「会社の飲み会に参加しない社員は、ボーナスを減らす」。勤務する会社の社長から、こんな指示を出されて困ったという男性が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに悩みを寄せている。
その会社では、今期の業績が好調だったので、打ち上げの飲み会をすることになった。しかし、男性はそうした会には参加したくないのだそうだ。「カラオケ大会の商品を豪華にするため」という名目で、参加費を徴収されるのも納得できないという。
会社が従業員の慰労会や懇親会を開くのは、珍しいことではない。しかし、「参加しないとボーナスや給与を減らす」と告知して、従業員に参加を迫ることは許されるのだろうか。労働問題にくわしい白鳥玲子弁護士に聞いた。
●飲み会不参加で給与を減らすのは「明らかに違法」
「労働者と会社との間では『労働契約』が締結されています。就業時間は決まっており、それ以外の時間については拘束されないのが原則です」
白鳥弁護士はこう述べる。ということは、飲み会に参加する義務はなさそうだが・・・。
「そうですね。会社の打ち上げ飲み会に、参加を強制する法的根拠はありません。
したがって、『参加しない従業員のボーナス・給与を減らす』と言って、参加を強制することは許されません。
こうした飲み会への参加をしつこく強要すれば、パワーハラスメントにも該当すると考えられます」
飲み会参加の強要は「パワハラ」にあたる可能性もあるようだ。では、実際に参加せず、ペナルティを受けてしまったら、どうすればいいのだろう?
「就業時間に応じて、給与を支払うというのが、労働契約の内容です。
就業時間外の飲み会に参加しないからといって、従業員の給与を実際に減らすことは、明らかに違法です。
ボーナスについては、業務成績などあらゆることを考慮要素に入れることができるとされていますが、ボーナスを減らす理由が『飲み会不参加』であれば、それは不当な査定であるといえるでしょう」
飲み会出席が強制なら、逆にそれを業務ととらえることができないだろうか。そうすれば、会社側に残業代を請求できる気がするが・・・。
「打ち上げの飲み会は、けっして業務ではありませんし、断わることができる余地があります。ですから、飲み会に参加した労働者の側が、残業代を請求することは、法的には難しいと思います」
どうやら面倒なことだが、「ボーナス減・昇給なしは違法だ」と会社側に主張するしかなさそうだ。同じような違和感を抱いた人たちと協力して、やんわりと伝えることができれば良いのだが・・・。