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不当な懲戒請求、提訴予定の弁護士にサポート続々 カンパ700万円に税金はかかる?
記者会見した佐々木弁護士(左)、北弁護士

不当な懲戒請求、提訴予定の弁護士にサポート続々 カンパ700万円に税金はかかる?

弁護士に対し、組織的に大量の懲戒請求がなされた問題で、佐々木亮弁護士と北周士弁護士が裁判で争うことを表明している。

この問題は、保守系のブログが朝鮮学校への補助金交付などを求める声明を出した弁護士会に反発し、懲戒請求を呼びかけたというもの。2人の弁護士は声明には直接関わってないが、ツイッターの発言などからターゲットになったとみられる。

訴訟に当たってのネックは、請求者の数が960人にものぼるということだ。裁判を起こすにもお金がかかる。北弁護士のツイートによると、印紙代や郵送代だけで400万円近くかかるそうだ。

そこで両弁護士は「不当懲戒被害回復弁護団」という銀行口座をつくり、カンパを募っている。すでに800人を超える支援者から700万円以上が集まっているという。

こうしたカンパに対しても税金はかかるのだろうか。李顕史税理士に聞いた。

●贈与税の対象になりうるが…社会通念に照らして相当と認められれば非課税

ーーカンパに税金はかかりますか?

まずは、カンパという話から離れて、個人間の金銭授受について考えてみましょう。

税法では、贈与税といって一定額以上のお金を受け取った側が税金を支払う制度になっています。たとえば、友達から110万円以上のお金を受け取ったら、受け取った側が贈与税を確定申告時に支払います。

ちなみに日本赤十字社などに寄付したり、ふるさと納税をしたりした場合などは、一定額を限度として所得税の控除が認められています。この一定額というのは個人の所得によって変わります。

ーーでは、今回のカンパはどうでしょうか?

今回のカンパの場合は700万円以上集まっているとのことです。700万円を受け取ったとしたら、受け取る側に贈与税が発生するのが原則で、その税額は112万円になります。

しかし、せっかくのカンパに税金がかかるのはいかがなものかとして、社会通念に照らして税金をかけないのが相当と認められる場合には、贈与税を課税しないとされています(相続税法基本通達21の3-9)。

これは少し難しい内容ですが、一部引用すると「贈与者と受贈者との関係等に照らして社会通念上相当と認められるものについては、贈与税を課税しないことに取り扱う」と書かれています。

今回の場合は、カンパする人と受け取る側で特に利害関係はないと考えられ、受取側の利益を目的とするものでもないと考えられることから、贈与税が課税されないと考えられます。

●病児を「救う会」のカンパにも贈与税はかからない

ーー北弁護士のツイートによると、カンパを集める口座名義は「不当懲戒被害回復弁護団」となっています。受取側が複数人であることによる影響はありますか?

今回のケースでは、特に複数人だからといって影響はありません。仮に複数で受け取る場合でも、実際に受け取った金額により、贈与税が発生することになります。しかし、今回のケースでは目的が社会通念に照らして、贈与税が発生しないと考えられるため、特に問題とならないでしょう。

今回のようにカンパでは贈与税が発生しないケースはあります。たとえば、病気で海外治療が必要な子のための「○○ちゃんを救う会」では1億円以上が集まるケースがあると聞きます。せっかくの善意に税金をかけるのはいかがなものかと私も思います。

このように社会通念に照らして、贈与税をかけないケースもあるのです。同様に親が不慮の事故で亡くなり、遺児の育英資金としてのカンパも贈与税が発生しないと思われます。

【取材協力税理士】

李 顕史(り・けんじ)税理士

李総合会計事務所所長。一橋大学商学部卒。公認会計士東京会研修委員会委員。東京都大学等委託訓練講座講師。あらた監査法人金融部勤務等を経て、2010年に独立。金融部出身経歴を活かし、経営者にとって、難しいと感じる数字を分かりやすく伝えることに定評がある。また銀行等にもアドバイスを行っている。

事務所名 : 李総合会計事務所

事務所URL:http://lee-kaikei.jp/

(弁護士ドットコムニュース)

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