会社を訴えたことの報復で雇い止めされたとして、東京の大手タクシー事業者「kmグループ」に所属する「国際自動車株式会社(新宿)」の元従業員10人らが10月7日、会社や社長らを相手に地位確認と損害賠償など計約5500万円を求めて、東京地裁に提訴した。原告らは「(裁判を受ける権利を保障した)憲法32条を無視する暴挙で許せない」と話している。
kmグループのタクシー事業をめぐっては、2012年から計56人が未払い残業代の支払いを求めて、それぞれが所属する子会社を相手に裁判を起こしている。原告らもその一員で、現在東京地裁で係争中だ。
原告の10人はいずれも65歳以上。1年契約の有期雇用者で、定年退職後に再雇用された。訴状などによると、残業代未払いで訴えられた子会社のうち、原告10人が勤めていた「国際自動車(新宿)」だけが、裁判を起こした元従業員に対し、「裁判をやるなら次の契約はない」などと、裁判をやめるよう働きかけていたという。要求を断ると、会社は契約期間満了を理由に原告らを雇い止めした。
原告10人のうち、7人は裁判所に「賃金仮払仮処分」を申し立てている。原告によると、この裁判の中で、当時の会社社長が「会社の制度が誤っているとして提訴した者と会社が新たな契約締結をする必要はない」などと、雇い止めの理由が裁判だったことを明言しているという。
仮処分を申し立てた7人のうち、すでに4人の結果が出ており、東京地裁が「裁判を起こしたことを理由とする雇い止めは無効」として、仮処分の決定を出した。原告らは「本裁判でも同様に勝訴判決を得たい」と話している。一方、親会社に当たるkmグループ本社は「取材は本社で受けるが、訴状が届いていないので今はコメントできない」としている。