退職金の支払いを差し止める不当な処分によって、精神的苦痛を受けたとして、都内在住の元自衛官の男性が6月7日、国を相手取り、慰謝料など約415万円をもとめる国家賠償訴訟を東京地裁に起こした。
●退職金の差し止め処分は取り消されたが・・・
訴状などによると、陸上自衛隊に所属していた男性は2019年に退職したところ、退職手当と若年定年退職者給付金の支払いを差し止められる処分を受けた。
その理由として、有料の給食(有料喫食)の申込みで「過少申請疑い」があったとして、「詐欺または窃盗等」にあたるとされた。
しかし、書類作成上の男性のミスだったことから、男性は同年、処分を不服として、取消訴訟を起こして、犯罪にあたる可能性がないと主張した。
訴訟中に処分から1年経過したことで、法律上、これらの差し止め処分が取り消されたことから、男性は請求を取り下げていた。
●送別会に参加できなかったり、元同僚から連絡が来なくなった
原告側は今回、犯罪の故意の立証がないまま違法な処分されたことで取消訴訟を起こさなければならず、弁護士費用がかかったことや、詐欺・盗人呼ばわりされたり、送別会に参加できなかったり、元同僚から連絡が一切来なくなったとして、精神的苦痛を受けたと主張している。
提訴後、原告男性と代理人は東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた。
退職金の支払い差し止めについて、男性は「どういう経緯でこうなったのか、私自身はわからない部分が多々あります。申し訳ないけれども、組織に不信感が出ました。パワハラととれる言動も多々あり、いろいろ我慢してきましたが、(退職金の)差し止めについては、我慢する必要はない」と提訴に至った経緯を述べた。
代理人の指宿昭一弁護士は「退職金が支払われたからいいじゃないかという見方もあるかもしれませんが、こういうことは普通の企業や、国家公務員でも自衛隊以外では起こらないと思います。いとも簡単にできてしまう自衛隊の体質、確証はないが、おそらく似たようなことは他にもされているのではと考えています」と話した。