VTuberグループ「にじさんじ」の「夢月ロア」さんが、「元所属ライバーをいじめて引退に追い込んだ」とする内容の配信によって名誉を傷つけられたとして、配信者に損害賠償を求めていた訴訟で、裁判上の和解が成立した。
運営会社のANYCOLORと、夢月さんの代理人をつとめる小沢一仁弁護士が8月13日、それぞれ公式サイトとXで公表した。
和解は5月18日付。夢月さんがいじめや嫌がらせをした事実は存在しないことなどが確認され、配信者が夢月さんに謝罪する内容となっている。
夢月さんは、5年以上前から活動休止している。
●「いじめ行為をした事実は存在しない」
ANYCOLORの発表によると、配信者は2020年10月以降、自身のYouTubeチャンネルなどで、夢月さんが元所属ライバーに対していじめや嫌がらせ行為をおこない、引退に追い込んだとする内容の配信を複数回にわたっておこなったという。
ANYCOLORは発表で、このライバーの名前を伏せているが、小沢弁護士が公表した和解条項には「金魚坂めいろ」と記されている。
夢月さんは名誉毀損などの被害回復を求め、配信者の身元を特定したうえで提訴していた。
今回の和解では、夢月さんが特定のライバーに対して、いじめや不当な嫌がらせ行為をおこなった事実は存在しないこと、また、他のライバーやANYCOLORと共同して、そうした行為をおこなった事実も存在しないことが確認された。
「また、対象者(編注・配信者)は、『夢月ロア』に対し、インターネットその他SNS等においていじめの『証拠』として拡散した画像や情報については、第三者から提供された虚偽の情報等に基づくものであり、対象者が行った動画配信の内容は事実に反するものであったと認めております」(ANYCOLORの発表より)
これらを踏まえ、配信者が夢月さんに謝罪する内容で和解が成立した。
●なぜ「判決」ではなく「和解」だったのか
小沢弁護士はXへの投稿で、判決ではなく和解による解決を選んだ理由について説明している。あわせて、一部を黒塗りにした和解条項も公表した。
小沢弁護士によると、当初は、中傷のきっかけとなった動画を配信した相手の責任を追及するために提訴した。
しかし、訴訟を進める中で、最終的には別の判断に至ったという。
「単に金銭請求に関する判断を判決で得るよりも、どのような経緯で相手方VTuberの配信がされることになったのかを和解手続において確認することの方が、夢月ロアさんの名誉回復という観点からは適切だと、夢月ロアさんとともに判断しました」
●配信休止やイベント不参加も「圧力目的ではない」
和解条項によると、原告と被告の双方は、夢月さんが金魚坂めいろを含むANYCOLOR所属・元所属のVTuberに対し、同社や第三者と共同で、あるいは単独でいじめ行為をした事実は存在しないことを確認した。
別紙には、次のような事実も記されている。
夢月さんの配信休止やイベント不参加、SNSでの発信が、金魚坂めいろに精神的な圧力をかける目的でされたものではないこと。
夢月さんが金魚坂めいろに対し、訛り(なまり)の模倣を指摘したり、修正を求めたりした証拠は存在しないこと。
ANYCOLORが夢月さんに対し、金魚坂めいろへの直接連絡を禁じた事実は存在しないこと。
双方はこれらに反する情報を発信しないことを確約。違反した場合には1回あたり10万円の違約金を支払うことや、互いに誹謗中傷をしないことも定められた。
●問題から約5年半「長い間ご支援いただき、ありがとうございました」
小沢弁護士は今回の公表にあたり、夢月さんを支えてきたファンにも感謝を述べた。
「本件が問題になってから約5年半が経過しましたが、現在に至るまでも、当時本件について夢月ロアさんや私が投稿したポストに、いいねやリポストが付きます。夢月ロアさんにとっては大きな励みになったと思います。長い間ご支援いただき、ありがとうございました」
一方、小沢弁護士の投稿では、今後の夢月さんの活動について具体的な言及はなかった。
●ANYCOLOR「妥協のない厳正な法的措置」
ANYCOLORは今回の発表で、誹謗中傷や荒らし行為、悪質な情報漏洩などについて、民事・刑事の両面から「妥協のない厳正な法的措置を講じる体制を強化しております」と強調した。
そのうえで、ファンや関係者に対して「多大なるご心配とご迷惑をおかけいたしましたことを、深くお詫び申し上げます」としている。