「#私が退職した本当の理由」ーー。
フジテレビの社員だった女性が元タレントの中居正広さんによるトラブルに巻き込まれたと報じられた時期から、このハッシュタグ付きの書き込みがネット上に相次ぎました。
弁護士ドットコムニュースは、LINEを通して「私が退職した本当の理由」のテーマで体験談を募ったところ、セクハラやパワハラを受けたにもかかわらず、上司や会社の都合によって泣き寝入りさせられたという情報が多く寄せられました。
しかし、原因はパワハラやセクハラには限定されません。この記事では、産・育休からの復帰後に受けた仕打ちや心身の不調をめぐる理由で辞めざるを得なかった方々のエピソードを紹介します。
●乳がん治療から復職後「がんの人は要らん」
中部地方に住む50代の女性。中途採用で入社した会社で働いていた途中、乳がんが見つかり、片方の乳房の全摘出と再建手術を受けたそうです。
その後もホルモン治療を受ける必要があり、副作用などの痛みに耐えながら職場に復帰しました。
乳房の再建中は胸に器具が入っていて、下着や自分のにの腕が胸の近くに当たるだけでも痛みを感じ、電車に乗ったりスーツケースを持って出張に行ったりすることが難しい状況だったといいます。
医師から時短勤務と出張禁止の働き方ができるように診断書を出してもらっていましたが、上司である男性の事業部長から次のような傷つく言葉をぶつけられたそうです。
「がんを取って終わりじゃないんかい」 「いつまでも出張にも行かへんで、いる意味ないな」 「たくさん休んだりする人に給料払うのはもったいない。がんの人は要らん」
その後、人事の担当者にも相談したり、リスク管理部に内部通報したりしましたが、ハラスメントに誠実に対応する姿勢がみられず、別の部署への異動を提案されました。
「そんな会社にいることが恥ずかしく、がんになった自分が悪いと言われたように思い、精神的な負担が大きくなったので、異動のタイミングで退職しました」
●「休まれると周りに示しがつかない」
産休や育休にまつわる体験談も複数寄せられました。
北海道の40代女性は、産休と育休から復帰した際に受けた理不尽な仕打ちが理由だったといいます。
女性はその会社でアルバイトから正社員になり、復職後も子育てと両立しながらのキャリアアップに意欲を燃やしていました。
しかし復職後、上司から「休まれると周りに示しがつかない」「今の課の空気を乱す」「課を変更してほしい」などと言われるようになったそうです。
精神的なダメージを受け、退職を余儀なくされました。
「今でも恨んでる。一生許さない」と怒りを隠しません。
●うつ病で休職「ひと月で治してくるように」
物流機器の販売などを手がける会社に勤めていたという40代の男性は、職場でいじめの標的になったといいます。
例えば、部内で一番早く職場に来るように強制されたり、パソコンで簡単なエクセルの操作をしただけで「すご〜い、さっすが〜」とあからさまにバカにしたような言い方をされたりしていたそうです。
いじめの標的になった理由について、男性は「私の職位が一番下だったのと、あまり仕事ができる方ではなかったことが理由かなと思っています」と振り返ります。
しかし、そうした状況が半年ほど続くと、眠れなくなり、文字を読んでも頭に入ってこなくなりました。病院に行くと、うつ病と診断され、すぐに休職に入りました。
それでも上司は「みんな忙しい。ひと月で治してくるように」などと無理難題を要求してきたそうです。
休職後、普通の薬では寝れなくなり、筋肉注射による睡眠導入剤を打たないと一睡もできない状態に追い込まれたといいます。
「いまだによく死ななかったものだと思います」。男性はそう振り返ります。
2年以上仕事を休んでいた時、会社の人事担当者から面談に呼ばれ、辞めるように圧力を受けたと感じ、つい退職の意向を伝えてしまったといいます。
今も睡眠障害などの症状が残っているといい、「いじめられていた時の事をいまだによく夢で見ます」
●同僚の柔軟剤のにおいで体調不良に
近年、問題となっている〝香害〟が理由だった人もいました。
新潟県に住む50代の女性は、同僚が着用する服から強い柔軟剤のにおいが発せられることで具合が悪くなったそうです。
1年後には仕事を休むまでに体調が悪くなり、その後「化学物質過敏症」と診断され、退職したといいます。