愛媛県松山市を中心に活動する農業アイドル「愛の葉Girls(えのはがーるず)」のメンバーだった大本萌景(ほのか)さん(当時16)が自殺したのはパワハラや過重労働が原因だとして、約9268万円の損害賠償を求めた訴訟。
訴えられた当時の所属事務所と社長が10月11日、遺族側の記者会見での発言や関連団体に掲載された内容などが名誉毀損に当たるとして、萌景さんの両親とその代理人弁護士などを相手取り、約3663万円の損害賠償を求めて東京地裁に反訴した。
会社側代理人は提訴後、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開き、社長は提訴した理由について「言われのない訴えと、メディアを最大限に利用した一方的な広報活動により、事実無根の悪評を拡散され、人生が変わり果ててしまう者が今後二度と現れてはいけないと考えた」とコメントを発表した。
●過重労働やパワハラ「いずれも事実ではない」
会社側代理人の渥美陽子弁護士によると、名誉毀損に当たるとしているのは、(1)遺族側の提訴記者会見における発言、(2)遺族側弁護士が共同代表理事を務める「日本エンターテイナーライツ協会」のウェブサイトに掲載された内容、(3)遺族側代理人の望月宣武弁護士が代表理事を務める「一般社団法人リーガルファンディング」のウェブサイトに掲載された内容、(4)萌景さんの母が公表した手記の内容、(5)望月弁護士が社長に言及したツイートーーの5点。
遺族側が、萌景さんが自殺した理由として主張している過重労働や事務所スタッフからのパワハラ、会社側の全日制高校進学費用の貸付撤回、萌景さんがグループを辞めると言った際に社長から「グループを辞めるのであれば1億円支払えと言われた」という「1億円発言」について、渥美弁護士は「いずれも事実ではない」と否定。
スタッフに脱退したい旨を伝えた際にLINEで「次また寝ぼけた事言いだしたらマジでブン殴る」と返されたという遺族側の主張については、「顔文字付きのもので、萌景さんも『あっかんべー』をした顔写真を送信している」と指摘。
スタッフに脱退したい旨を伝えた際のLINEのやりとり(会社側代理人提供)
「パワハラは行なっておらず、所属事務所などが進学を不可能にしたという事実や1億円を払えと言った社長の発言は存在しない」と反論した。
●「多くの取引先を失いました」「身の危険を感じた」
当時の所属事務所である農業生産法人「hプロジェクト」はコメントを発表。
同社は野菜の栽培や販売や、農業振興などの催事を行っているが、「『16歳のアイドルを過重労働、パワハラ、1億円発言により自殺に追い込んだ悪徳芸能事務所』というレッテルを貼られ、多くの取引先を失いました」という。
SNSなどを通じて大量の攻撃を受け、嫌がらせで刃物が送られてくることもあったといい、「関係者らは身の危険を感じながら日々を過ごさなければなりませんでした」、「不退転の覚悟を持って、現在係属している3件の訴訟について戦ってまいります」としている。
●「訴訟提起は証拠に基づく正当なもの」
「日本エンターテイナーライツ協会」の共同代表理事を務める遺族側弁護士5人は共同で以下のようにコメントした。
「当方の訴訟提起は証拠に基づく正当なものであり、名誉毀損にあたることは無いと考えています。他方、相手方の弁護士は、事件の相手方の弁護士に対して提訴しており、弁護士業務に対する不当な妨害です。弁護士職務基本規程70条にも違反します。訴状を確認したうえで、適切な対応を検討いたします」