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ビッグモーター問題、SOMPOの調査報告書は「何も書いてない」久保利弁護士らが酷評
会見する(左から)塚原氏、久保利弁護士、竹内朗弁護士(2024年1月25日、弁護士ドットコム撮影)

ビッグモーター問題、SOMPOの調査報告書は「何も書いてない」久保利弁護士らが酷評

中古車販売大手ビッグモーター(BM)の保険金不正請求問題を巡り、金融庁が1月25日、損害保険ジャパンとSOMPOホールディングス(SHD)に業務改善命令を出した。問題を認識しながら、BMとの取引を再開したことが批判されていた。

SHDは同16日、社外調査委員会による報告書を公表。ガバナンスに詳しい弁護士や学者でつくる「第三者委員会報告書格付け委員会」は25日、5段階中最低のFが4人、下から2番目のDが4人だったと発表した(http://www.rating-tpcr.net/result/#27)。

会見した委員長の久保利英明弁護士は「知りたいことが何も書いていない。どんな証拠で、どんな事実を認定をしたかというプロセスがなく、役立たずの報告書です」とバッサリ。調査に当たったメンバーは元検事なのに核心に迫れていないと批判した。

●八田名誉教授「情報共有なぜ不十分になったのか」

「格付け委員会」は弁護士、学者、ジャーナリストの計9人で構成。報告書に独立性や透明性があるかどうかを検証するために2014年に発足した。2010年に日弁連があるべき姿を定めた「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」作成に関わったメンバーを中心としている。

これまで、みずほ銀行や東芝、日本大学など26回の格付け結果を公表している。一方で、優れた報告書の表彰も行っている。委員の個別評価を基本としており、この日の会見でも、それぞれの委員が報告書を読んだ所感を語り、一様に厳しい言葉が相次いだ。

事務局長の竹内朗弁護士は冒頭、損保ジャパンからSHDへの報告経緯、桜田謙悟会長兼グループCEOを含めSHD経営陣の関与などについて解明されていないと指摘。企業会計やコンプライアンスが専門の八田進二・青山学院大学名誉教授も、踏み込みの甘さに言及した。

「SHDの中核である損保ジャパンは役員が重なるなどしており、適時適切に情報共有ができる環境にあったにもかかわらず、十分ではなかった。本当なのか。事前に取材を受けたのに、報道が出た当日に報告している。その理由も書いてない」と疑問を呈した。

八田名誉教授(2024年1月25日、弁護士ドットコム撮影)

●塚原氏「内部版を持っているのでは」

全部で72ページ(公表版)という分量の割に、内容が抽象的だとの指摘もあった。また、社名は甲乙などで明記。社長や会長も含めた登場人物36人はA1〜F6などの略称で明記されており、読みにくいとの声もあった。

「技術関係についてはわずか1ページ強、原因のところも1ページぐらいしか書かれていない。 紙幅を割いていないというのが最大の問題だ」(竹内弁護士)「匿名が多く、桜田CEOと白川儀一・損保ジャパン社長がどういうコミュニケーションをしたかが一言も書いてない。公表版ではない詳細が書かれた内部版があるのではないかと疑う」(塚原政秀委員=ジャーナリスト)

久保利弁護士は「再発防止策に具体性がない報告書には、誰がどんな失敗をしたのか、コミュニケーションミスが調べられていないんです。これでは会社の社長さんたちが、他山の石とするための役目が果たせない」と述べた。

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