人気ユーチューバーのヒカキンさんが10月26日、自身のYouTubeチャンネルで、約1年8カ月前の生配信中に起きた「いたずら宅配」の切り抜き動画を公開しました。
そのコメント欄に本人が「開示しました」と書き込み、当時宣言していた「開示」を実行したと報告したことが話題になっています。
出来事があったのは2025年2月。チャンネル登録者1900万人を記念して自宅から生配信をしていたところ、終盤にインターホンが鳴り、マクドナルドの宅配が届きました。
ヒカキンさんは妻が注文したのかと思いましたが、妻も頼んでいないようでした。
配信中にヒカキンさんは「これ開示だな」「申し訳ないけど本気でいかせてもらうわ」と宣言。
その後、部屋まで届いた商品は現金での支払いを求められるもので、何者かが「めちゃめちゃ頼んで」いたそうです。
それから約1年8カ月。今回公開されたのは当時の配信を切り抜いたショート動画で、ヒカキンさんはそのコメント欄で「開示しました」と報告しました。
ただ、どのような手続きで何が開示されたのか、注文した人を特定できたのかは明らかにされていません。
ヒカキンさんの「開示」とはいったいどのようなものだったのでしょうか。
●ネットの誹謗中傷などに対する「開示請求」は使えない
ネットの誹謗中傷で、投稿した人を特定するために使われる「開示請求」は、情報流通プラットフォーム対処法に基づく手続きです。
ただ、この手続きを使えるのは、「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信」で権利を侵害された場合に限られます(同法2条1号、5条1項)。
SNSの投稿のように、誰でも見られる発信が対象です。
アプリやウェブで店に注文するのは、注文した人と店との1対1のやりとりなので、この手続きは使えません。
●注文記録の開示を請求できる可能性
では、ヒカキンさんが「開示」を求められるものはないのでしょうか。
たとえば、注文の記録が、ヒカキンさんの名前などと結びついて管理されている場合には、ヒカキンさんは本人として、マクドナルドに自分についての記録の開示を請求できます(個人情報保護法33条1項)。
開示されれば、注文の日時や方法などが分かる可能性があります。
ただ、実際に注文した人の電話番号やメールアドレスは、その人の権利を害するおそれがあるとして、開示されない可能性があります。
いたずらをした人の情報なのに、と思うかもしれません。
しかし、本人の開示請求は、事業者が自分についてどんな情報を持っているかを確かめるための制度であって、相手を特定するための制度ではないのです。
●警察に被害申告するとどうなるのか
警察に被害を申告することも考えられます。
注文をしていない人の家にうその注文で配達をさせ、店に無駄な調理や配達をさせる行為は、店に対する偽計業務妨害罪(刑法233条)にあたる可能性があります。
警察は、店に注文時の記録を照会したり差し押さえたりして、通信会社まで調べることができます。
ただ、この罪の被害者は基本的には店なので、ヒカキンさんにできるのは、警察への相談や告発が中心になると考えられます。
なお、勝手に注文を行って第三者方に商品を配達させたことが、お店に対する偽計業務妨害にあたるとして有罪判決が下された裁判例は複数あります(福島地裁郡山支部令和元年(2019年)6月19日など)。
●ヒカキンさんの業務を妨害したといえないのか
ヒカキンさんは配信を仕事にしています。
注文した人が、生配信中だと知りながら配達させたのなら、ヒカキンさんの仕事に対する偽計業務妨害罪を考える余地もあります。
その場合は、ヒカキンさん自身が被害者として告訴することもできます。
小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)