夫婦共働きなのに家計はほとんど妻である私が支え、育児もほとんど全てを私がやってきたーー。こんな女性が離婚する場合、財産分与はどのように決まるのだろうか。ある女性からの相談が弁護士ドットコムに寄せられた。
相談者によれば、共働きで年収は妻のほうが高い。ところが「家計の負担は妻7割、夫3割」で、就業時間は同じだったにもかかわらず、家事育児についても9割は妻が負担してきたという。住宅ローンも妻が支払いをしてきたという。
こうした事情は、離婚時の財産分与にどう影響するのだろうか。五十嵐里絵弁護士に聞いた。
●離婚時の財産分与「2分の1ルール」
ーー離婚する際の財産分与は、どのように決まるのでしょうか
「離婚する際の財産分与については、夫婦が半分ずつ財産を分けるというのが大原則で、『2分の1ルール』と言われます。結婚生活の中で築かれた財産に関する夫婦の貢献度は、基本的に平等であると考えられるためです。
夫が働いて収入を得て、妻が専業主婦で家事と育児に専念しているという場合でも、妻の家庭内での貢献があってこそ夫が収入を得られると考え、離婚の際には専業主婦の妻にも50%の貢献度が認められるのが通常です」
ーー今回のケースでは、どうでしょうか。家計に加え、家事や育児までも奮闘してきたそうです
「2分の1ルールはあくまで原則ですから、個別のケースでそれぞれの事情に応じて貢献度が判断される可能性があります。
たとえば、夫婦の一方の特別な才能や才覚により、多額の資産が形成されたとみられる場合、他方の貢献度が2分の1を下回るものとされ、財産分与の割合もこれに従うことになった事例もあります。
今回のケースのように、夫婦が共働きであるにもかかわらず、妻の方が家事負担が重く、年収、家計負担も多かったという事情がある場合には、妻の貢献度が高く認められ、分与の割合が2分の1を上回るということもあり得ると思われます。
ただし、現在の裁判所の実務では2分の1ルールが根強く浸透しているので、妻側の貢献度が高いということを裏付ける事実を、客観的資料をもって積極的に示していく必要があることには注意が必要です」