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勤続14年、更新19回のベテラン契約社員「雇い止め」で労働審判申し立て…「無期転換」阻止の動きか
会見する島津葉子さん(中央)ら

勤続14年、更新19回のベテラン契約社員「雇い止め」で労働審判申し立て…「無期転換」阻止の動きか

医薬品や健康食品などを製造販売する「メルスモン製薬」(東京都豊島区)から不当な雇い止めにあったとして、日給制の非正規社員として勤めていた女性が1月29日、東京地裁に労働審判を申し立てた。同日、女性や代理人弁護士、労働組合が会見し明らかにした。

女性は島津葉子さん(50)。2003年7月にフルタイム勤務をする1年更新の契約社員として入社し、勤続年数は14年を超え、その間に雇用契約の更新が19回あった(途中から半年更新)。それにもかかわらず、2017年7月に会社側は雇用契約を更新しないと通告。契約が満了する9月15日をもって、雇い止めにあった。

●会社側、「手切れ金」をちらつかせる?

雇い止めの理由通知書で、会社側は「仕事の範囲がより高度となるには貴殿では対応しかねると判断しました。長年のお勤めに関してはお礼申し上げます。これについては会社は特別にお礼を差し上げることを考えています」としている。島津氏を支援する東京東部労働組合は「手切れ金のようなものをちらつかせている」と憤る。

今回、勤続年数が長く、契約更新を何度も重ねていた点を女性側は問題視する。代理人の河村健夫弁護士は「島津さんは有期雇用契約だが、14年働き、19回の契約更新を重ねてきた。労働契約法において無期と同視できるし、契約更新の期待が持てる労働者であることは間違いない。雇用における年齢差別を行いたいというのが本音だ」と話した。

●「無期転換」を阻止?

また、河村弁護士は、2018年4月より「無期転換ルール」が始まる前の雇い止めであることも指摘。「無期転換権の行使を妨害するために、こうした手を打ってきたと認識している。無期転換を妨害するための雇い止めのケースだということを訴えていく」とも述べた。

無期転換ルールとは、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルールのことだ。

●島津氏「今までどおり働きたいだけ」

会見で、島津氏は「私はただ今までどおりに働きたいだけです。これからも復職を求めて戦っていきます」。河村弁護士は「まずは会社に再考を促すため、話し合いベースの労働審判の申し立てを行った。会社が雇い直すと考え方を変えない限り、本裁判になる」とした。

労働審判とは、裁判官と労働審判員2人(労働者側代表と使用者側代表の1人ずつ)で構成される労働審判委員会が、原則として3回以内の期日で審理するもの。調停による解決に至らなければ、労働審判が下される。異議があれば、通常の訴訟に移行することが可能だ。

一方、メルスモン製薬は取材に「申立書が届いていないのでコメントできない」(総務担当)と答えた。

(取材:弁護士ドットコムニュース記者 下山祐治)早稲田大卒。国家公務員1種試験合格(法律職)。2007年、農林水産省入省。2010年に朝日新聞社に移り、記者として経済部や富山総局、高松総局で勤務。2017年12月、弁護士ドットコム株式会社に入社。twitter : @Yuji_Shimoyama

(弁護士ドットコムニュース)

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