3大都市圏に住む若者の4人に1人が、地方移住に関心があるーー。国土交通省が6月26日に発表した国土交通白書(2017年度)は、全国の20ー70歳代の男女5000人を対象にネットで調べたところ、このような特徴がわかったと指摘した。
若者ら都市部の人たちが地方に移り住み、地方が活力を取り戻すのであれば望ましいことなのだろう。ただ、移住者と受け入れ側の不一致が次第に深い溝となり、地方では地獄のような「村八分」が待ち受けている恐れもある。
●ハッピーな地方移住ばかりではない
村八分とは、村の人全員が申し合わせて、その村のある人や家族を仲間外れにすること。ここ1年以内にも、以下のような村八分とみられる事例や移住者にとって不便な生活実態が伝えられている。
<大分県宇佐市>
母親を介護するために、関西から大分県北部の集落にUターンした60代男性が村八分のような扱いを受けているとして、大分県弁護士会が2017年11月1日、集落の自治区に対して「他の構成員と平等に取り扱う」よう是正勧告をした。男性は自治区への加入が認められず、市報の配布もされなかった。(大分合同新聞などが報道)
<山梨県北杜市>
自治会への加入が認められないと、近所にあるゴミ置場を使うことができず、車で数キロ先のゴミステーションまで運ばないといけない。ゴミ置場は、自治会が管理しているため。(週刊新潮や週刊朝日が報道)
行政が「ぜひ我々のところに移住してください」と熱烈にPRして、実際に移住してくれたとしても、村八分が待っていたとしたら移住者にとってあまりにも気の毒だ。不幸にも村八分にあった場合、移住者は法的に、どのような請求ができるだろうか。濵門俊也弁護士に聞いた。
●脅迫罪になりうる
ーー村八分による法的問題について教えてください
「都会の方は村八分という言葉を耳にしたことがないかもしれませんが、当職は田舎の出身なので、なじみがあります。まず、刑事について考えます。村八分は、通告された側の人格を蔑み、名誉を傷つけるもので、名誉に対する脅迫罪を構成するものと解されます」
ーー関連する判決を教えてください
「かなり前ですが、大阪高裁(昭和32年9月13日判決)は、『いわゆる村八分の決定をし、これを通告することは、それらの者をその集団社会における協同生活圏内から除外して孤立させ、それらの者のその圏内において享有する、他人と交際することについての自由とこれに伴う名誉とを阻害することの害悪を告知することに外ならない』と指摘しています。
その上で、通告を受けた者が、集団社会の和を乱し、道徳的観点や法律的観点から見逃すことができないような場合を除き、『脅迫罪の成立を免れない』という趣旨を示しています。
つまり、大阪高裁の判旨からは、基本的に村八分の通告は脅迫罪に該当しうるものの、通告された側の落ち度が大きい場合は例外的に該当しない場合があると理解できます」
●慰謝料請求も
ーー民事ではいかがでしょうか
「民事では、村八分をされることで社会生活上、大きな困難を生じたり、人格権が侵害されたりするため、不法行為として差し止め請求や慰謝料請求の対象となると考えられます。
感情のもつれもあり、小さなコミュニティの中で村八分を解決するのは簡単なことではないのかもしれません。ですが、村八分が刑事・民事ともに法的な問題を生じうるということは多くの方に知っておいていただきたいと思います」
【情報募集!】弁護士ドットコムニュースでは「村八分」問題の取材を続けています。「自治体活動に反論したら、仲間はずれにされた」「脱会しようとしたら、嫌がらせにあった」などの体験がありましたら、以下からLINE友だち登録をして、ぜひご連絡ください。