夏の全国高校野球(8月5日開幕)にあわせて刊行される朝日新聞出版のムック『甲子園2026』(AERA増刊、8月3日発売)の表紙が、今年から選手の写真に変更された。
このムックは長年、アルプススタンドで応援する女子生徒らを表紙に起用してきたが、SNSでは違和感を訴える声が上がっていた。
弁護士ドットコムニュースも昨年、スポーツとジェンダーの研究者への取材をもとに「性の商品化」という観点から問題を報じている。
今年の変更について、AERA編集部は取材に対し「編集部内でリニューアルの機運が高まっていた」と説明した。(弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎)
●長年「応援する女子生徒」を表紙に起用
第108回全国高校野球選手権大会は、8月5日から22日までの18日間、甲子園球場で開かれる。その開幕2日前に発売されたのが、代表49校のデータを収録したこのムックだ。地方大会の戦績やチーム・個人の成績、監督の横顔などを掲載している。
もともとは『週刊朝日』の増刊として刊行され、同誌が2023年に休刊した後『AERA』増刊として発行されている。
高校野球100年記念号では、漫画『タッチ』のヒロインが表紙を飾ったこともあるが、それ以外ではアルプススタンドで応援する女子生徒を表紙に起用することが続き、そのたびにSNSなどで議論を呼んできた。
昨年発売号でも「甲子園名鑑の表紙を毎年恒例で女子高生にすることの気持ち悪さを。主役である球児が表紙でいいと思うんだが、そうはならない」といった投稿が広く拡散された。
今年の表紙には、前回大会で撮影された選手の写真が採用されている。
一方、誌面には表紙変更について詳しい説明はなく、編集後記にあたる欄に「本誌の表紙をリニューアルしました。躍動感あふれる写真でお届けします」と記されているだけだった。
●「応援する人たちに焦点を当てる試み」だった
そこで、弁護士ドットコムニュース編集部が変更の理由を尋ねたところ、朝日新聞出版のAERA編集部は次のように回答した。
「朝日新聞出版刊行の『甲子園』では、例年、グラウンドで活躍する選手たちだけでなく、アルプススタンドで応援する人たちにも焦点を当てる試みとして、女子生徒さんの写真を表紙に掲載してまいりました。
長期にわたって続けてきましたが、編集部内でリニューアルの機運が高まっていたこともあり、『甲子園2026』では前回大会で印象に残るシーンの写真を使用いたしました。
表紙写真については、毎年、大会前に編集部で検討し、より多くの読者の方々に届く写真を採用していきたいと思っております」
これまで女子生徒を表紙にしてきた理由について、版元は「アルプススタンドで応援する人たちにも焦点を当てる試み」と説明した。
ただ、アルプススタンドには女子生徒だけでなく、男子生徒や応援団員、吹奏楽部員もいる。「応援する人たち」に焦点を当てるという説明だけでは、なぜ表紙に女子生徒が起用され続けてきたのかという点まではわからず、この点については、回答では触れられていない。
●識者「性の商品化の構造として考える必要」
2025年までは「女子」が表紙に起用され続けてきた。
弁護士ドットコムニュースは昨年8月、この表紙をめぐる問題について、スポーツ領域におけるハラスメントを研究する高峰修・明治大学教授(政治経済学部/体育・スポーツ社会学/ジェンダー研究)に取材した。
高峰教授は当時、男子スポーツを扱う雑誌の表紙にあえて女性を使うという発想は、スポーツ界で問題になっているアスリートの盗撮と「スポーツにおいて女性を性の対象として扱うという点で共通している」と指摘した。
人のジェンダーやセクシュアリティを人格から切り離し、金銭と交換可能なものにすることは「性の商品化」と呼ばれる。
高峰教授は「甲子園雑誌の表紙の問題は、こういう性の商品化が生じる構造との関わりから考えていく必要がある」と話していた。