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TKO木本さん、仲間に返金したらオールOK? 投資トラブルの法的責任を検証
会見する木本武宏さん(AbemaTV・https://abema.tv/channels/abema-news/slots/DWAHLwHXXfofSoより)

TKO木本さん、仲間に返金したらオールOK? 投資トラブルの法的責任を検証

2022年夏に投資トラブルが発覚したお笑いコンビTKOの木本武宏さんが1月23日、会見を開き、経緯を説明した。それぞれFX、不動産の投資を持ちかけてきたAさんとBさんと一時、連絡が取れなくなり、木本さんが友人10人から集めた約4億5000万円が宙に浮いた状態となった。現在は3分の1程度になっていると説明している。

会見で木本さんは紹介した友人には、私財などから捻出して肩代わり弁済していると説明。Aさんからは1億1000万円の返還で合意書を交わした。Bさんからも返済計画を伝えられているが、約束が果たされない場合は刑事告訴も辞さないと話した。

木本さんは「うまい話はない」などと語り、再出発を誓った形だが、10人もの友人を巻き込んだ責任が問われる可能性はもうないのか。澤井康生弁護士に聞いた。

● 持ちかけた人が逮捕されたらどうなる?

――会見では投資家2人への捜査などについて詳しい説明はありませんでした。友人をつないだ木本さんは、お金を返せば終わりなのでしょうか? もし今後2人が逮捕されるなどの動きがあったとしても、もう罪に問われることはないのでしょうか?

あくまで仮定の話ですが、今後、Aさん、Bさんが出資法違反(不特定多数に元本を保証して出資を募る)、金融商品取引法違反(無登録で金融商品取引業を行う)の疑いで逮捕された場合について解説します。

2人が逮捕された場合、資金集めに関与していた木本さんも違法性の認識の有無や関与の程度によっては共犯として立件される可能性はあります。

例えば、Aさんが無登録で金融商品取引業を行っていることを知っていて、自分も分け前を得るために資金集めに加担していたような場合とか、Bさんの不動産投資についても分け前を得るために資金集めに協力していたような場合には共謀共同正犯や幇助犯が成立する可能性があります。

例え事後的に集めた資金を返したとしても犯罪行為自体は成立しているので罪に問われることはないとはいえません。

● 木本さんが詐欺で訴えることは可能か

――木本さんはBさんについて、返済されなかった場合には刑事告訴、法的手段をとる構えを見せています。詐欺罪として告訴した場合、どんな捜査がなされるのでしょうか?

詐欺罪が成立するためにはBさんに当初から騙す意思があったことを立証しなければなりません。騙す意思は目に見えませんので、当時の客観的状況から証明することになります。

例えば当時の資金繰りの状況や不動産への投資状況、配当金の計算などから自転車操業に陥っており、出資を受けても返済できない状態だったにもかかわらず資金を集めていたといえる場合には詐欺罪の騙す意思が認められます。

これが立証できればもちろん逮捕もありえると思います。ただし、当初は真面目に不動産投資をしていて、結果的に破綻して返済できなくなったというような場合には騙す意思が認められないので、詐欺罪は成立しません。

●「過失による幇助」で責任認めた判例も

――木本さんはBさんから返金がなかったとしても「必ず自分で代位弁済して何年かかってもお返しする」と話しています。友人からの賠償請求は回避できるのでしょうか?

木本さんが紹介した友人から民事責任を問われる可能性は否定できません。投資詐欺の事案で、東京地裁で平成26年1月28日にこのような判決があります。

主催者から依頼を受けて、知人に取引の概要を説明して主催者と会わせたり、「連帯保証人になってもかまわない」と提案したりした紹介者について、「知人が取引に出資する意欲を高める役割をした」「故意に騙したものではないとしても、過失によって不法行為者である主催者を幇助したものというべきである」として、共同不法行為責任を認めています。

木本さんの関与の程度は不明ですが、上記裁判例と同様に友人が取引に出資する意欲を高める役割までしていた場合には共同不法行為責任を負う可能性があります。

ただし、木本さんが自主的に被害者に代位弁済していくのであれば、その限度で損害が填補されるので事実上、民事責任の追及は待ってもらえるのではないでしょうか。

プロフィール

澤井 康生
澤井 康生(さわい やすお)弁護士 秋法律事務所
警察官僚出身で警視庁刑事としての経験も有する。ファイナンスMBAを取得し、企業法務、一般民事事件、家事事件、刑事事件などを手がける傍ら東京簡易裁判所の非常勤裁判官、東京税理士会のインハウスロイヤー(非常勤)も歴任、公認不正検査士試験や金融コンプライアンスオフィサー1級試験にも合格、企業不祥事が起きた場合の第三者委員会の経験も豊富、その他各新聞での有識者コメント、テレビ・ラジオ等の出演も多く幅広い分野で活躍。陸上自衛隊予備自衛官(3等陸佐、少佐相当官)の資格も有する。現在、朝日新聞社ウェブサイトtelling「HELP ME 弁護士センセイ」連載。楽天証券ウェブサイト「トウシル」連載。毎月ラジオNIKKEIにもゲスト出演中。新宿区西早稲田の秋法律事務所のパートナー弁護士。代表著書「捜査本部というすごい仕組み」(マイナビ新書)など。

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