医師の過労死が後を絶たないとして、全国医師ユニオンなど3団体は9月4日、「医師の働き方改革に関する声明」を発表した。(1)労働時間管理の適正化、(2)研修医の処遇の改善、(3)長時間労働の速やかな改善、(4)産業医面談など健康管理の厳格化ーーを求めている。
声明を発表したのは、全国医師ユニオンのほか、過労死弁護団全国連絡会議、東京過労死を考える家族の会。3団体は9月9日、中央大学駿河台記念館で医師の働き方を考えるシンポジウムも開催する。
●週60時間以上の労働「医師」が一番多い
総務省が2012年に発表した就業構造基本調査によると、労働時間が週60時間を超える人の割合が一番多い職業は医師で、41.8%。命を預かる仕事だけに、ストレスも多い。
しかし、政府は今年3月に発表した「働き方改革実行計画」の中で、患者が診療を求めれば拒めない「応召義務」(医師法19条)などを根拠に、罰則を伴う残業規制は、法施行から5年間猶予する方針を示している。3団体は医師を規制の対象外にするのは、医療事故の原因にもなるとして、速やかな労働条件改善を求めている。
●続く研修医の過労自殺…年配医師たちの「武勇伝」とのギャップも
医師の過労死をめぐっては、2016年度に4人が労災認定されている。今年5月には新潟市の30代女性研修医、7月には、都内の30代男性研修医の自殺がそれぞれ労災と認定された。
今年に入って判明した2件は、いずれも研修医。過労死弁護団の川人博弁護士は、「自己研鑽」の名目で研修医が酷使されていると指摘する。中でも、担当課が定期的に変わる前期研修医に比べ、後期研修医の労働環境が悪化しやすいという。
「(専門性が出てくる後期研修医は)若くて経験もあり、一定期間いる(ことが分かっている)。病院側としては労働力として酷使しようという誘惑にかられやすい条件になっている」
全国医師ユニオンの植山直人代表は、「自分のころは、週に当直何回やりこなしたんだという方もいる」として、年配医師との意識差も研修医がブラック化しやすい要因だと述べた。
また、川人弁護士は、医師の過労死については、詳細な分析がまだないとして、「請求と認定が何件あったのか、専門や性別、年齢、研修医は何人だったのかなど、厚労省が早急に調査する必要がある」と指摘した。
特に新潟の事件では、労基署が認定した残業時間が160時間超(死亡直前1カ月)に対し、病院側は月平均48時間と主張し、大きな乖離が見られた。病院側が提示した数字が小さいのは、被災者本人の自己申告がベースになっているためだ。
声明では、こうした悲劇を生まないためにも、労働時間の適正管理を要望。さらに産業医の面接や精神科への早期受診を促進する環境を整えるべきとしている。