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法学部生「法曹志望は13%」、企業や公務員人気…国が法科大学院設置大を調査
回答数9658人(回答率12.1%)

法学部生「法曹志望は13%」、企業や公務員人気…国が法科大学院設置大を調査

東京・霞が関の文部科学省で7月30日、中央教育審議会の分科会である「法科大学院等特別委員会」(座長=井上正仁・早稲田大大学院法務研究科教授)が開かれた。冒頭、文科省側から、同省幹部が逮捕された「受託収賄事件」について謝罪があり、議事は始まった。法曹への志望状況を聞いたアンケートの調査結果が報告され、「法曹コース」について文科省の原案が示された。

●志望しない理由、「体力的・精神的負担が大きい」が58.4%

この日の特別委では、東大・京大など全国38大学(2018年度以降、入学者の募集を継続する法科大学院を設置する大学のうち、法学部を設置している大学)の法学部に在籍する1ー4年生までの学生を対象に文科省と法務省が実施した「法曹志望に関するアンケート」の調査結果が報告された。調査は2017年10月10日から11月10日まで、ウェブで行われ、対象総数7万9801人のうち9658人が答えた(回答率12.1%)。

それによると、将来の職業として第一志望で考えてるものについては、「国内企業」が27.5%で最も高い割合で、「地方公務員」が24.4%、「国家公務員」が16.3%と続き、「法曹等」は13.2%で4番目だった。(5番目以降は、特になし6.4%▽外資系企業2.8%▽法曹以外の隣接法律専門職2.5%▽その他2.3%▽経営者、自営・自由業1.5%▽国際機関職員1.4%▽研究者1.3%▽公益法人・NPO法人職員0.5%)

法曹等を現在志望し、または選択肢の一つとして考えている学生の不安や迷いについて複数回答で聞くと、「司法試験に合格できるか、自分の能力に自信がない」が64.0%で最も高かった。次いで「自分に法曹等としての適性があるか分からない」が43.1%で、「他の進路(例えば国家公務員や民間企業、研究職等)にも魅力を感じている」が37.0%。「大学卒業後、法科大学院修了までの経済的な負担が大きい」が27.9%で4番目だった。

法曹等を選択肢の一つとして考えたことがなく、かつ法曹等を志望しない理由として「法曹等の仕事に魅力を感じないから」と答えた学生に、魅力を感じない理由についても尋ねた。

割合が高い順に紹介すると、「体力的・精神的に負担が大きい仕事だと思うから」が58.4%で、「訴訟対応が仕事の中心で活躍の場が限られている仕事だと思うから」が24.3%と続き、「ワークライフバランスの実現が困難であると思うから」が20.7%だった。「経済的に安定していないと思うから」が11.0%で4番目だった。

●「法曹コース」、2020年度の学部2年生を対象にスタート検討

文科省は特別委に対し、「法曹コース」の制度設計案も示した。法曹コースとは、自校または他校の法科大学院と連携して教育課程を組み、法曹志望の学生に学部段階から効果的な教育を行うもののことだ。最短で「学部3年+法科大学院2年」も視野に入れている。法科大学院に進む際には入学者選抜があるため、無条件に進学を保証するものではないという。

このテーマについては委員から意見が噴出。「小規模校と大規模校を同列に扱わないでほしい」「法科大学院に入る際、法曹コースの学生対象の推薦制度を導入するなら、(質を落とさないためにも)実質的な競争倍率の確保が重要。全員を推薦できるというのは困る」「推薦入試で合格しても、その法科大学院には行かずに一般入試で別の法科大学院を受けられることを明記してほしい」などといった趣旨の発言があった。

文科省は現状、法曹コース修了予定者を法科大学院の特別選抜(面接重視などの推薦入試方式を含む)の対象とし、その特別選抜枠は定員の5割を上限とすることなどをイメージしている。推薦入試方式を採用するかどうかは、各法科大学院の判断に委ねるという。

スケジュールとしては、2020年度の学部2年生を対象に制度を始めることができるよう、必要な制度を整えていきたい考えだ。

●「共通到達度確認試験」、本格実施は2019年度から

また、特別委では、法科大学院での教育の質保証を図るため考えられた「共通到達度確認試験」について、2019年度から本格実施することを了承した。さらに、本格実施を見越してこれまで4回行われた試行試験から、以下の成果が得られたことが報告された。

・正誤式と多肢選択式の問題併用で基礎的な知識や一定知識を前提とした思考力を確認可能

・短時間で多数の答案を採点するため、マークシートによる回答方式が適切

・憲法・刑法は30問程度、民法は45問程度で全般的な理解を確認できる、など

本格実施前の最後の試行試験は、2019年3月14日にマークシート方式で行われる。座長代理の山本和彦・一橋大学大学院法学研究科教授は「試行試験の結果が円滑に引き継がれればいいと思う」と述べた。

2019年度の本格実施の時期について、文科省は「未定」としている。将来的には、確認試験の結果に応じて、司法試験の短答式試験を免除することを想定しているという。

(弁護士ドットコムニュース)

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