係は続きます。離婚して子どもと離れて生活するようになった親にも、子どもを扶養する義務があります。 そのため、親権を持つ親(親権者)は、親権のない親(非親権者)に対して、養育費を請求することができます。 養育費の額は、非親権者の生活水準と同じ程度の生活を子どもが送ることができるかどうかという観点から算定されます。 養育費は、離れて暮らす子どもの健全な成長を支えるために支払われるものであり、支払いは、親としての義務だということを認識しましょう。 具体的には、以下のような費用などが養育費にあたります。

  • 子どもの生活費(食費、衣服費、住居光熱費など)
  • 教育費(授業料、塾代、教材費など)
  • 医療費
  • 小遣い
  • 交通費

養育費が請求できるのは、原則「子どもが20歳になるまで」

養育費をいつまで支払うかは、夫婦の話し合いで自由に決められますが、原則としては、子どもが成人するまで、つまり20歳になるまで支払われます。 ただし、子どもが高校卒業後に進学をせず就職し、経済的に自立している場合や、逆に20歳を超えても大学に通っていて、経済的な自立が難しい場合もあるでしょう。実際の期間は、こうした個別の事情をふまえて、夫婦で話し合って決めることになります。 養育費は子どもの成長過程に応じて必要となる費用なので、定期的に支払われるべきと考えられています。 そのため、通常は、毎月一定の金額を銀行口座などに振り込んで支払われます。ただし、相手が同意している場合には、養育費を一括で支払ってもらうこともできます。

養育費の金額はどのように決めるのか

養育費の金額は家裁の「養育費算定表」が目安になる

養育費の金額を判断する際、家庭裁判所は 養育費算定表という早見表を参考にしています。 養育費算定表は、子どもの人数・子どもの年齢に応じて、参考にすべき表が分かれています。まずは自分のケースに当てはまる表を見つけましょう。 表では、縦軸が「養育費を支払う側の年収」、横軸が「支払いを受ける側の年収」となっていて、それぞれが交わるゾーンの金額が養育費の目安(月額)となります。この金額は子ども1人あたりの金額ではなく、月々の合計額です。 給与所得者の場合、源泉徴収票の支払金額(控除されていない金額)が年収にあたります。一方、自営業者の場合、課税される所得金額が年収にあたります。 たとえば、給与所得者で、子どもが2人(0歳〜14歳)いるケースでは、養育費の目安は次のようになります。

養育費の目安・養育費を支払う側の年収が800万円で、受け取る側の年収が0円の場合…養育費の目安は12万円〜14万円

・養育費を支払う側の年収が600万円で、受け取る側の年収が400万円の場合…養育費の目安は4万円〜6万円

調停や裁判で養育費の額を決定する場合は、基本的には、この算定表に基づき、個々のケースに応じた事情を加味して、金額が提示・判断されることになります。

話し合いで決めた内容は公正証書にしておこう

しかし、夫婦の話し合いで決める場合、必ず養育費算定表に従わなければならないわけではありません。 夫婦で話し合って合意すれば、算定表の目安以上の金額を設定することもできますし、逆に少ない金額を設定することもできます。 話し合いがまとまったら、養育費に関する内容を、公正証書の形で文書にしておきましょう。 公正証書とは、公証役場で 、元裁判官などの法律の専門家がなる公証人に作成してもらう文書です。公正証書には高い信用性があるため、のちに裁判などに発展した場合、強力な証拠になります。 また、「強制執行認諾文言」という文言を記載しておけば、養育費が約束通りに支払われなくなった場合に、裁判などの手続きを経なくても、公正証書を根拠として強制執行により預金や給料を差し押さえることができます。 強制執行認諾文言とは「ここに書かれた取り決めを破ったら、強制執行を受けても文句は言いません」と約束させる一文です。

「養育費を支払わない」と約束しても、養育費を求めることができる

離婚をする際、早く別れたいと思うあまり、夫婦の間で、「養育費を請求しない」という約束をしたり、養育費について何も決めずに離婚したりするケースもあるかもしれません。 しかし、このような場合でも、あとから養育費を請求することはできます。 養育費を負担してもらうのは子どもの権利であり、たとえ親の間で「養育費を請求しない」という約束がされても、子どもが養育費を求める権利は失われないからです。 この子どもの権利を代理する形で、養育費を非親権者に対して求めていくことができるのです。

話し合いで決まらなかったら調停の手続きを利用しよう

離婚にともなって養育費に関することも決めたいのに夫婦の話し合いで結論が出ない場合は、離婚調停の手続きの中で、養育費についても話し合うことができます。

一方で、離婚する際に養育費について決めないまま離婚してしまった場合は、親権者は、非親権者に対して「養育費請求調停」を申し立て、養育費の支払いを求めることができます。

話し合いがまとまらず調停が不成立になった場合には、自動的に審判の手続に移行します。審判では、裁判官があらゆる事情を考慮して、養育費の金額について判断します。 調停で解決すると「調停調書」、審判で解決すると「審判書」という文書が家庭裁判所で作成されます。 これらがあれば、養育費の支払いが滞った場合に、履行勧告や履行命令、強制執行などの措置をとることができます。

金額変更でもめた場合も調停を利用できる

「これまでは自分も働いていたが失業して経済的に苦しくなった」「子どもが病気をして継続的に医療費がかかるようになった」ーー。養育費の額を決めた後でも、決めた時点と事情が変わることがあるかもしれません。 このような場合、親権者は、非親権者に対して、養育費の増額を求めることができます。話し合いでまとまらなければ、家庭裁判所に調停を申し立てます。 逆に、非親権者から、「養育費を減らしてほしい」と求められる場合もあります。 たとえば、非親権者が失業して今まで通りの金額を支払うことが難しくなった場合や、親権者が再婚し、再婚相手と子どもが養子縁組をした場合等、やはり事情が変更した場合です。 減額を求められた場合も、まずは両者で話し合い、決着がつかなければ家庭裁判所に調停を申し立てます。 養育費の金額を変更できる場合とその方法についてのより詳しい解説は、こちらをご覧ください。

相手が養育費を支払わない場合

調停や審判により養育費を支払うよう判断してもらっているのに、非親権者が支払いに応じない場合は、次のような手段をとることができます。

  • 裁判所からの履行勧告
  • 裁判所からの履行命令
  • 強制執行

裁判所からの履行勧告

家庭裁判所に申し出ることにより、「履行勧告」という措置を求めことができます。履行勧告の申出には費用がかかりません。 履行勧告を申し出ると、家庭裁判所の調査官が養育費の支払い状況等について調査をします。そして、非親権者が義務を果たすよう、電話や手紙、訪問などの方法で勧告をします。 この際、家庭裁判所の調査官は、非親権者の事情についてもある程度理解を示しながら、当事者双方に対して助言や調整を行うことで、養育費が自発的に支払われるよう促すことになります。 このように、履行勧告は、あくまで自発的に支払いを促すものです。相手にプレッシャーをかける効果はありますが、法的な強制力はありません。

裁判所からの履行命令

履行勧告に相手が応じない場合は「履行命令」を申し立てます。履行命令とは、家庭裁判所が相当と認める場合に、期限を決めて、「この時までに支払いなさい」と命じるものです。 履行命令でも強制的に未払いの養育費を支払わせることまではできません。しかし、非親権者が履行命令に従わず、養育費を支払わない場合には、10万円以下のペナルティが課せられます。 その意味で、間接的に養育費の支払いを強制する効果があるといってよいでしょう。

強制執行

非親権者の給料や預貯金、不動産などを差し押さえて、そこから強制的に養育費を支払わせることができます。 養育費等の支払いのために強制執行を行う場合、原則として、給与から税金と社会保険料と通勤手当を引いた金額の2分の1までを差し押さえることができます。 例外的に、給料から税金と社会保険料と通勤手当を引いた金額の2分の1が33万円をこえる場合は、差し押さえることができない金額は33万円が限度になります。つまり、2分の1を超える範囲についても差し押さえることができます。 なお、養育費等の扶養義務に基づく債権については、差押えは、過去に支払われなかった分だけでなく、将来の支払いにまで適用されます。 ただし、強制執行の申立てをすれば自動的に裁判所が相手の給料や財産を調べてくれるわけではありません。 強制執行をするときは、まず自分で非親権者の給料や財産を特定し、その上で給料や財産の差し押さえを裁判所に求めることになります。 強制執行の手段を利用したいと考えたら、非親権者の住所地を管轄する地方裁判所に申し立てましょう。必要となる書類はケースによって異なります。裁判所のホームページに情報があるので、確認してみましょう。

未払いの養育費を求める場合は、「時効」に注意しよう

養育費の金額を定めた場合、養育費を請求できる権利は、一定の期間が経過すると時効により消滅します。原則として、5年で消滅すると考えられています。 月ごとの支払いを定めている場合が多いと考えられますが、その場合、5年が経過した時点で、その月分の養育費を請求する権利が消えてしまうということです。 たとえば、「2012年の4月から、毎月月末に月々4万円の養育費を支払う」と夫婦の話し合いで取り決めたのに、養育費は1回も支払われないまま2017年7月になってしまったとしましょう。 この場合、2012年4月から6月分の養育費を求める権利は時効により消えてしまい、請求できるのは、2012年7月から2017年7月までの5年分ということになります。 こうした事態を防ぐために、時効が進むことを止める手段があります。時効の「中断」と呼ばれる手続きで、非親権者に対して裁判を起こすことや、話し合って養育費を支払ってもらう権利があることを非親権者に認めてもらうことで時効の進行はとまります。 こうした対応がすぐに難しいという方は、内容証明郵便などで、非親権者に対して「養育費を支払ってほしい」という意思を表明すれば、一時的に時効が進むことを止めることができます。「催告」という手段です。 ただし、「催告」は6か月間に限って時効が進むことを止める一時的な対処法です。また、「催告」はくりかえすことはできません。6か月後になって、もう一度内容証明郵便を送ったとしても、そこからまた6か月間時効を止めることはできないのです。 そのため、「催告」を行った場合は、すぐに具体的に養育費を請求するための準備を行い、6か月以内に裁判を起こすなどの手続きをとることが必要です。

養育費について取り決めていなかった場合

養育費について金額などを定めていなかった場合は、時効により権利が消滅することはありません。具体的な権利自体が発生していないと考えられるからです。 時効がないといっても、実務上は、請求した月から支払いが認められるケースが一般的です。 過去の未払い分を請求することも可能ですが、認められるかどうかはケース・バイ・ケースといえるでしょう。 相手の経済状況など個別の事情をもとに、さかのぼって請求できる期間や金額について、裁判所が判断することなります。

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