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パワハラ調査をめぐる訴訟「会議の秘密録音は違法性高い」証拠不採用に
会見した笹山尚人弁護士

パワハラ調査をめぐる訴訟「会議の秘密録音は違法性高い」証拠不採用に

パワハラ問題を審議する委員会の調査が不十分だとして、私立大学の職員が勤務する大学を訴えていた裁判の控訴審判決が5月19日、東京高裁であった。委員会の会議を秘密録音したデータが証拠として採用されるかどうかが争点の1つになっていたが、裁判所は、会議の秘密性の高さを理由に「録音することの違法性の程度は極めて高い」として排除。調査自体についても、「違法ないし不当であると評価することはできない」などとして、控訴を棄却した。

控訴していたのは、女性上司からのパワハラ被害にあったと主張する私立大学の男性職員。大学のパワハラ防止委員会に申し立てを行ったが、十分な調査をしてもらえず、また、会議の中で、委員が男性の名誉を毀損する発言をしていたとして、大学側に200万円の慰謝料を請求していた。

男性職員の代理人によると、委員会の会議を録音したとされるデータには、「なんかちょっと家庭環境が…」「どちらがハラスメントかなっていうのは感じちゃう」などの発言が収録されていた。また、委員長らしき人物の「これ、貶めようとしたら簡単にできちゃうよね。だって自分がそう思えばいいんでしょ」「冤罪と一緒で、ええ、セクハラの痴漢行為のね」といった声も含まれていたという。

しかし、裁判所は録音について、「控訴人(男性職員)が関わっている可能性がある」「議事録と一致しないので信憑性が低い」などと評価。一審同様、違法性の高い録音として証拠から排除するとともに、仮に証拠として採用された場合にも、公開を前提としていない議論であることなどから、証拠価値が乏しいとした。

男性職員の代理人・笹山尚人弁護士は、判決後、東京・霞が関の司法記者クラブで開かれた会見で次のように語った。

「パワハラを実証する上で、『秘密録音して良いのか』という相談はよく受けます。今までの裁判で、秘密録音による証拠が違法だと排除されたことはほとんどないし、私に関しては一度もない。だから、どんどんしてくださいとアドバイスしてきました。

この判決が、どれだけ一般に影響するのかという部分はあるが、職場の中で『今から会議をするからな、秘密だからな』みたいな話をされた時に、これと同じ論理で録音が使えないとなると、何を言ってもオッケーということになる。そういう意味で(今回の)証拠排除はものすごく慎重であるべきだったと思います。裁判所の捉え方が変わってきている可能性があるなと思って心配です。これが一般化すると怖いなと思っています」

男性側は上告を検討しているという。

(弁護士ドットコムニュース)

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