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「スモ休」非喫煙者に年間6日の特別有休、喫煙者「差别」じゃないの?
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「スモ休」非喫煙者に年間6日の特別有休、喫煙者「差别」じゃないの?

「タバコを吸わない人には年間6日の特別有休をあげます」。あるIT企業が今年9月から導入した人事制度に注目が集まっている。インターネット上では「なかなか面白い試みだ」「いい会社だな。うちも真似してほしい」といった賛同の声があがっているが…。

こんな一風変わった人事制度を導入したのは、都内のウェブマーケティング会社「ピアラ」。同社のホームページによると、社内で「喫煙者は通常の休憩時間以外にも1日数回業務を離れることがあり、非喫煙者との業務時間の差が問題ではないか」という声があがっていたという。

同社は(1)従業員一人一人の体調管理に関する意識を高め、従業員の健康増進を図ること(2)一部の喫煙者と非喫煙者の日中の労働時間の不平等感の解消を図ることを目的として、勤務時間外でもタバコを吸わない非喫煙者に対して、年間6日分の特別有休をあたえることにした。対象となるのは、正社員で、入社後6カ月以上の勤務している非喫煙者などだ。

この制度の名前は「スモ休」。ネット上では「スモ休、拡がってほしい」という賛同の声が多数あがっているが、「どうせ使い切れない」といった冷ややかな声もあがっている。さらに「タバコ嫌いだけどここまで差別化する必要もないのかなと」「差别以外のなにものでもない」という反対意見もちらほらと見られる。

はたして、今回の「スモ休」は法的に問題ないのだろうか。「喫煙者差别」にあたらないのだろうか。寺林智栄弁護士に聞いた。

●「喫煙者と非喫煙者を差別することに合理的な理由はない」

「この『スモ休』という制度ですが、健康増進という点では斬新であり、一見何の問題もなさそうに思えます。賛成意見が多いので、あえて別な視点から考えると、以下のような問題点があるように思います」

寺林弁護士はそう指摘する。どういった点に問題があるのだろうか。

「まず、対象を『非喫煙者』に限定している点です。喫煙者でも、勤務中や昼休みなどの外出したとき以外は吸わないという喫煙者もいるはずです。『スモ休』の制度趣旨から考えて、このように喫煙者と非喫煙者を差別することには、合理的な理由はないでしょう」

たしかに、喫煙者でもいろいろな人がいるため、一括りにするのは乱暴かもしれない。同社によると、スモ休は、非喫煙者が自己申告して利用する制度だ。また、喫煙者も「禁煙」を宣言して1年経つと利用できるという。寺林弁護士はつづける。

「また、世の中では、最近、非喫煙者の権利ばかりが注目されていますが、『喫煙の権利』も実際には存在します。ただ、吸っている人だけでなく、周囲の人に対して与える健康被害もあるため、その権利が置き去りにされているだけです。

喫煙者の権利という側面から考えた場合、喫煙場所と喫煙時間を限定し、その時間以外は喫煙は禁止という制度を設けることによって、同様の目的を達成することも可能です。

さらにいえば、喫煙者がタバコを吸いに行く時間の計算は、あくまで机上の平均的なものでしかありません。そうであるにも関わらず、非喫煙者との間に6日もの有給休暇の差を設けるのは『やりすぎではないか』と思います」

喫煙の権利がある中で、喫煙者と非喫煙者であまりにも差をつけすぎているということか。

「そうです。ニュースなどを見ても、あまり喫煙者から、不満の声は出ていないようですが、それは、喫煙者の肩身が現在狭いので『言えないだけ』かもしれません。私は非喫煙者であり、タバコの煙は極力吸いたくないですが、それと制度上の合理性の問題はまた別であると思います」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

寺林 智栄
寺林 智栄(てらばやし ともえ)弁護士 NTS総合弁護士法人札幌事務所
2007年弁護士登録。札幌弁護士会所属。法テラス愛知法律事務所、法テラス東京法律事務所、琥珀法律事務所(東京都渋谷区恵比寿)、ともえ法律事務所(東京都中央区日本橋箱崎町)、弁護士法人北千住パブリック法律事務所(東京都足立区千住)を経て、2022年11月より、NTS総合弁護士法人札幌事務所。離婚事件、相続事件などを得意としています。

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