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業務を減らすはずの「ゆう活」で疲労蓄積・・・弁護士「まやかしなので止めるべき」
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業務を減らすはずの「ゆう活」で疲労蓄積・・・弁護士「まやかしなので止めるべき」

内閣官房は10月末、国家公務員を対象にこの夏から行われていた、始業時間を早めて夕方に仕事を終える試み「ゆう活」について、約2万2000人にアンケート調査をした結果を発表した。「定時以降の業務が減らせた」「夕方の時間帯を活用できた」という意見がある一方で、「疲労が蓄積した」「寝不足になった」という声もあった。

「ゆう活」は、今年7月と8月に実施された、始業時間を1~2時間程度早め、その分夕方には仕事を終える試みだ。夕方からは、家族や友人との時間を楽しんで、「ワーク・ライフ・バランス」を実現する狙いだった。

アンケート結果によると、「ゆう活」によって定時以降の業務を「大きく減らせた」「減らせた」「どちらかといえば減らせた」と回答した人が合わせて48%と半数近くに上った。一方で、「変わらない」が45%、「増加した」と答えた人も7%いた。

また、「ゆう活」の業務への影響(複数回答可)について、一般職員の32.6%が「早く帰りやすい雰囲気が職場に醸成された」と回答した。「夕方の時間帯を活用できた」との回答も32.4%にのぼった。一方で、「業務の終了が早まらず疲労が蓄積した」(24.3%)、「生活リズムの乱れ等により寝不足になった」(32.7%)など、マイナスの影響もあったようだ。

内閣官房は来年度以降、改善を加えていきたいとしているが、労働問題に取り組む弁護士はどう見ているのだろうか。竹之内洋人弁護士に聞いた。

●「ゆう活」は業務効率化のきっかけにすぎない

「『ゆう活』は『仕事を早めにはじめて、早めに終える。そして、夕方からはオフを楽しむ』『長時間労働を削減する』といったことが目的のようですが、当然ながら『ゆう活』によって、1日が25時間に増えるわけではありませんし、『ゆう活』で必然的に長時間労働が削減されるわけでもありません」

竹之内弁護士はこのように指摘する。

「仕事を早く終えることができたとしても、翌日は今までより、早く仕事に行かねばなりません。労働時間数が変わらない前提では、早く帰ったからと余暇を楽しむ時間を増やせば、その分睡眠時間を削ることになるだけです。

『ゆう活』で余暇を楽しもうとか、ワーク・ライフ・バランスの適正化などというのは、私は『まやかし』だと思います」

問題点はどこにあるのだろうか。

「対外的な連絡が必要ないなど、外部と隔絶した業務なら、早く仕事を終えても問題ないでしょう。ですが、現実の仕事では、日常的に関係各所との連絡が必要な業務が少なくありません。

従来通りの時間帯で動いている人と接する業務では、毎日早く帰っていては、連絡がとりづらいなど、業務に支障が生じます。

そうなると、アンケート結果に出ているように、結局早く出勤して今まで通りの時間まで働くということになってしまいます。

『ゆう活』の掲げる目的達成のために必要なことは、残業時間の削減です。そのために必要なのは、業務効率化や人員の増加、労働時間規制の強化です。

『ゆう活』は業務効率化の『きっかけ』にはなるかもしれませんが、『ゆう活』でないとそれができないわけではありません。生活リズムを乱すなどのデメリットを考えれば、『ゆう活』は内容の改善というより、やめるべきと思います」

竹之内弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

竹之内 洋人
竹之内 洋人(たけのうち ひろと)弁護士 公園通り法律事務所
札幌弁護士会、日本労働弁護団員、元日本弁護士連合会労働法制委員会委員

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