大分市役所の女性正職員(19)が市内繁華街の飲食店でアルバイトをしていたことが6月中旬、地元紙などの取材でわかった。大分市もこれを認め「事情を聞いたうえで厳正に処分したい」と謝罪会見をした。
大分合同新聞によると、この職員は今年2月まで仕事帰りに週1日のペースで店に勤め、客の隣で酒をつぐなどして月6万円程度の収入を得ていた。職員は取材に対し「毎月の手取りは10万円を切り、6万円を実家に入れていた」「携帯電話料金などを払うと、ほとんど何もできない状態」などと話したという。
公務員の副業に関しては、5月にも大阪府内の高校に勤める女性教師が風俗店でアルバイトをしていたことが報道され、大きな問題となった。
公務員は、原則として副業をすることが法律で禁じられているとされる。なぜ、公務員の副業には厳しい制限が設けられているのだろうか。たとえ生活に困窮するようになったときでも、アルバイトは許されないのだろうか。労働問題に詳しい高島秀行弁護士に聞いた。
●特定の業種・会社に利益を与えていると、公務員が疑われるのは大きなマイナス
「公務員は法律で副業を禁止されています(地方公務員法38条・国家公務員法104条)。
その理由は、主に下記のような点です。
(1)他の仕事をすることで、肉体的や精神的に本業に集中できず、仕事に支障が出ることを防ぐため(職務専念)
(2)本業の秘密を、副業の際に利用、流出されないため(秘密保持)
(3)世間的にイメージの良くない副業につくことにより、勤務先の社会的な信用を損なわせないため(信用確保)」
―― 一見、会社勤めの人と、変わらないように思えるが?
「そうですね。副業によって問題が起きるケースがあるのは公務員以外でも同じで、一般のサラリーマンも就業規則で副業を禁止されていることが多いです。ただし、公務員の副業はさらに厳格に規制されているといえます。
その理由は、公務員が国民全体の奉仕者として、職務の公正や中立性を要求されているからです。特定の業種に利益を与えていると疑われるのは大きなマイナスです。国民に対して義務の履行を求める立場として、信頼を失うわけにはいきません」
●例外的に、アルバイトが認められる場合もある
「しかし、アルバイトが絶対に禁止されているかというと、そうではありません。所定の許可を得れば、公務員もアルバイトが可能です。許可をもらうためには、次の3つの要件を満たす必要があります。
(1)アルバイトにより本業の効率が落ちないと認められること
(2)アルバイトとしての勤務先と、公務員としての勤務先との間に利害関係がなく、今後も利害関係が生じる可能性がないこと
(3)公務員の社会的信頼や品位を損ねることがないこと」
――では、今回も許可を取ればよかった?
「そうですね。今回の大分市のケースのように家族へ仕送りが必要な場合は、『任命権者の許可』(地方公務員法38条)を得ればよかったということになります。
ただ、女性教師の風俗店でのアルバイトはもちろん許可されません。また、今の国民的意識からすると、お客の隣に座りお酒を注ぐなどの接客をする仕事は上記(3)に引っ掛かり、許可されないと思います」
なるほど公務員として働き続けたいなら、いくら「お金が足りない」といっても、できることには限りがあるようだ。