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真夏の職場「ハーフパンツ論争」勃発!  黒々としたすね毛に困惑…「剃って」はハラスメントになる?
画像はイメージです(mits / PIXTA)

真夏の職場「ハーフパンツ論争」勃発! 黒々としたすね毛に困惑…「剃って」はハラスメントになる?

「おじさんがすね毛ボーボーのままハーフパンツで出社するのはハラスメントではないでしょうか」ーー。猛暑が続く中、こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられた。

都内のIT企業に勤めるAさん(40代)によると、勤務先はもともと服装は自由でしたが、猛暑の影響でハーフパンツで出社する男性社員が増えているそうです。

Aさん自身、猛暑が続いているため、ハーフパンツで出社すること自体は仕方ないと思っているそうですが、ハーフパンツから伸びた足に濃いすね毛が生えているのが目に入ると、「うっ」と不快な気持ちになるそうです。

Aさんは「ハーフパンツを履くなら、脱毛するか、せめてそってほしい」と考えています。

ハーフパンツでオフィスにいることは、場合によってはハラスメントにあたるのでしょうか。また、会社は、ハーフパンツの従業員に対してすね毛の処理などを命じることができるのでしょうか。加藤寛崇弁護士に聞きました。

●不快に感じる人がいても、法的責任が生じる可能性は低い

ーーまず、すね毛を処理せず出社し、オフィスで過ごすことがハラスメントにあたる可能性があるのでしょうか。

ある言動等を指して「これはハラスメントに当たらないのか」といった相談はしばしばありますが、結論から言えば、「ハラスメントかどうか」を論じることは法的には実益がありません。

パワハラ防止法とも称される法律(労働施策総合推進法)では、雇用主は、①職場において行われる優越的な関係を背景とした言動で、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであり、③その雇用する労働者の就業環境が害される言動を防止するための対策を講じる義務が課されています。

法律では「パワハラ」いう用語は使われていませんが、この言動を指して「パワハラ」と言ってもいいでしょう。

しかし、「すね毛が濃い男性がハーフパンツでオフィスにいる」のは、見る人によっては気分が悪くなり就業環境が害されるかもしれませんが、優越的な関係を背景とした言動に当たるものではなく、パワハラに該当するものではありません。

ーー相談者の問題意識としては、パワハラに当たらないまでも「ハラスメント」に当たるのではないかという趣旨とも思われます。

そもそも、どういう言動が「ハラスメント」になるか定まっているわけではありません。

広く人に不快感を与える行為を「ハラスメント」と評価してもいいのですが、そうだからといって不快感を抱かせる行為全てをやめさせることができるとか、賠償責任が生じるということにはなりません。

結局、「すね毛が濃い男性がハーフパンツでオフィスにいる」のを不快に感じる人がいるとしても、それは個々人の受け止めに左右されることであり、法的責任が生じることではありません。

● すね毛の脱毛や剃毛を命じることは「従業員に対する過度な制約になる可能性高い」

ーー会社が、従業員に対して、ハーフパンツで出勤するのであれば脱毛や剃毛などの処理をするよう命じることはできるでしょうか。

一般には、雇用主は、事業の円滑な遂行上必要かつ合理的な範囲内で、従業員の身だしなみに対して一定の制約を加えることは可能です。

しかし、従業員の服装等の身だしなみは、本来は従業員の個人的自由に属する事柄なので、無限定に制約することができるわけではありません。

裁判になったケースだと、従業員の自由を過度に制限する制約は許されないと判断される傾向にあります。

たとえば、郵便事業職員の「ひげ」「(男性の)長髪」を禁止する身だしなみ基準について、「顧客に不快感を与えるようなひげ及び長髪は不可とする」という内容に限定して適用されるべきとした例(大阪高裁2010年10月27日判決)や、市営地下鉄運転士に対するひげを生やしていたことを主たる理由とする低人事考課が違法と評価された例(大阪高裁2019年9月6日判決)などです。

相談者の勤務先はIT企業とのことで、顧客対応をする業務に就いているわけではないと推察されるので、接客上の問題が生じることはないでしょう。

また、ハーフパンツ姿であっても、男性がすね毛を剃ることが社会のマナーとして一般化しているとは言い難い上に、ヒゲに比べても剃らない人も多いであろうことも踏まえれば、脱毛や剃毛などの処理をするよう命じることは、従業員の自由に対する過度な制約として違法になる可能性が高いと思われます。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

加藤 寛崇
加藤 寛崇(かとう ひろたか)弁護士 みえ市民法律事務所
東大法学部卒。労働事件、家事事件など、多様な事件を扱う。労働事件は、労働事件専門の判例雑誌に掲載された裁判例も複数扱っている。

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