オンラインゲームなどを展開している合同会社DMM.com(本社・東京都港区、亀山敬司・最高経営責任者)の社内でコンプライアンス軽視を指摘したところ、違法な解雇をされて精神的苦痛を被ったなどとして、社員の男性が11月6日、同社を相手取り約330万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。
訴状などによると、男性は司法試験に合格して法曹資格を取得後、2016年6月にDMMに入社。重要プロジェクトのリーダーとして働いていた。しかし、社内で「コンプライアンスの軽視」を疑問視していたところ、上司との面談で「会社の弱点となる法的な知識を同僚に教えることは、会社に対する敵対行為」などと言われ、その翌日に亀山会長から解雇を言い渡されたという。
男性の解雇については、すでに地位確認訴訟で無効が認められ、男性は職場に復帰している。しかし、東京・霞が関の厚労省記者クラブで同日、会見した男性は、「自分はたまたま法的な知識があったが、同じような社員に泣き寝入りしてほしくない」と提訴の理由を語った。
●同僚に法律知識を共有することは「会社に対する敵対行為」
訴状などによると、男性は2016年10月、社内の「契約社員の雇い止め」について法的な問題があると指摘するメールを判例とともに上司に送ったところ、同年11月に上司2人に呼び出された。4時間もの面談の中で上司は、「違法」という認識を示しつつ、男性に対してこう述べたという。
「僕らに教えてくれた法律の話(他の社員に)しました?」
「僕らが心配しているのは、マネージメントだったり、会長だったり、僕ら会社側がそういう判断をしてお互い(会社と社員が)納得している状態でその話のウィークポイントを教えに●●さん(男性)がいっちゃうと困るなという話です」
「その話を他にばーってしちゃうと、他の人もそういうところがこの会社の弱点なんだと知るじゃないですか。それって会社にとっては良くないじゃないですか」
訴状では、他にも上司らは同僚と法律知識を共有することは敵対行為とみなすとして、次のように話したという。
「そういう考え方があるよって、弁護士事務所行ったらとか、相談してきたら、裁判起こしたらという風に知恵をつけることが敵対行動だと思っているんですね」
また、男性が会社の違法行為を告発する気があるのかを確認。上司らは、男性の正義感や遵法精神について繰り返し質問したとする。
「じゃあ例えば、DMMが契約を他の会社と結ぼうとしている時に、グレーな話で、僕らがもしかしたら何かの法に触れて違法なことを、違法というかグレーなところに関わってしまう契約だった時に、そこの部分はそういう考えがあるというのを教えるということですか、相手方に?」
男性はこれらの会話をすべて録音していた。
●亀山会長が直々に言い渡した男性の「解雇」、裁判で無効に
この面談の翌日、男性は同僚らと亀山会長の前でプレゼンテーションする機会があった。しかし、亀山会長は男性も知らなかった社内ルールを持ち出し、それを破ったとして直接、解雇を言い渡したという。
この解雇については、男性が地位確認訴訟を横浜地裁で起こし、今年3月に、「会社の挙げる解雇理由は客観的合理性が欠ける」として男性の訴えを認める判決が出され、すでに確定している。男性は会社に復帰したが、会社側から謝罪はないという。
訴状では、上司らが面談で男性の正義感や遵法精神について「内心の調査」をしたことは、男性の精神的自由に介入、侵害していることや理由もなく解雇を強行したことについて、精神的苦痛を被ったと訴えている。
男性の代理人である市橋耕太弁護士は会見で、「本件の内心調査や解雇は、著名で社会的責任を負うべき企業にあるまじき行為」と指摘。「本来、法令違反などが存在するならばその是正を図るべきところ、逆に法令を遵守しようとする者を排除するなどあってはならないことです」と批判した。
DMM.comは弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「現時点でまだ訴状が届いていないので、事実確認にいたっておりません」とコメントしている。
【11月8日追記】
DMM.comの亀山会長(最高経営責任者と兼務)は11月7日、オウンドメディア「DMM inside」で今回の騒動について見解を発表した。「解決すべく最大限の努力を尽くしていきたい」としている。