企業や社会の変革につながる取り組みをおこなった弁護士を表彰する「BUSINESS LAWYERS AWARD 2026」(主催:弁護士ドットコム)の表彰式が11月4日、東京都千代田区の東京會舘で開かれた。
最高賞のグランプリには、自らAIの研究開発に携わった経験を生かし、AIをめぐるルールづくりやガバナンスの議論をリードしてきた古川直裕弁護士(株式会社ABEJA)が選ばれた。
古川弁護士は「私ができるのは、今日からより良い仕事をすることです」と語った。
●自らAIを開発した経験を法律実務に
古川弁護士は東京大学法学部を卒業し、同大法科大学院を修了した後、2010年に弁護士登録。法律事務所勤務を経て企業内弁護士となり、約3年間にわたってAIの研究開発に従事した。
2020年に「株式会社ABEJA」に参画。実務家らが集まる「AI法研究会」を立ち上げ、代表をつとめている。
審査では、開発チームのリーダーとして自らプログラムを書いた経験を法務に生かしてきたことが評価された。
また、AI法研究会を通じて、弁護士や企業の法務担当者、研究者らが技術者と意見を交わす場をつくったことも評価された。
さらに内閣府のAI制度研究会では、個別分野の規制とソフトロー(法的拘束力のない指針など)を組み合わせたルール作りを提言。こうした活動も受賞の理由に挙げられた。
古川弁護士は表彰式で、「このような名誉ある賞をいただき、ありがとうございます。非常に感謝の気持ちでいっぱいです」とあいさつした。
そして、企業の「戦略法務」の問題点について、AIのリスク管理やガバナンスに取り組む弁護士の立場から、「AI案件に対応する力やリソースの準備度合いがはなはだ心許ない」と指摘。
「自分の所属する企業やクライアント、社会に内在する価値を反映した戦略と資源配分という概念が今後の企業法務に大事になってくる」と述べた。
●「公共政策」「先端技術」を新設、25人を表彰
2回目となる今回は部門が再編され、「公共政策」と「先端技術」の2部門が新設された。
審査委員長の久保利英明弁護士は、「AIや気候変動などの前例の少ない領域では、法制度が十分に整うのを待っていては事業も社会も前に進みません」と指摘。
新設された2部門について「こうした領域でルールづくりを担い、ビジネスの道筋をつける弁護士に光を当てるものです」と説明している。
今回は、弁護士や企業、メディア関係者などから延べ626人のエントリーがあった。
各部門で10人ずつがノミネートされ、審査委員会の最終審査を経て、「ガバナンス改革」「ビジネスと人権」「プロボノ・社会貢献」に先の2部門を併せた5部門で最優秀賞各1人、優秀賞各4人の計25人が選ばれた。
このうち、特に顕著な活動をおこなった1人がグランプリに選ばれた。
また、審査委員会の特別賞には、大崎事件の再審弁護団共同代表をつとめる鴨志田祐美弁護士が選ばれた。
鴨志田弁護士は、日弁連の再審法改正推進室長や法制審の部会委員として、刑事裁判をやり直す「再審」制度の見直しに尽力。2026年7月、刑事訴訟法の制定から78年を経て初めての再審法改正が実現したことなどが評価された。
●受賞者一覧
表彰部門は、(1)ガバナンス改革、(2)ビジネスと人権、(3)プロボノ・社会貢献、(4)公共政策、(5)先端技術──の5部門。
これとは別に、審査委員会特別賞が設けられた。★は各部門の最優秀賞の受賞者。
<グランプリ・先端技術部門 最優秀賞>
★古川 直裕氏(弁護士 / 株式会社ABEJA)
<ガバナンス改革>
★倉橋 雄作氏(弁護士 / 倉橋法律事務所)
・柴山 吉報氏(弁護士 / 阿部・井窪・片山法律事務所)
・三浦 悠佑氏(弁護士 / 渥美坂井法律事務所・外国法共同事業)
・森 進吾氏(弁護士 / 明倫国際法律事務所)
・吉田 郁子氏(弁護士 / エクスリンク法律事務所)
<ビジネスと人権>
★高橋 大祐氏(弁護士 / 真和総合法律事務所)
・梅津 英明氏(弁護士 / 森・濱田松本法律事務所外国法共同事業)
・塚田 智宏氏(弁護士 / 森・濱田松本法律事務所外国法共同事業)
・福原 あゆみ氏(弁護士 / 長島・大野・常松法律事務所)
・細谷 夏生氏(弁護士 / 西村あさひ法律事務所・外国法共同事業)
<プロボノ・社会貢献>
★牛見 和博氏(弁護士 / 弁護士法人牛見総合法律事務所)
・玄 唯真氏(弁護士 / 株式会社ヘラルボニー)
・中村 優紀氏(弁護士 / 中村法律事務所)
・野田 隼人氏(弁護士 / 弁護士法人アライズ高島法律事務所)
・米田 龍玄氏(弁護士 / 岡村綜合法律事務所)
<公共政策>
★工藤 美香氏(弁護士 / 公益財団法人 自然エネルギー財団)
・川端 健太氏(弁護士 / 森・濱田松本法律事務所外国法共同事業)
・國峯 孝祐氏(弁護士 / 國峯法律事務所)
・鮫島 正洋氏(弁護士 / 弁護士法人内田・鮫島法律事務所)
・渡部 友一郎氏(弁護士 / Airbnb Japan株式会社)
<先端技術>
・内田 誠氏(弁護士 / iCraft法律事務所)
・清水 亘氏(弁護士 / 弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所 名古屋オフィス)
・田邉 幸太郎氏(弁護士 / 三村小松法律事務所)
・山岡 裕明氏(弁護士 / 八雲法律事務所)
<審査委員会特別賞>
・鴨志田 祐美氏(弁護士 / Kollect京都法律事務所)