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除染作業員の「危険手当」をピンハネする業者 「不当な搾取」は犯罪ではないか?
「特殊勤務手当」が業者にピンハネされて、作業員に渡らないというケースが報告されている

除染作業員の「危険手当」をピンハネする業者 「不当な搾取」は犯罪ではないか?

福島第一原発の事故にともなう除染作業はいまも続いている。線量が高い除染特別地域で働く作業員には、危険手当として「特殊勤務手当」が国から支払われることになっているが、あいだに入っている業者がピンハネして作業員に渡らないというケースが報告されている。

特殊勤務手当は、作業員の被曝の危険性や精神的不安に対応した手当で、本格的な除染作業の場合は、原則として1日1万円が国庫から支払われる。昨年11月にピンハネの問題が表面化し、厚生労働省の調査で今年3月までに11件の不払いが判明した。

だが、作業員に口止めしたり、二重帳簿を作成して不払いの隠ぺいを続けている会社もあるようだ。東京新聞の報道によると、東京都内で開かれた除染作業員の支援集会でも、「危険手当が不払いなのに、支払いがあるように偽装した契約書を書かされた」といった声が寄せられたという。

このように除染作業を請け負う業者が、作業員の危険手当をピンハネしたり、偽装目的の書類にサインさせる行為は、罪にならないのだろうか。指宿昭一弁護士に聞いた。

●危険手当のピンハネを直接処罰する法律はない

「除染作業を請け負う業者が、作業員の危険手当(特殊勤務手当)をピンハネすることは、社会的にみて許される行為ではありません。

環境省も『手当は被曝(ひばく)の危険性と精神的労苦に対するもので、作業員に支給されていないとすれば大変な問題だ』とコメントしています。

しかし、残念なことに、危険手当のピンハネを直接処罰する法律はありません」

――そんなバカな話が許されていいの? ピンハネは「搾取」では?

「もし、危険手当を作業員に渡さないことが、労働基準法(労基法)で禁止されている『中間搾取』にあたれば、業者は処罰されます」

――法律でいう『中間搾取』ってなに?

「労基法6条が禁止している中間搾取とは、『他人の就業に介入して利益を得る』ことです。これに違反すれば、1年以下の懲役または50万円以下の罰金という刑事罰も規定されています(労基法118条1項)」

――具体的にはどんなこと?

「典型的なケースとしては、業務請負契約を結んで、中間業者がピンハネをする『偽装請負』を思い浮かべてください」

――業務請負契約とか偽装請負って何のこと?

「まず、業務請負契約というのは、その名前のとおり、『仕事を請け負う契約』です。典型的には、以下のような構造になっています。

(1)仕事の発注者

(2)元請け業者

(3)下請け業者

(4)下請け業者に雇われた作業者

業務請け負いがこんな構造になっている場合、作業者に直接、指揮命令するのは、本来『下請け業者』でなくてはなりません。

ところが、下請け業者と作業者の雇用関係は形だけのもので、実際は元請け業者が直接、作業者に指揮命令しているケースがあります。これが『偽装請負』です。

『他人の就業に介入して利益を得た』というのは、こういった場合です。つまりこの例だと、下請け業者が『中間搾取』(労基法6条違反)などで処罰されます」

――実態に反する書類へのサインを求められた作業者もいるようだが……?

「業者が、危険手当の支払いを偽装する目的で、作業員に書類のサインをさせる行為は社会的にみて許されることではありませんが、それが直ちに犯罪になるわけではありません。

ただ、たとえば、下請け業者が偽装書類を用いて、元請業者をだまし、危険手当相当分の報酬を受け取ったような場合には、詐欺罪が成立し、処罰される可能性があります」

なお、環境省は当編集部の取材に対し「手当が作業者に渡ることは、環境省と元請け業者の間で結ぶ契約の仕様となっている。報告があったケースではその都度、元請け業者に指導を行い、改善している」としていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

指宿 昭一
指宿 昭一(いぶすき しょういち)弁護士 暁法律事務所
労働組合活動に長く関わり、労働事件(労働者側)と入管事件を専門的に取り扱っている。日本労働弁護団常任幹事。外国人研修生の労働者性を認めた三和サービス事件、精神疾患のある労働者への使用者の配慮義務を認めた日本ヒューレット・パッカード事件、歩合給の計算において残業代等を控除することは労基法37条違反かどうかが争われている国際自動車事件などを担当。

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