会社の経費でコンビニご飯を買った際、Tカードのポイントを加算させたら、経理部から「物言い」がついた――。このような内容が今年5月上旬、インターネット掲示板に書き込まれて、話題になった。
投稿者の会社では、出張中の飲食費はすべて経費で落ちるようだ。先日、出張先のコンビニでご飯を買った際、Tカードのポイントを加算した。ところが、会社の経費精算時に、レシートを見た経理部の担当者が「経費で落としたものに個人的なポイントを得るのは業務上横領だ」と騒ぎ立てたのだという。
投稿者は「マイル加算も当然だった」「前の経理担当も今までなにも言わなかった」「(部署)全員がOKだと認識していた」と困惑している。そもそも、会社の経費でモノやサービスを購入したとき、個人のカードにポイントを貯めることは法的に問題あるのだろうか。光永享央弁護士に聞いた。
●原則として、ポイントは会社に帰属する
「出張中の飲食費がすべて経費で落ちるというのは、うらやましいですね(笑)。
それはさておき、会社の経費の支払いに対して付与されたポイントは、原則として、会社に帰属します」
光永弁護士はこのように述べる。もし自身ののカードにポイントを貯めたらどうなるのだろうか。
「たとえば、会社があらかじめ、決済時に会社名義のクレジットカードやポイントカードを使用するというルールを就業規則などで定めていたとします。
その場合、社員があえて自己のカードを使用してポイントを自分のものにしたとしたら、懲戒処分や刑事罰(業務上横領罪等)を受けるリスクがあります」
●事前に会社に確認しておくべき
とくに、社内ルールが定められていなかった場合はどうだろうか。
「その場合、社員の責任を問うことは難しいと考えます。
社員が自己のカードでポイントを取得しなかった場合、そのポイントは宙に浮いて、会社のものにもなりません。いわば、会社は無関心ゆえに、ポイント取得の権利行使を怠っていたといえます。放棄した権利をほかの人が得ることを非難するのは筋違いです。
社員が実際に支払った金額を経費として請求する以上、会社には財産上の損害が発生していませんので、業務上横領にもあたらないでしょう。
また、一般的な100円あたり1ポイント程度の還元率で、高額といえない買い物を処分対象とするのは相当といえません。
なお、マイルはそれなりに経済的価値が高いといえますが、搭乗者個人を対象として付与されます。会社(法人)が取得・使用する仕組みがないというサービスの性質上、会社がマイルの帰属を主張することはできないと考えます」
今回の投稿者のケースはどうなるのだろうか。
「少なくとも、会社が、これまで問題にしてこなかったポイント取得行為を過去にさかのぼって懲戒処分の対象にすることは許されません。
ただし、社員側も、経費で高額なモノ・サービスを購入する場合のポイントの処理方法については、信義則上(労働契約法3条4項)、事前に会社に確認すべきでしょう」
光永弁護士はこのように話していた。