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DV夫からの離婚請求、妻がそれでも「応じるべきか」苦悩する事情
写真はイメージです(プラナ / PIXTA)

DV夫からの離婚請求、妻がそれでも「応じるべきか」苦悩する事情

DV夫から離婚請求され、困っていますーー。弁護士ドットコムにこのような相談が寄せられている。

相談者は夫に外見に関することなどで暴言を吐かれたり、暴力を振るわれてきたため、子ども(未就学児)を連れて別居中だ。暴力を振るわれた事実については、証拠となる写真や診断書を持っているが、警察などに相談したことはないという。

そんな中、夫からの離婚請求があった。子どもには障がいがあるため、相談者は思うように働けず、専業主婦をしており、夫から生活費はもらっているそうだ。

相談者は夫との離婚を望んでおらず、このまま別居を続けたいと考えている。夫からの離婚請求は認められるのだろうか。白谷英恵弁護士に聞いた。

●DV夫からの離婚請求、認められなかった裁判例も

ーーDVをおこなった夫からの離婚請求は認められるのでしょうか。

配偶者の家庭内暴力から避難するためには、別居せざるを得ません。

相談者の場合も、夫の家庭内暴力・暴言から避難するために、相談者が家を出て別居を開始したものの、様々な事情から離婚したいとの思いにまで至ってはいない状況で、暴行をした夫から離婚請求をされたというものだと思われます。

過去には、夫の暴行を避けるために別居をした妻に対する夫からの離婚請求を、裁判所が認めなかったという離婚裁判があります(東京地裁平成10年1月30日判決)。

<詳しくはこちら→「車に飛び込んで死んでしまえっ」DV夫からの離婚請求が認められなかったワケ【判例を読む】

裁判所は、妻が別居を決意した理由が夫の暴行にあったこと、妻が離婚に応じる確定的な意思を持つに至っていないこと、夫が態度を反省して積極的な努力をするようになれば婚姻関係は修復の可能性があると考えられること等から、「婚姻関係を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)があると認めることができないと判断したのです。

ーー別居については、どのように判断されるのでしょうか。

別居は外形的には婚姻関係の破綻を示す一事情となり得ますが、「婚姻関係を継続し難い重大な事由」の存否については、婚姻生活における一切の具体的事情が考慮されて判断されます。

相談者の場合も、夫の家庭内暴力から避難するためという別居の経緯、障がいのある未就学児がいること等の事情からすれば、相談者が婚姻生活の修復への期待を失っておらず、いまだ離婚を決断するに至っていない間は、夫からの離婚請求は認められない可能性が高いと考えます。

●離婚しないと決めた場合、どうすれば?

ーー今後、相談者がとりうる対策としてはどのようなことが考えられますか。

夫から支払われている生活費の金額が不十分または生活費の支払いが滞る場合には、夫に対する婚姻費用分担請求調停を家庭裁判所に申し立てることをおすすめします。

また、市区町村の窓口において、児童手当等の子に関する手当の受給者を夫から相談者へ変更することや、別居後の住所を知られたくない場合には、夫に相談者の住民票等の写しの交付を制限させること(DV等支援措置)などの手続も考えられるでしょう。

プロフィール

白谷 英恵
白谷 英恵(しらたに はなえ)弁護士 弁護士法人法律事務所オーセンス
神奈川県弁護士会所属。離婚・男女問題、相続問題などの家事事件を中心に、交通事故や刑事事件など身近な法律問題を数多く取り扱う。市町村での女性のための相談室の法律相談員、弁護士会での子ども人権相談の相談員、市民相続セミナーなども担当。

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