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連合がフリーランス支援の課題解決サイト「曖昧な雇用で働く就業者を守りたい」
Wor-Qのウェブサイト

連合がフリーランス支援の課題解決サイト「曖昧な雇用で働く就業者を守りたい」

日本労働組合総連合会(以下、連合)は2021年10月、フリーランスなどの「曖昧な雇用」で働く人のための課題解決サイト「Wor-Q(以下、ワーク)」の本格運用を開始した。

現在、フリーランスのための様々な団体が立ち上がっている中、連合としてフリーランスの支援を開始した理由は何なのか。連合総合組織局長の河野広宣氏とWor-Qサポートセンター局長の西野ゆかり氏に詳しく聞いた。<ライター・梶塚美帆(ミアキス)>

●相談サポート窓口やコミュニティ、お役立ち情報などを掲載

ワークは雇用労働者(会社に雇われて働く人)でなければ誰でも無料でサイトを利用できる。会社員との兼業フリーランスも利用可能。メールアドレスだけ登録すれば、「連合ネットワーク会員」となり、サイト上の全てのサービスを使うことができる。

ワークでは、フリーランスをはじめとした、雇用と自営の中間的な働き方である“曖昧な雇用”の人のために、次のようなサービスを行っている。

まず、弁護士相談サポート窓口。ワークの運営サイドが、相談内容に合わせて日本労働弁護団の弁護士を紹介する。電話相談は一人初回30分までなら無料となる。

弁護士以外にも、「連合への無料労働相談」と、ワークに集う仲間に相談できる「ワークコミュニティ」がある。連合への無料労働相談は、電話とLINEにて可能(LINEは期間限定)。「ワークコミュニティ」はまだ書き込みが少ないが、職種ごとにトピックを立ち上げて、悩みや解決方法を募ることができる。

画像タイトル 「Wor-Q」ウェブサイトより

労働相談事例集もあり、200件を超えるQ&Aが載っている。答えているのは日本労働弁護団。さらに、労働法制や社会保障制度などに詳しいフリーランスのライターが、経験に基づいて詳しく解説している。

他にも、フリーランスの困りごと・疑問・悩みにこたえるWebマガジン「ワークMagazine」の発行、誰もが働きやすい社会の実現に向けて声を集める「ワークOpinion Box」の設置、労働に関する用語集、働く人の助けになるサイトのリンク集などがある。

●掛金が手頃な「共済」を目玉に

ワークの最も大きな特徴となるのは、「ワーク共済」があることだという。

そもそも共済とは、組合員が一定の共済掛金を払い、不慮の事故などが起こったときに共済金が支払われる相互扶助の仕組みだ。

ワーク共済は、個人ではなく団体扱いで加入できるため、年会費3000円という手頃な掛金となっている。年齢や性別に関係なく、さらに健康状態に関わらず加入ができる。基本共済では死亡・重度障がい、入院、住宅災害などを保障する。

ただし、基本共済で支払われる共済金は最低限で、決して十分とは言えない。不安な場合はオプションで保障内容を充実させたり、医療共済を追加したりすることもできる。

ワーク共済ならではのオプションは、「賠償補償制度」と「所得補償制度」だ。

まず、「賠償補償制度」。料理の配達中に事故を起こした(業務遂行中の賠償事故)、納品物に欠陥があって第三者にケガをさせた(仕事の結果の事故)、業務用のパソコンがウイルス感染して情報が漏洩した(情報漏洩の事故)などに対応している。業務内容や年齢に関係なく掛金は年8440円で、業務遂行中の賠償事故と仕事の結果の事故は最高1億円、情報漏洩の事故は最高1000万円が支払われる。

次に、「所得補償制度」。これは、病気やケガで働けなくなったときに、日数に応じて保険金を受け取ることができる。保険料は年齢と職種によって異なるが、例えば28歳のWEBデザイナーなら、受け取れる金額を月20万円とした場合、掛金は月2180円となる。

連合の西野ゆかり氏は「事故などが起きてから賠償金がかかることを知る人もいる。このような共済があることを知っていたら入りたかったという声も上がっているので、これからPRに力を入れていきたい」と意気込む。

●「労働者概念を見直し、法的保護の拡充を」

フリーランスと聞くと、その人のスキルを活かして自由に働いているイメージを持つ人が多いだろう。また、パラレルキャリアを目指し、副業や複業を行う人は、本業とは別に自分の好きな分野で成長し、才能を伸ばしていくというイメージがあるかもしれない。

しかし西野氏は、「ワークでは恵まれたフリーランスの方だけでなく、止むを得ず曖昧な雇用として働いている方や、本業での収入が苦しくて副業をせざるを得ない人たちにも寄り添いたい」と語る。

画像タイトル 「Wor-Q」ウェブサイトより

その背景には、2021年に行われた、フリーランスとして働く人の実態調査がある。連合が注目したのは、労働時間と年収である。

「若い方が多いと予測していたが、回答者は40〜50代が8割を占めている。そして、週に30〜40時間ほど働いている人が約2割と最も多いにも関わらず、年収が100万円未満の人が約3割で最も多かった。だから、曖昧な雇用で働く就業者を守る仕組みが必要だと考えた」(西野氏)

画像タイトル 「フリーランスとして働く人の意識・実態調査2021より」

画像タイトル 「フリーランスとして働く人の意識・実態調査2021より」

画像タイトル 「フリーランスとして働く人の意識・実態調査2021より」

また、連合の河野広宣氏は、「曖昧な雇用ということで、様々なセーフティネットからこぼれ落ちてしまう現状に、問題意識を持っている。さらに、働き方の実態をみると、明らかに雇用労働者であるケースも多い。まずは、実態として労働者性が認められる者に対しては、確実に労働関係法令の適用が図られるよう徹底するとともに、労働者概念を社会の実態に合わせて見直し、法的保護を拡充していく必要がある。

一方で、たとえ労働者性が低い場合でも、フリーランスだからといって、最低賃金よりずっと低い報酬や、長時間労働を強いられるような契約が横行するなど、課題は山積している」と語る。

さらに、連合としての長期的な見通しもあるようだ。

「私たちは労働組合なので、先々には新たな形態での組織化を目指していきたい。数を集めて優位性を高めることが、労働組合の得意分野だ。将来的に、職種ごとに組織化できるようになれば、発注先の会社に職業別の労働組合として交渉などができるようになるかもしれない」(河野氏)

連合総研の調査によると、請負で働く人の3人に1人は労働者に近い働き方をしていて、「労働者性」が強いほど、労働者としての保護を求める傾向があるそうだ。これまでは雇用労働者が連帯する組織として機能してきた労働組合が、フリーランスなどの就労者にどこまでの支援ができるのか、注目していきたい。

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