GIGAZINE倉庫破壊事件、控訴審でも編集長が敗訴 「契約書偽造」の主張認められず
「GIGAZINE倉庫」(写真中央の建物)、2021年8月、弁護士ドットコム撮影

GIGAZINE倉庫破壊事件、控訴審でも編集長が敗訴 「契約書偽造」の主張認められず

ネットサイト「GIGAZINE」(ギガジン)の編集長が、地権者から土地の明け渡しを求められていた裁判で、大阪高裁(清水響裁判長)は9月16日、明け渡しを認めた一審・大阪地裁判決を支持して、編集長の控訴を棄却した。

ネット上で「GIGAZINE倉庫破壊事件」と呼ばれて、話題になっていた。判決文から、裁判所の判断を報じる。(編集部・塚田賢慎)

●これまでの経緯

建物を所有するGIGAZINEの編集長は、2019年2月に大阪府西淀川区にある倉庫が地権者によって突然取り壊しにあったとして、その様子を3月から4月にかけて、「ある日突然自分の建物を他人がショベルカーで破壊しても『建造物損壊』にはならないのか?」「ある日突然無断で他人の建物をショベルカーで破壊する企業は『反社会的勢力』ではないのか?​​」など、3本の記事で報じていた。

その後、地権者である不動産会社「N」が、土地の所有権にもとづき、編集長の所有する建物の収去・退去などを求めて起こした裁判で、大阪地裁は今年3月、土地の明け渡しと、2019年3月以降の賃料相当損害金の支払いを命じていた。

これを不服として、編集長は控訴したというのが、これまでの経緯だ。

<一審判決のまとめ>(経緯をご存知の方は読み飛ばしてください)

一審判決でわかったことは以下の通り。控訴審判決もその内容を踏まえている(一部補充あり)。

・建物は地権者とは別の人物によって1953年に建てられ、編集長の祖父が1981年に購入した

・2005年に祖父が亡くなると、建物の所有権は編集長(孫)にうつった。

・「祖父の死とともに、建物のある土地まで編集長のものになる」という契約が存在したと編集長は主張した。地裁は認めず、編集長に土地の所有権はないとした。

・「長年、土地代を請求してこない地主は、無償の土地使用を黙認していた。我々は会社の倉庫として使用してきた」などと編集長は主張した。地裁は、地主が黙認していたと言えず、土地の使用貸借権も成立しないとした。

・編集長は建物の固定資産税や火災保険は支払っていたが、地主に対して、2006年から土地代をまったく支払ってこなかった。その金額は約355万円になる。

・訴訟や、地主が「土地の賃貸借契約を解除する」と表明したことを、編集長は「権利の濫用」と主張した。しかし、地代の滞納は多額で、地主との信頼関係は「著しく破壊」していることから、地裁は「権利の濫用ではない」とした。

・地主は取壊工事の前に、権利関係を十分に確認していなかったが、取壊工事には、編集長らを脅かす意図はなかった。

・結局のところ、建物の取壊は認められる。

●「土地の賃貸借契約書は偽造だ」との編集長主張を認めず

では、控訴審の話に移りたい。問題の建物は、編集長が、祖父の死亡にともなって受け継いだ(遺贈)ものである。

控訴審においても、編集長は、祖父と前地主との間で、「土地を編集長に所有させる合意」があったとし、そのような合意がなければ、前地主が編集長に土地代を請求してこなかったことの説明がつかないと主張した。

また、前地主と編集長の祖父との間でかわされた土地の賃貸借契約書などについて、「祖父名義の作成部分がいずれも偽造されている」と筆跡鑑定書を提出していた。

しかし、高裁は、編集長が建物の固定資産税を支払う一方で、土地については所有権移転の手続きや、税を支払おうとした形跡がなく、「合意」を認める証拠がないとした。

この鑑定書も「偽筆と判断した根拠の説明が不十分」とし、さらに契約書の内容にも不自然な点はなく、祖父の意思によって作られたものと考えられるとした。

●取壊工事によって脅かし、退去を迫るという「不当な意図」は推認できない

GIGAZINEは、前述の記事によって、無断で他人の建物を破壊する企業について「反社会的勢力ではないのか?​​」などの問題提起をおこなっていた。

建物に貼られていた編集長名の注意書き「関係者の背信性が問題となっています」 建物に貼られていた編集長名の注意書き「関係者の背信性が問題となっています」

控訴審でも、編集長は、前地主と「N」には、建物の取壊工事によって、編集長を脅かし、退去を迫るという「不当な意図」があって土地を売買したとし、「N」を「背信的悪意者」にあたると主張した。

しかし、高裁は一審判決とおなじく、そのような「不当な意図」は認められないとした。

ブルーシートで覆われたGIGAZINE倉庫 ブルーシートで覆われたGIGAZINE倉庫

●不動産会社「当社主張が全て認められた」

不動産会社「N」は、弁護士ドットコムニュースの取材に、代理人弁護士を通じて「控訴審判決は、原審の判断を全面的に維持した上、さらに補充する内容となっており、異論はない。当社の主張を全て認めていただいたものと受け止めている」とコメントした。

GIGAZINE編集長にも、一審判決同様に、コメントを求めている。

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