会社に届いたお年玉付き年賀はがきが当選したけど、もらっていいものかどうかーー。
東京都内のIT企業で働くマサオさんは、退職者宛に届いていた年賀状を片付けようとしていました。その前に一応、当選番号を確認したところ、お年玉切手シート(63円切手と84円切手のシール式切手シート)が当選しているはがきが2枚あったのです。
その年賀状は、別の会社から届いた、よくある社交辞令的なもので、本人に届ける必要はなさそうです。マサオさんは、「このまま捨てるくらいなら、切手シートはもらってもいいんじゃないか」と考えています。切手シートを懐に入れた場合、法的な問題になるのでしょうか。寺林智栄弁護士に聞きました。
●切手シートを受け取る権利はない
お年玉付年賀はがきの当選賞品を受け取る権利は誰にあるのかについては、「お年玉付郵便葉書等に関する法律」3条に定められています。
これによれば、賞品は、(1)はがきの受取人またはその一般承継人(相続人など)、(2)配達先に届かなかったときは購入者またはその一般承継人、が受け取る権利を持っています。
これを前提とすると、今回のケースの切手シートは、退職者に受け取る権利があるようにも思えます。
しかし、会社に届いた年賀状の中には、宛先が個人名であっても、取引先からのもので、名前の横などに部署名や役職名が付され、内容も業務に関連するようなものがあります。このような場合には、実質的に年賀状の名宛人は会社と考えることになります。
今回のケースで退職者宛に届いた年賀状は、別の会社から届いたもので、内容も社交辞令的なものなので、切手シートの受取人は、会社になるといえるでしょう。
いずれにせよ、マサオさんには切手シートを受け取る権利がありません。マサオさんが郵便局で切手シートを受け取ることは、権利がないにもかかわらず、あたかもこれがあるかのように装い、郵便局員を欺いて切手シートを交付させることになるので、詐欺罪(刑法246条1項)に該当する可能性があります。
マサオさんは出来心を起こす前に、まずは会社に切手シートをどうすべきか確認することが必要です。