会社からの指示で大量の課題が与えられたら、どのように対応しますか。現実問題としては、研修課題を日中の業務時間内に堂々とするということはしにくく、泣く泣く休日や仕事が終わった後の時間を使って対応する人がほとんどではないでしょうか。
また、「週末を使って資料を読んでおいて。週明けには意見を出してもらうから」と金曜の夕方に言われ、途方に暮れた経験を持っている人もいるでしょう。会社が受講を義務づける研修の開催が休日で、絶望的な気持ちになった人もいるかもしれません。TwitterなどのSNSでは、こうしたことを「悲しい思い出」として披露する人もいます。
本来なら、会社の指示である以上、業務時間内に終わらせたいと考えるのが当然で、業務時間をはみ出る部分については、残業代や休日出勤手当の請求もしたくなるところ。高木由美子弁護士に、こうした疑問について解説してもらいました。
●会社の指揮監督下に置かれたら「労働時間」
ーーまず、法律上の労働時間とはどのようなものでしょうか
「法律上の労働時間とは、『労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間』をいいます。そして、会社から義務付けられ、又はこれを余儀なくされた場合は、原則として、会社の指揮監督下に置かれたもの、つまり労働時間と評価することが出来るというのが最高裁判所の判断です」
ーーどのような場合が考えられるでしょうか
「(1)研修や研修課題は会社から命じられたものである場合、(2)仮に明確に会社から命じられていなくても、それに参加したり、提出したりしなければ、賞与や昇格査定でマイナスの判断がされてしまう場合、(3)業務に密接に関連するものである場合、これら3つの場合は、研修に参加している時間や研修課題を取り組む時間は労働時間と言うことが出来ます。
研修課題が会社から命じられたものである場合は、その研修課題に取り組む時間は労働時間、つまり業務となりますので、当然、会社の業務時間内に取り組むべきものです」
●休日返上で会社命令の課題すれば割増賃金
ーー休日や仕事が終わった後の時間を使って、会社指示の課題をしたり、研修を受講したりした場合はどうなりますか
「それらの課題や研修が従業員の意思に任されていない、会社命令のものであれば、通常の労働時間外にそれらに費やした時間について、休日手当や時間外手当などの割増賃金の請求が出来ます。
もし、上司が業務時間内に会社命令の研修課題に取り組むことを阻止しようとした場合、時間外に課題に取り組めば割増賃金が発生すると反論すれば、上司もうるさく言わないのではないでしょうか」
●自由参加の研修なら手当請求できず
ーーでは業務時間外の研修はいかがですか
「従業員が会社の実施する研修に参加することについて、就業規則上の制裁等、不利益な扱いによる出席の強制がなく、自由参加の場合は、時間外労働になりません。つまり、休日手当や時間外手当の請求が出来ないとするのが判例です。
ですので、会社の研修の参加不参加について、就業規則など会社の規則ではどのように決められているのか、一度確認すると良いですね」