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「カワイイ」と言われると頭にくる――女性が男性を「カワイイ」と呼ぶのはセクハラ?
「カワイイ」と言われて、人知れず傷ついている男性もいるかもしれない

「カワイイ」と言われると頭にくる――女性が男性を「カワイイ」と呼ぶのはセクハラ?

プロ野球の観客動員数が伸びているが、その理由の一つとして、女性ファンの増加があげられている。そのためか、選手に対して、「カッコいい」や「たくましい」だけでなく「カワイイ」という評が目立つようになってきた。

有名なところだと、中日の浅尾拓也投手や巨人の坂本勇人内野手などが、「カワイイ」と評されることが多いようだ。

しかし、選手側の受け止め方はそれぞれだ。広島カープの一岡竜司投手は、顔がカピバラに似ていて「カワイイ」と「カープ女子」に人気だが、当の本人はイベントで「カワイイはあまりうれしくないです」とコメント。複雑な心境をのぞかせている。

プロ野球以外ではどうか。ネットで検索してみると、女性から「カワイイ」と言われることに、「バカにされているとしか思えない」「からかわれている気がする」と不快に感じる男性も珍しくないようだ。たとえば、会社で女性の上司が男性の部下に「君、カワイイね」と言ったりするのは、セクハラにならないのだろうか。大部博之弁護士に聞いた。

●職場ではセクハラになる可能性も

「『カワイイ』と好意的に言ったとしても、問題になる可能性はありますね。女性が加害者で、男性が被害者という場合でも、セクハラは成立しますから」

ごく気軽に使われている「カワイイ」なんていう発言でも問題になるだろうか。

「たとえば、職場で、女性の上司が、部下の男性社員に『カワイイ』を使ったときを考えてみましょう。

セクハラは『性的な言動』によって就業環境が害された場合に成立すると、男女雇用機会均等法では規定しています」

『カワイイ』という発言は、『性的な言動』に該当するといえます。さらに、こうした発言が何度も繰り返されたことが原因で、男性社員が不快感から仕事が手につかなくなったという場合は、就業環境が害されたとして、セクハラが成立する可能性があります」

もし、女性上司に「カワイイ」を連発されたら、若手男性は鼻白むかもしれない。

「そうですね。男性が抗議をしたにもかかわらず、それを無視して同様の発言がなされ、男性社員の仕事に支障が生じた場合、会社が女性上司に対して、戒告レベルの懲戒処分を下すことは可能でしょう」

●有名人とファンの関係では問題なし

では、ファンの女性が、プロスポーツ選手に対して発する「カワイイ」はどうだろう。

「たとえば、女性ファンが、あるプロ野球選手について、ブログやツイッターで『カワイイ』と書き込んだとしましょう。その書き込みで、選手が不快な思いをしたとしても、セクハラとして法的な手段を用いて対処することは難しいでしょうね」

選手が嫌な思いをしていたとしても、そうなのだろうか。

「はい。この場合は、同じ職場環境という状況ではないので、民法上の不法行為が成立するか、つまり『カワイイ』という発言がその選手の『人格権』を侵害したといえるかという点から考えることになります。

しかし、世間一般の男性を基準にしても『カワイイ』と言われることは、不快の程度としてそれほど大きなものとは言いにくいところもあるので、人格権侵害とまではいえないでしょう」

大部弁護士はこのように話していた。

便利に使われている「カワイイ」という言葉だが、場合によっては不快に受け止められる可能性があることも、気に留めておいたほうがよさそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

大部 博之
大部 博之(おおべ ひろゆき)弁護士 小笠原六川国際総合法律事務所
2006年弁護士登録。東京大学法学部卒。成城大学法学部講師。主に企業法務、訴訟を扱う。

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