野島 梨恵 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
正直、具体的なきっかけというのはありません。大学時代は政治学者になることを志していたのですが、政治学を学ぶ中で自分の力に限界を感じ、夢を諦めました。そんなときに、何気ない気持ちで受けたのが司法試験です。所属していたのが法学部だったということもあり、周りにも受験する人が多かったのです。
無事司法試験に合格し、弁護士になった後は東京の大手渉外事務所に勤務しました。そもそも、弁護士に強い憧れや高い理想を持って目指したわけではなかったというのが本当のところです。ですので特に理想と現実とのギャップを感じることはありませんでした。
また、弁護士になった当初から、いつか地元・北海道の為に何かしたいという思いを抱いていました。東京で勤務しているときに出会った、同じく北海道出身の木村雅一弁護士と意気投合して共に事務所を開くことになり、私はその支部である道北で現在も地元に密着した弁護士として働いていました。
今までの仕事経験と現在の仕事状況
士別市は司法過疎地なので、地元の方の抱えるあらゆる案件が当事務所に集中する傾向にあります。分野を限ることなく、ご相談があるたびに様々な分野の案件をお受けしてきました。その中でも、北海道の特徴として、離婚事件が占める割合は大きいです。
さらに、当事務所ができるまでは弁護士が一人もいない地域だったということもあって、解決しないまま時間が経ってしまっている古い事件のご相談をお受けすることも多いです。泣き寝入りしてしまっていたお金のトラブルや、何年も前から続いている人間関係のもつれの相談などがくると、「もしここに法律事務所がなかったら」と考えてしまいます。
東京と士別市との違い
法律や弁護士が身近にある東京と、司法過疎地である道北では、依頼者の意識が全く違います。例えば、東京では当然に取り交わされる契約書も、こちらではまだ浸透していません。
道北では人間関係が濃密である分、ビジネスも、よく言えば信頼関係、悪く言えばなあなあ、で済まされており、わざわざ「契約書を書く」ということに抵抗があるようです。弁護士に相談することにも慣れていらっしゃらないらしく、「契約者」「弁護士」という言葉を聞いただけで身構えてしまう、アレルギーのようなものがあるように感じます。
東京と比べてこういった違いが生まれてしまった背景として、「弁護士過疎」、つまり弁護士の数が少ない地域に法的サービスが行き届かないことが問題とされていますが、これは決して弁護士だけの問題ではないと私は考えています。
まず、士別市には裁判官が月に3日しか来ません。これでは、裁判がスムーズに進むはずがありませんし、法的サービスを利用する意識が浸透しないわけです。困ったら法曹に頼る、という発想がないために、道北では、行政書士や司法書士が、本来弁護士がやるべき業務まで請け負ってしまっています。これは非弁行為にあたりますし、何より、弁護士であればもっと効率よく解決できるはずの案件が、やたらろ時間がかかってしまったり、間違った知識で対応していることも多々あります。問題は、「弁護士過疎」ではなく、「司法過疎」によっておきているのです。
こういった現状を正しく改善し、皆さんが当たり前に法的サービスを受けられる、受けようと思って頂けるような状況にしていきたいと思っています。
仕事をする上で意識していること
相手方からも信頼して頂けるようにとこころがけています。自分の依頼者の利益を図ることは弁護士として当たり前のことですが、片方の利益だけを追求してしまっては、事件解決後の関係等が上手くいかない場合もあります。
出来る限り、相手方にとってもメリットのある、社会的な妥当性のある結果になるよう心がけています。両当事者にとってベストな形で、紛争を収束させたいと思っています。
関心のある分野
先ほどお話した、道北地方における法律に対するアレルギーを改善することに関心があります。今まであいまいに処理されてきていた部分を改め、契約、コンプライアンスに対する市民の方の認識を高め、予防法務の意識を定着させていきたいと思っています。いま改めなければ、いつまでも弱い者が泣き寝入りをするしかない状況が続いてしまいます。
しかし、今までの習慣を変えることは決して簡単ではありません。弁護士が、頭ごなしに「契約書を書きなさい」と指導すれば、余計、依頼者との距離が生まれてしまいます。依頼者の方に、何をしなければいけないのか、何をしてはいけないのか、それによってどのようなメリットやデメリットがあるのかをひとうひとつ説明し、地道に分け入っていくことで広めていかなくてはいけないと思っています。依頼者の方に「確かにそうだな」と納得して頂いて初めて、意識が変わるのです。
これからも、根気よくアプローチを続け、私たち弁護士は、依頼者にとっても相手方にとってもベストな答えを探しているということや、そのために弁護士は皆さんのお手伝いがしたい、という思いも伝わればいいなと思っています。