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パワハラ「どれだけ苦悩したかを知って」加害者に謝罪を求めたい! 強制はできる?
写真はイメージです(yamasan / PIXTA)

パワハラ「どれだけ苦悩したかを知って」加害者に謝罪を求めたい! 強制はできる?

職場でパワハラを受けたので、相手に謝罪を求めたいーー。弁護士ドットコムに、このような相談が複数寄せられている。

ある相談者は、13年前に上司のパワハラが原因でうつ病になり、会社を退職した。上司は宗教系の大学出身である相談者を「信者」と決めつけ、「お前みたいな信者大嫌いだから」と言ったり、客の前で説教したりすることなどがあったという。

退職してから年月は経過しているものの、新しく仕事を始めても、ことあるごとに当時の記憶が蘇ってしまい、長続きしないそうだ。

相談者は「金銭的なことは求めないが、この13年どれだけ苦悩したかを知ってほしい」と綴っている。

●謝罪を強制することは、法的にはできない

過去にパワハラをした上司に対して、謝罪を法的に強制することはできるのだろうか。森田梨沙弁護士は「結論から申し上げますと、今回のケースで謝罪を強制することは、法的には出来ません」と語る。

「パワハラに該当する行為があった場合、被害者はそれによって受けた精神的苦痛について、行為者に対し慰謝料請求をすることが考えられます。しかし、法律上認められているのはそのような金銭請求のみであり、謝罪を強制することは認められていません。

なお、謝罪の強制といえば、謝罪広告を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、謝罪広告の掲載を求めることができるのは、不法行為の中でも名誉毀損に該当する場合に限られ、民法第723条『名誉を回復するのに適当な処分』の一つとして請求しうるということになっています」

●「謝罪のみ」を求めることは難しいけれど…

弁護士ドットコムには、相談者のように慰謝料よりも謝罪を要求したいという相談が複数寄せられている。森田弁護士も「お金の問題ではない。謝罪してほしい」と相談を受けることが時々あるという。

「先ほど述べたとおり、法的に謝罪を強制することは難しいのですが、示談交渉または裁判所における和解交渉の場で、相手が納得すれば、和解書の中に『真摯に謝罪する』といった文言を入れてもらうこともあります。

ただ、あくまで相手が合意する必要がありますので、謝罪のみを求めるのは、相談者の方にとっても不本意な結果になることが多いと思われます。

たとえ謝罪がもらえなくても、慰謝料請求が認められるということは、すなわち相手の行為によってこちらが精神的に傷ついたことが認められたことを意味します。そのことを前向きに捉え、立ち直るきっかけになっていただければ、と思います」

●慰謝料請求を検討する場合は、早めに相談を

今回のケースでは、相談者は金銭的なことは求めていない。しかし、もしパワハラをした上司に対して慰謝料を請求する場合、13年以上前の出来事となると難しいのだろうか。

森田弁護士は「今回のケースでは、慰謝料請求は難しいと思われます」と説明する。

「不法行為責任の時効は、被害者が『損害および加害者を知った時から3年』とされています。一般の債権の消滅時効より短くなっていますので(ただし、改正民法では生命・身体の侵害による損害賠償請求権は5年)、不法行為による損害賠償請求を検討されている場合は、早めに専門家にご相談されることをお勧めします」

プロフィール

森田 梨沙
森田 梨沙(もりた りさ)弁護士 共進総合法律事務所
中小企業法務、労働案件、一般民事(交通事故、不動産、離婚事件他)など幅広く手掛ける。事案の早期解決及び予防法務の観点から、依頼者と密なコミュニケーションをとることを常に心がけている。趣味はキックボクシング。

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