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「アホ」「辞めてしまえ」上司が部下に暴言を吐いても「口癖」ならば処分は軽くなる?
上司の暴言を毎日聞かされていれば、他の職員も気を病んでしまいかねない

「アホ」「辞めてしまえ」上司が部下に暴言を吐いても「口癖」ならば処分は軽くなる?

兵庫県警は9月上旬、部下の警部に対して「アホ」や「辞めてしまえ」など、パワハラ発言を繰り返したとして、県警本部刑事部の警視(53)を「本部長注意」にしたと発表した。被害者の警部は体調を崩し、自宅療養中だという。

「本部長注意」は、いわゆる懲戒処分ではなく、比較的軽いものだ。共同通信によると、兵庫県警は「本人の口癖でもあることなど総合的に判断して、懲戒処分にしなかった」と発表している。

ただ、「アホ」や「辞めてしまえ」という発言は、相手の人格を否定するものだし、深く傷つけることはあるだろう。「口癖だったから」という理由で懲戒処分にしなかったのは、妥当な判断と言えるのだろうか。パワハラの問題にくわしい白川秀之弁護士に聞いた。

●そもそも「パワハラ」とは?

「パワハラとは、職務上の地位などの優位性を利用して、社員に精神的・身体的ストレスを与えたり、職場環境を悪化させる行為のことです。

今回のように上司が部下に対して、『アホ』や『辞めてしまえ』という発言を繰り返すことは、れっきとしたパワハラです」

白川弁護士はこのように説明する。パワハラをした人に対しては法律上、どのような処分を下せるのだろうか。

「処分の内容は、パワハラの態様や程度、回数、被害者への損害の内容、過去の処分歴などによって変わってきます。

たとえば、過去にパワハラで処分を受けているのに、同じようなパワハラ繰り返した場合には、反省していないとしてさらに重い処分が下される可能性があります。

パワハラの内容があまりにもひどい場合は、懲戒処分を下すことも可能です」

●今回の処分は妥当なのか?

今回のケースでは、警視の発言は「本人の口癖」だったとして、懲戒処分よりもずっと軽い「本部長注意」とされた。その理由について、白川弁護士はこのように説明する。

「まず今回のパワハラは、上司と部下の関係といっても、警視と警部という一定の地位がある者同士の間で起こりました。

さらに、『本人の口癖』という認識が職場内にあったなら、周りの人にパワハラとして意識されていなかった可能性があります。そのために、軽い処分にとどまったのでしょう」

今回のような軽い処分は、果たして妥当だったのだろうか?

「個人的には、『懲戒処分』ではなく、『本部長注意』という処分が下されたのは『甘い』という気がします。少なくとも今回の件で、この警視が上司として不適格なことは明らかになったといえるので、降格等の処分を下すべきだったと思います。

それに、警視の発言が本当に『本人の口癖』なら、過去にも同じようなパワハラを繰り返すなど常習性があった可能性があります。本人にもパワハラをしている自覚はほぼないと思われるので、今後も警視の口癖で傷つく人が出るかもしれません。

加えて、報道によると、被害者の警部は体調を崩し、自宅療養中となっています。パワハラが体調不良の原因の一つという可能性もありますから、警視の口癖が被害者や職場に与えた影響は軽くはないでしょう。やはり、今回の処分は甘いと思います」

白川弁護士はこのように指摘していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

白川 秀之
白川 秀之(しらかわ ひでゆき)弁護士 弁護士法人名古屋北法律事務所
2004年弁護士登録。一般民事事件を幅広く行っておりますが、労働事件を専門的に取り組んでおります。日本労働弁護団常任幹事、東海労働弁護団事務局長、愛知県弁護士会刑事弁護委員会

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