「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首が、兵庫の奥谷謙一県議への脅迫や名誉毀損などの容疑で書類送検され、不起訴とされていた事件で、神戸第2検察審査会が脅迫容疑の不起訴処分を「不当」と議決していたことが7月13日に報じられました。議決は6月24日付け。
朝日新聞などによると、検察審査会は、立花氏が2024年11月、兵庫県知事選に立候補した際、奥谷氏の自宅前で街頭演説し、「出てこい奥谷」などと発言したことが脅迫に当たるとして、検察が起訴しなかったことを「不当」と判断したとされています。一方で、奥谷県議に対する威力業務妨害などの容疑が不起訴になったことについては「相当」と判断しました。
「不起訴不当」とはどのような意味なのでしょうか。また、今後この件で立花氏が起訴されることはあるのでしょうか。簡単に解説します。
●「不起訴不当」ってどういう意味?
検察審査会の議決には「起訴相当」「不起訴不当」「不起訴相当」の3種類があります(検察審査会法39条の5)。
「起訴相当」と「不起訴不当」は似ているように思えますが、以下の違いがあります。
まず共通する点として、この2つの議決がなされた場合、検察官は、改めて起訴するかどうかを判断します(検察審査会法41条)。
そのうえで、「不起訴不当」は、不起訴処分についてもう一度検察官が起訴すべきか否かを再検討することを求める議決ですが、起訴を義務付けるものではありません。
たとえば検察官が再度不起訴とした場合、通常はそこでその事件は終結となります。
これに対し、「起訴相当」は、検察官が再度不起訴とした場合に、さらに検察審査会が議決をし、強制起訴をすることができる可能性があります。
起訴相当の方が効果が強いといえますが、起訴相当の議決や、その後の強制起訴の議決には、検察審査会11人のうち8人以上の多数決が必要です。(※通常は過半数なので6人以上で議決されます)
検察審査会の手続きの流れ
●なぜ「不当」とされたのでしょうか
検察審査会は「人通りの少ない住宅地に大勢の聴衆を集め、自宅前で被害者を糾弾する演説をするのは、一般人なら恐怖を感じる」と指摘したようです。
脅迫罪は、生命や身体などに害を加える旨を告知した場合に成立します(刑法222条1項)。
「自死されても困る」といった発言も、演説の状況全体からみて生命への言及と評価される可能性がある、とも考えられます。
●威力業務妨害などは「不起訴相当」
威力業務妨害罪などについては、証拠が十分でないとして「不起訴相当」とされています。この場合、検察官が再度の判断をすることもなく、基本的には事件は終結します。
その理由は明らかではなく、以下はあくまでも私見です。
威力業務妨害罪は、威力を用いて人の業務を妨害した場合に成立します(刑法234条)。
立花氏による本件発言が行われた場所は、県議の自宅前であり、議員としての業務を妨害したと評価するのが難しいと考えられた可能性もあるでしょう。
名誉毀損罪については、摘示した事実が真実であると信じたことについて相当の理由がある場合には処罰されないため、立証が難しいと判断された可能性があります。
●今後どうなる?
令和7年の犯罪白書によると、「起訴相当」「不起訴不当」の議決がなされ、検察官が再度検討したケースが2020年〜2024年までの5年間で865件あり、そのうち検察官により起訴されたのは252件でした。
単純に考えれば起訴率は29.1%となりますが、元の不起訴理由が嫌疑不十分だった場合と、起訴猶予(犯罪の立証は可能だが事案の性質を考慮し起訴しないと判断した場合)とでも差があります。
嫌疑不十分の場合の起訴率は18.0%であるのに対し、起訴猶予だった場合の起訴率は46.1%となっています。
今回の立花氏の脅迫は、嫌疑不十分とされているため、起訴される確率はデータからは18%、ということになります。
なお、起訴された場合の有罪率は、起訴相当の場合の強制起訴も併せた統計にはなりますが、昭和24年から令和6年までで93.6%となっています。
小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)