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職場に忍び寄る「義母」の魔の手…会社に押しかけ、電話で悪口、どう対応する?
写真はイメージです(Ushico / PIXTA)

職場に忍び寄る「義母」の魔の手…会社に押しかけ、電話で悪口、どう対応する?

夫婦の離婚問題に義母が介入し、事態が泥沼化するケースも少なくない。中には、妻の職場に押しかけてきたり、電話してきたりする義母もいる。

弁護士ドットコムにも、夫と離婚調停中の女性から「義母が私の職場に押しかけ、面談を強要してきた」という相談が寄せられている。義母が職場にやってきたのは大事な取引の最中だったため、非常に困ったそうだ。

また、妻と離婚に向けて話し合っている最中だという男性からは「義母が職場に電話をかけたり、手紙を送ったりしており、働きにくくなっている」との相談が寄せられている。

電話に対応した相談者(男性)の上司は、義母から「(相談者は)逃げてばかりで離婚届にサインをしてくれない。離婚原因は(相談者)にあり、結婚当初から性格が暗く、娘も私も嫌だった。とても迷惑している。私たちの力になって」などといった話を20分以上聞かされたという。同じような内容の手紙も届くようになり、相談者の離婚話は社内でまたたく間に広まったそうだ。

このような義母の行為に法的な問題はないのだろうか。澤藤亮介弁護士に聞いた。

●義母の行為「法的に非常に問題がある」

ーーそもそも、離婚問題に義両親が介入することに問題はないのでしょうか。

「離婚問題に相手方配偶者のご両親様(義父、義母)が介入してくることは、実務上、たびたび起こる事象といえます。

ご両親様のこのような行動は、我が子を大事に思う親としての気持ちとしては分からなくもありません。しかし、法的な見地からすれば、離婚問題の当事者はあくまで夫婦のみであり、裁判所での調停や訴訟などでも、ご両親様が離婚事件の当事者として参加することは通常認められておりません」

ーー今回、義母が離婚問題を理由として、息子の妻の勤務先に訪問したり、娘の夫の勤務先に電話をかけたりしています。このような行為については、法的にどのような問題があるのでしょうか。

「離婚問題は本来、(1)夫婦間において、(2)協議、調停または裁判という方法で解決すべき問題です。

そのため、離婚の法的な当事者ではない義母が、離婚問題とまったく関係のない妻や夫の勤務先に対して何らかのアクセスをおこなうことは、法的に非常に問題がある行為と言わざるを得ません。

訪問や電話などの態様や回数などにもよるかと思われますが、相談者(妻あるいは夫)に対しては、夫あるいは妻との離婚協議や調停に対する不当な圧力、プライバシー権侵害などの不法行為となり、相談者から義母への慰謝料請求の対象となる可能性があります。

加えて、夫と離婚調停中の相談者(妻)に対して面談を強制する行為には、刑法上の強要罪(223条)が成立する恐れがあります。

また、勤務先に対しても、業務妨害に基づく民法上の不法行為、さらに何度も繰り返すなどの悪質なケースでは刑法上の業務妨害罪(233条、234条)に該当する可能性も出てきます」

●義母の行為をやめさせるためには?

ーーこのような義母の行為をやめさせるために、とりうる対応策はありますか。

「夫(あるいは妻)と離婚調停中の場合、これら義母の行為について調停委員に説明の上、裁判所から妻(あるいは夫)側に対し、調停中のため、そのような行為は自重するよう働きかけてもらうことが考えられます。

それでも義母が従わない場合、別途、義母に対する事件として弁護士に依頼した上で、義母に対し、勤務先等へのアクセスを禁ずる警告を内容証明郵便等でおこなってもらう方法も有効といえます。

他方、勤務先においても、本来の業務から逸脱する対応を繰り返し求められるような場合は、勤務先に対する業務妨害と見なした上で、勤務先自体から、または、顧問弁護士などに依頼の上、義母に対する業務妨害禁止の警告書面を送ることが考えられます。

繰り返しにはなりますが、離婚問題は(1)夫婦間において、(2)協議、調停または裁判という方法で解決すべき問題です。

これを大きく逸脱する不当な威圧行為等に対しては、臆することなく、毅然とした態度で臨み、本来あるべき解決方法での決着を試みることが肝要だと思われます」

プロフィール

澤藤 亮介
澤藤 亮介(さわふじ りょうすけ)弁護士 向陽法律事務所
東京弁護士会所属。2003年弁護士登録。2010年に新宿(東京)キーウェスト法律事務所を設立後、離婚、男女問題、相続などを中心に取り扱い、2024年2月から現在の法律事務所でパートナー弁護士として勤務。自身がApple製品全般を好きなこともあり、ITをフル活用し業務の効率化を図っている。日経BP社『iPadで行こう!』などにも寄稿。

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