DVDをレンタルする際に忘れてはいけないのが「返却」です。1日2日で気づけばまだいいものの、数か月単位になると延滞料金も高額になってしまいます。
弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも、「一年ほど前にDVDと漫画計15点をレンタルしたが、最近未返却であることを思い出した」という女性から相談が寄せられました。女性はお店に連絡するつもりだと言いますが、「高額請求され一度に払いきれない場合どうしたらいいのか」と不安な気持ちでいるようです。
「返却が怖い」とそのまま放置していると、請求金額は無制限に上がり続けるのでしょうか。また、高額請求された場合、提示された通り支払わなければならないのでしょうか。鈴木義仁弁護士に聞きました。
●消費者の利益を一方的に害する契約は無効になる
「DVDのレンタルは、法的には、動産の賃貸借契約にあたります。返却期限までに返却するという約束で、その期間のレンタル料を支払うという契約です。返却期限までに返却できなかった場合には、債務不履行ということになり、それによって生じた損害をレンタル業者に賠償しなければなりません。
この賠償額をあらかじめ定めることもでき、通常は、レンタル業者のカウンターなどに『延滞料1日につき○円』などと書いてあります。このことは、会員規約にも書かれているはずで、会員になるときには会員規約に同意して会員になっているため、原則としては、延滞料の支払い義務を負うことになります」
そうなると、高額請求された場合、提示された通り支払わなければならないのでしょうか。
「DVDや漫画本の販売価格を遙かに超える金額(たとえば数十万円)の延滞料を請求されたとすれば、約束を破ったのは悪かったとしても金額的には納得がいかないでしょう。
レンタル契約は、事業者と消費者との契約なので、『消費者契約法』という法律が適用されます。消費者契約法10条は、民法などの法律の適用をする場合に比べて消費者の義務を加重する特約で、信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効となります」
●延滞料は「再調達価額」が基準になる
「消費者の利益を一方的に害する」というと、今回のようなレンタルDVDの延滞料についてはどうでしょうか。
「延滞料の上限がなければ、その金額は、DVDや漫画本の販売価格の何十倍何百倍にもなり得ることになり、消費者には過大な不利益となる一方、レンタル業者は過大な利益を得ることになります。この過大な損害部分については無効になると考えられます。したがって、レンタル業者としては、返却期限までに返却を受けられなかったことによる通常の損害についてしか請求はできません」
そうなると、どのくらいの延滞料を支払うことになるのでしょうか。
「この通常の損害の上限については、DVDや漫画本をレンタル業者が再度仕入れる価格(再調達価格)が原則として基準になると考えられます。
大手のレンタル業者の規約では『延滞料金の上限額は、当該商品のレンタル用商品としての再調達費用相当額』とか『レンタル用品としてのメーカー設定価格相当額』などと定められています。この場合には、この価格以上の延滞料を請求されることはありません。
ただし、例外的に、そのDVDや漫画本が超人気商品で、返却された途端すぐにレンタルされるということがあれば、延滞期間が長くなると再調達価格等を超えることも理屈の上では、ありえます。
その場合には、そうした事情をレンタル業者側が主張立証する必要がありますので、裁判までされることはないでしょうが、万単位の金額にもなりえます。ただし、よほど長期間の延滞の場合でなければ、そのような事態にはならないでしょう」
場合によっては万単位の金額になりうるということですね。借り手側はどう行ったことに気をつけたらいいのでしょうか。
「まず会員になるときに、延滞料の上限が定められているかどうかを確認しましょう。そして、延滞したことに気がついたら、すぐに返却するようにしましょう」
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