福岡県八女市の星野川で、川遊びに訪れた人が相次いで同じ場所で溺れて死亡する事故が起きた。
現場周辺は、SNSで「夏休みに川遊びするならここが最高!」などと紹介され、多くの人が訪れるスポットになっていたという。
実際に検索すると、澄んだ水が流れ、「映える」場所として人気を集める理由もうかがえる。だが、朝日新聞によると、地元では以前から「危ない川」として知られていたという。
SNSによって地域の魅力が広く知られること自体は悪いことではない。しかし、危険な場所での川遊びを勧めるような投稿に、法的な問題はないのだろうか。清水陽平弁護士に聞いた。
●SNS投稿だけで直ちに法的責任は問われない
基本的には、危険な場所での川遊びを推奨するようなSNS投稿をしたというだけで、直ちに犯罪が成立したり、法的責任を負ったりすることは難しいと考えられます。
犯罪が成立するには、原則として「故意」が必要です。たとえば「その場所で遊べば死ぬことがまず確実」であることを知りながら、あえて遊ぶよう勧めた──といった極めて限定的な事情が必要になります。
一般的なSNS投稿で、そのような意図をもって発信されるケースは、ほとんどないと思われます。
●事故との「因果関係」を立証するハードルも高い
民事上の損害賠償責任についても、故意または過失に加え、投稿と事故との間に「相当因果関係」が認められる必要があります。
たとえば「その投稿を見たから川遊びをした」といえれば、いわゆる条件関係は認められる可能性があります。しかし、そもそも投稿を見たこと自体を立証するのは容易ではありません。
さらに、仮にその立証ができたとしても、同じ投稿を見て訪れた人の多くは事故に遭っていないと考えられます。そのため、投稿と死亡事故の間に法的な意味での相当因果関係があると認められる可能性は低いでしょう。
●危険行為を積極的に勧める投稿は別の問題
このように、危険な場所での川遊びを勧める投稿だけを理由に法的責任が認められる可能性は、一般的には高くありません。
とはいえ、たとえばライフジャケットを着用せずに滝つぼへ飛び込むことなど、類型的に極めて危険な行為を積極的に推奨するケースでは、法的責任を負う余地はあります。
自然を相手にするレジャーでは、投稿が他人の行動に影響を与える可能性も踏まえ、安易な発信は控えることが望ましいといえるかもしれません。
●八女市は「遊泳注意区域」を設定
八女市は、水難事故が相次いで発生したことを受けて、「ホタルと石橋の里公園」近辺の星野川一部流域を「遊泳注意区域」に指定した。
市防災安全課によると、今年2件目の水難事故が発生した7月22日の2日後、現場の上流側に「遊泳禁止」のロープを設置するなどの対策をとった。
ロープより下流は浅瀬が広がり、子ども連れで水遊びを楽しむ人も多い。一方、上流の一部には急に深くなる場所があり、事故防止のため立ち入らないよう呼びかけている。「川全体が危険というわけではない」という。
地元では以前から、この深みについて「危ない場所」として知られていた。しかし近年は、InstagramなどのSNSで紹介されたことをきっかけに、市外から訪れる人も増えたという。
防災安全課長は弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「二度と事故が起きないようにしたいという思いです」と話した。