長い交際期間を経て結婚した夫婦でも、一緒に住んでみて初めて知るパートナーの「クセ」というものがある。それが些細なものであれば特に問題ないのだが、たとえば、「風呂場でおしっこをする」というものだとしたら、あなたは我慢できるだろうか。
調査会社リサーチパネルのアンケートによると、10代から50代の男性のうち、実に20%が日常的に風呂場でおしっこをしているという。そんな夫の行為について、妻が知ったらどう思うだろうか。週刊ポストのウェブ版には、夫がシャワー中に小便をしていることに気付いた妻が、怒って実家に帰ってしまったというエピソードも紹介されている。
もしかしたら、女性によっては「そんなのは絶対に許せない」という人もいるかもしれない。はたして、「風呂場でおしっこをするから」という理由で、妻は夫に離婚を迫ることはできるのだろうか。東山俊弁護士に話を聞いた。
●結婚を継続できないほどの「重大事」なのか?
「一方的な離婚請求を裁判所に認めてもらうためには、民法770条にあげられている離婚要件のどれかを満たす必要があります。
このうち、『風呂場でおしっこ』が当てはまる可能性があるとすれば、『婚姻を継続し難い重大な事由』(民法770条1項5号)でしょう」
簡単にいうと、結婚を続けられないほどの重大事という意味だが・・・。たとえば、どんな理由なら、これに当てはまるのだろうか?
「これに含まれる範囲は幅広く、たとえば、性格の不一致なども該当します。
一般論として、夫婦は相互に尊重する義務を負っていますので、相手が嫌がることを一方的に押し付けたりすることは認められません。
嫌悪感や押し付けの程度が重大な場合には、『婚姻を継続し難い重大な事由』があるとされる場合もあり得るでしょう。
ただし、よほど重大な事情でない限り、離婚は認められない傾向にあります」
●「離婚するのもやむを得ない」というほどではない
では、「風呂場でおしっこ」は、どうだろうか?
「結論としては、それだけで『婚姻を継続し難い重大な事由』に当たることはないでしょうね。
洗い場に尿が流れる程度であれば、水で流してしまえば汚れやにおいも残らず、衛生面でもそれほどの問題はないと思われます。湯船の中で用をたす場合と違って、それ以後の利用に支障が生じるほどではないでしょう。
もちろん、感情面や清潔感という観点からすれば、問題はあるでしょう。しかし、嫌悪感があるとしても、誰もが離婚をやむを得ないと考える程度ではありませんし、妻に何かの行為を強要したりするわけでもありません」
東山弁護士はこのように結論づけた。そうすると、もし結婚相手にそんなクセがあったら、ずっと我慢し続けるしかないのだろうか?
「もちろん、このことがきっかけとなって、結果的に夫婦関係が崩壊したということになれば、離婚が認められることはあるでしょう。
ただし、『夫婦関係が崩壊した』というためには、結局のところ、別居などの客観的な状況が必要になってくると思われます」