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「祖父が亡くなった!」ウソの忌引休暇を取得、法的にどんな問題がある?
画像はイメージです(プラナ / PIXTA)

「祖父が亡くなった!」ウソの忌引休暇を取得、法的にどんな問題がある?

親族が亡くなったと嘘をついて「忌引休暇」を申請するーー。そんな縁起でもないことをする人たちがいるようだ。

兵庫県川西市は2月17日、祖父が亡くなったとウソを言って「忌服休暇」を申請したとして、男性職員を減給10分の1(3カ月)の懲戒処分にしたと発表した。

このようなケースは民間の企業でも、起こっているようだ。弁護士ドットコムには「私用で休暇をとるために、祖父や親戚が亡くなったことにして忌引休暇をとったら、バレるとどうなりますか?」という質問が寄せられている。

会社によっては、忌引休暇は有給となる。働いてもいないのに、給料が出ている以上、これは会社に対する詐欺になり得るのではないだろうか。加藤寛崇弁護士に聞いた。

●賃金は「労働の提供」があって支払われる

ーー嘘の忌引休暇の取得は「詐欺」に該当し得るのでしょうか

公務員も会社も、忌引休暇をとっても休んだ日の分給与が減らされることはない有給が多いでしょうから、その前提で回答します。

労働契約は、「労働の提供」と「賃金の支払」を合意することで成立しています。つまり、原則として、現実に仕事をすることと引き換えに賃金が支払われます。

親族が死亡したとウソの申告をして忌引休暇を取得し、仕事をせずに給与の支払を受ければ、会社をだまして本来は支払われない給与の支払を受けたと言えます。そのため、詐欺罪が成立すると考えられます。

ただ、現実に処罰された事例は確認できませんでした。

●「詐欺」で処罰されなくても「懲戒処分」はあり得る

ーー今回の事例のような減給処分など懲戒処分になる可能性はどうでしょうか

このような不正行為は、労働契約そのものに関わる不正なので、懲戒処分を受けるのはやむを得ません。

裁判でも、各種手当の不正受給については、受給した額や他の処分例との均衡などにもよりますが、解雇(公務員なら懲戒免職)が有効と認められているケースが多いです。

嘘の忌引休暇の取得の場合、数日程度で解雇はないとしても、減給などの懲戒処分はあり得るでしょう。

なお、休暇の中でも、年次有給休暇については理由にかかわらず労働者が自由に取得できるものです。したがって、仮に年次有給休暇申請時に理由を述べていても(述べる必要もないですが)、述べた理由と異なる目的に使用して構いません。

プロフィール

加藤 寛崇
加藤 寛崇(かとう ひろたか)弁護士 みえ市民法律事務所
東大法学部卒。労働事件、家事事件など、多様な事件を扱う。労働事件は、労働事件専門の判例雑誌に掲載された裁判例も複数扱っている。

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