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酒席で会社から「解雇宣告」、「言った」「言わない」論争に発展…こんな通告は有効?
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酒席で会社から「解雇宣告」、「言った」「言わない」論争に発展…こんな通告は有効?

飲んでる席で解雇宣告されましたーー。悲痛な投稿が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられました。会社側とは「クビにした」「クビにしていない」の水掛け論になっているそうです。

相談者によれば、飲み会の席で「あと2日でクビ」と言われたため、「2日でクビになるなら今日辞めます」と言い返したそうです。しかし、その後、「突然の解雇だったので労働基準監督署に相談して、会社に解雇予告手当の請求をした」ところ、勤務先からは思わぬ反応があったのです。

「お前が勝手に辞めた! 荷物持って出て言ったのはお前やろ!」として、解雇したのではなく、相談者自身が「辞める」と言い出した、というのが勤務先の見解だったのです。そして「裁判でも何でもしろ!」と吐き捨て、話し合いもできない状態だといいます。

飲み会の場での「解雇通告」は有効になってしまうのでしょうか。平山諒弁護士に聞きました。

●解雇の有効性を争う際の「2つのポイント」

法律的には、飲み会の場での解雇通告が直ちに無効というわけではありません。

しかし、常識的に考えて、解雇するという重要な話を飲み会の場でするべきではありません。話自体が冗談なのか本気なのかも分からなくなってしまいますし、相談事例のように「言った」「言わない」の水掛け論になってしまいます。

解雇の有効性等を争う裁判になったときには、「解雇通知が正式にあったのか」「有効な解雇といえるかどうか」が問題となります。

相談者の例でいえば、会社は、次のような手続きをとるべきでした。

・解雇通知の書面を交付して言い渡す

・解雇をする理由を適切に設定し、解雇理由証明書を作成できるようにする

このようにして、「不当な解雇ではない」ことを証明する必要がありました。また、相談を寄せた従業員の方としても、売り言葉に買い言葉で返すのではなく、まずは書面で「解雇通知」や「解雇理由証明」を求めるなどして、紛争化した時に備えるべきでした。

●「解雇予告手当」を支払う必要が生じる

また、懲戒解雇の場合などの例外はありますが、解雇日の30日前までの解雇通知をするか、または30日分以上の平均賃金を「解雇予告手当」として支払うなどしなければなりません(労働基準法20条)。勢い任せに「クビだ」となっても、それで済む問題ではないのです。

このように、相談者のケースは、解雇自体の有効性(あるいは解雇の問題ではなく、自主退職だという主張の当否)が争いになる余地は十分ありますし、もし不当解雇だとなれば損害賠償問題にも発展しかねません。解雇のような重要な話は、会社も労働者も、その場の勢いではなく、法律に則り、慎重に進めていく必要があります。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

平山 諒
平山 諒(ひらやま りょう)弁護士 府中ピース・ベル法律事務所
中央大学法学部、一橋大学法科大学院卒。労働事件中心に地域の事業者の企業問題に注力。府中ピース・ベル法律事務所代表。

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