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「夫の世話という謎タスクが発生」家事育児をしない夫…離婚はできる?
写真はイメージです(Ushico / PIXTA)

「夫の世話という謎タスクが発生」家事育児をしない夫…離婚はできる?

コロナ禍で夫婦ともに在宅勤務になったという家庭が増えています。

子育て中の女性にとっては、家事育児にも積極的に取り組む「イクメン」は、大いに頼りになるもの。一方で、ネット上には「大きな子どもがいるみたいでイライラする」「『夫の世話』という謎タスクが発生して余計に疲れる」など、家事育児をしない夫への不満の声も上がります。

弁護士ドットコムにも、そんな夫と離婚したいという相談が複数寄せられています。

夫婦で共働きをしているというある女性は、夫が「お前が文句を言うから」「俺はやったことないから」などと言い訳し、家事育児をまったくやらないそうです。女性は離婚に向けて準備を進めており、「夫との離婚は認められますか」と聞いています。

家事育児をしない夫との離婚は、法的に認められるのでしょうか。伊藤俊文弁護士の解説をお届けします。

●法律に定められている「夫婦協力義務」

ーー家事や育児をまったくしないという夫の行為は法的に問題ないのでしょうか。

ここ数年で「イクメン」という言葉も定着し、男性の育児休暇取得が話題になるなど、家事や育児にも男性が積極的に関わることが求められる時代に変わろうとしています。

法律でも男性が家庭生活に積極的に関わるように定めています。民法752条は「夫婦は、同居し、互いに協力し扶助しなければならない」としています。

この「夫婦協力義務」は当然、家事や育児にも適用されます。夫が正当な理由なく、家事や育児に協力しなければ、この義務を放棄していることになります。

ーー「正当な理由」とは、具体的にどのような事情を意味するのでしょうか。

「正当な理由」とは、病気などやむを得ない事情を指します。「疲れているから」「俺の仕事ではないから」といった言い訳が含まれないことは明らかですね。

ーー妻が専業主婦の場合であっても、「夫婦協力義務」はあるのでしょうか。

はい、あります。専業主婦だからといって、家事や育児を丸投げできるわけではありません。

●実際に離婚が認められた裁判例も

ーー夫が家事や育児をしないことを理由に、離婚が認められる可能性はありますか。

先ほど述べたように、もし「疲れているから」「俺の仕事ではないから」などの言い訳ばかりで夫が家事育児をしないならば、「夫婦協力義務」を放棄しているとして、裁判上の離婚原因として認められている「配偶者から悪意で遺棄されたとき」(民法第770条1項2号)にあてはまる可能性があります。

ただ、どんな場合でも、「悪意の遺棄」として認められるわけではありません。 

たとえば、何度話し合っても、一向に夫の態度が改まらない、妻に負担が偏ったことで心身ともに疲弊してしまった、これ以上、改善の余地がないと判断されるケースです。

ここまで関係が悪化すれば、「悪意の遺棄」に該当するとして、離婚が認められる可能性は十分にあり得ると考えられます。

これ以外にも、家事や育児放棄のほかに、他の様々な原因と組み合わさって、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法第770条1項5号)と認められる場合もあるでしょう。

ーー実際に、家事育児をしないという理由で離婚が認められた裁判例はあるのでしょうか。

あります。夫の育児・家事への協力不足から、妻が婚姻生活に失望し、別居を望むようになったという状況について、裁判所は次のように論じました。

「表面的には夫婦生活を営んでいたものの、夫婦を結びつける精神的絆は既に失われていたものと評価することができる」

そして、民法第770条1項5号により離婚が認められました(東京地方裁判所・平成15年=2003年8月27日判決)。

(弁護士ドットコムライフ)

プロフィール

伊藤 俊文
伊藤 俊文(いとう としふみ)弁護士 フェアリー・ウェル法律事務所
大阪府出身。名古屋大学法学部卒。平成17年10月大阪弁護士会登録(58期)。平成17年10月~平成20年12月大阪市内の法律事務所にて勤務弁護士として従事、平成21年1月フェアリー・ウェル法律事務所にパートナー弁護士として合流。

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