「検事の仕事が大好きだったのに、辞職に追い込まれたのが無念でなりません」
大阪地検トップだった北川健太郎・元検事正から性被害を受けたと訴えている女性検事が8月3日、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開いた。
会見では、大阪地検特捜部での研修中に違法な捜査を強要されたと訴え、辞職した元検事から託された手記を公表した。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●指導検事「上司に報告するな」→大阪高検「1回目だから許す」
手記によると、元検事は2023年、大阪地検特捜部で「脱税研修」を受けていた。
研修中、取り調べで被疑者が否認すると、指導担当の男性検事から、捜査側の見立てに沿った「作文」の自白調書を作成するよう指示されたという。
さらに、被疑者のスマートフォンから膨大な音声データが見つかると、「精査に時間がかかる」「上司には報告せずネグれ」と指示されたとしている。
元検事は、強い罪悪感から心身の不調をきたし、辞職を決意したという。
その後、大阪高検は調査の結果、パワーハラスメントを認定したものの、「1回目だから今回は許すことにした」という趣旨の説明を元検事にしたという。
女性検事が公表した元検事の手記(弁護士ドットコムニュース撮影)
●女性検事「公表の責任は私一人が負う」
元検事は、検察組織からの報復を恐れて、自ら手記を公表できずにいたという。
一方、北川健太郎・元検事正からの性被害を訴え続ける女性検事の姿を見て、「少しは検察組織がまともになれば」と考え、女性検事に手記を託したという。
女性検事は会見の冒頭、次のように説明した。
「手記は私に託され、その取り扱いを一任されました。今回の公表は、私の判断で決断しました。公表には被害者の意向は関わっていません。公表の責任は私一人が負います」
●職員に呼びかけ「腐敗に目を瞑ったらあなたや市民が犠牲になる」
女性検事はこれまで、検察組織に第三者委員会の設置を繰り返し求めてきた。その間にも、検察官による不祥事や違法な捜査が相次いで明らかになっている。
女性検事は「これは氷山の一角です」と述べたうえで、「検察に第三者の監視の目が入らないのが根本的な問題だと思います」と指摘した。
そして最後に、検察の現役職員に向けて次のように呼びかけた。
「このまま幹部職員の腐敗に目を瞑っていたら、次はあなたたちが犠牲になり、市民が犠牲になるのです。 声を上げても潰されるとあきらめないでください。外に向けて発してください。私たちに声を届けてください。 検察を良くするためには、あなたたちが第三者委員会が必要だと訴える声が必要なのです。内部の方々にはどうか声をあげてほしい」
検察組織の問題を話す元検事の郷原弁護士(2026年8月3日、東京・霞が関の司法記者クラブで、弁護士ドットコムニュース撮影)
●郷原信郎弁護士「検察は本当の意味で崩壊に向かうのではないか」
会見には、元検事の郷原信郎弁護士も同席した。検察で事件や不祥事が相次ぐ背景を問われると、次のように述べた。
「今回の(手記を書いた)検事がやっていることは、本来の最もまともな仕事。きちんと事件を処理しようという意欲を持った検事が担当したばかりに、こういう事件が起きてしまった。 検察のシステムが、真っ当な検事をきちんと評価して、その能力を伸ばしていくものになっていない。犯罪は複雑な現象だが、それを単純化し決めつけて、被疑者の話を聞かないような昔からの流儀が、いまだにまかり通っている。それを従順にやるような検事が重宝されるような悪しき慣行が続いている。 検察は来るところまで来てしまった。真剣に自覚しないと、本当の意味の検察組織の崩壊に向かってしまうのではないかと、大変心配しています」