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2017年01月18日 10時05分

かばんの中身は「大人のおもちゃ」、警察の所持品検査に賠償命令…何が問題だった?

かばんの中身は「大人のおもちゃ」、警察の所持品検査に賠償命令…何が問題だった?
写真はイメージです

神戸地裁は1月12日、警察の過剰な所持品検査に対し、賠償を命じる判決を言い渡した。

この裁判は、神戸市内の50代男性が起こした。神戸新聞によると、男性は2012年、車で仮眠をとっていたところ、警察から職務質問を受けた。男性は車内の確認には応じたが、所持品のかばんについては拒否。しかし、警察から再三の「説得」があり、中身を見せることになった。中から出てきたのは「大人のおもちゃ」だったという。

男性は精神的苦痛を受けたとして、兵庫県に対して10万円の損害賠償を求めて提訴。山口浩司裁判長は、プライバシー侵害の度合いが高く「限度を逸脱している」として、兵庫県に3万円の支払いを命じた。

一般的に職務質問や所持品検査は「任意」とされている。しかし、今回のケースのように実際に拒否することは難しいこともある。今回の判決をどう見るか、岩井羊一弁護士に聞いた。

●例外はあるものの、所持品検査には「令状」が必要

ーー職務質問や所持品検査は法的にどう位置付けられている?

職務質問は、挙動不審者に対し「停止させて」「質問をする」ことをいいます。警察官が対象者を停止させ、質問することができるのは、警察官職務執行法(警職法)に次のように記されているからです。

「警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者を停止させて質問することができる」

また、裁判例によれば、職務質問の際に職務質問の付随行為として、対象者の承諾がない場合にも所持品検査をすることができるとされています。

ただし、警職法には、「答弁を強要されることはない」とありますから、職務質問されても答えることを断り、立ち去ることも自由です。

ーー職務質問や所持品検査にはどんな意義がある?

通常、身体を拘束するためには逮捕状が必要ですし、所持品を検査するためには、捜索差押令状が必要です。

しかし、警察官は、防犯、交通取り締まりなどの過程で、現行犯や他の犯罪の証拠を発見することがあります。その場合に、証拠を確認して、犯人を確保したり犯罪を未然に防いだりしないと、更なる犯罪を引き起こす可能性や、犯人の処罰ができない可能性があります。そのために法律やその解釈で、職務質問や所持品検査ができる場合があるとされています。

たとえば、所持品検査についての裁判例で、警察官がホテル客室に赴き宿泊客に対し職務質問を行ったところ、覚せい剤事犯の嫌疑が飛躍的に高まったことから、客室内のテーブルにあった財布について所持品検査を行い、ファスナーの開いていた小銭入れの部分から覚せい剤を発見した措置は適法である、としたものがあります。

ただし、こんな風に職務質問やそれに付随して所持品検査ができる場合というのは例外的です。

●「毅然と断ればよい」

ーー人に見られたくないものを持っている人はどうやって拒否すればいい?

警職法によって所持品検査ができるとした上記のような裁判例は例外で、捜索差押令状がなければ、所持品検査をするのは違法です。必要以上に市民のプライバシーを侵害するからです。

警察官もまずは所持品を見せて欲しいと協力を求めます。その際はあくまでも「協力の依頼」ですから、見られたくない場合には断ることができます。毅然と断ればいいのです。

とはいえ、警察官に説得されれば、断ることは実際には難しくなります。今回の裁判は、承諾をしなかった男性に、警察官が再三の「説得」をしたことが違法だったと判断されたようです。

この事例ではそもそも承諾がなかった時点で、犯罪の嫌疑がある状態でもなく、それ以上の説得する必要性が認められないため、違法と判断したようです。男性の「承諾」も、このような説得の末のものであれば、「承諾」があったともいえないでしょう。

令状もなく所持品検査が許されるのは例外であり、所持品検査には裁判官の令状を要するというのが刑事訴訟法の原則です。今回の判決により、根拠なく再三説得することも違法とされました。見せたくないものを持っている場合には、見せられないといってはっきり断りましょう。

この判決を踏まえて、警察官は警職法に基づく職務質問を市民のプライバシーを侵害することがないように法律に従って適正に行って欲しいと思います。

(弁護士ドットコムニュース)

岩井 羊一弁護士
過労死弁護団全国連絡会議幹事、日弁連刑事弁護センター副委員長 愛知県弁護士会刑事弁護委員会 副委員長
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