知り合いの元妻が、離婚内容などを赤裸々にSNSに投稿しているーー。弁護士ドットコムにこのような相談が寄せられた。
相談者によると、投稿したのは男性と離婚した元妻。離婚に至った経緯や、男性の両親への恨みつらみ、そして風俗に通っていたことなど、赤裸々な内容が投稿されていたという。男性の実名も書き込まれており、誰でも閲覧できる状態になっているようだ。
他人の離婚内容をSNSで公開することは、「名誉毀損」にあたるのだろうか。また、風俗に数回行ったことは不貞行為にあたるといえるのだろうか。長瀬佑志弁護士に聞いた。
●名誉毀損にあたる可能性がある
ーー実名入りで他人の離婚内容を赤裸々にSNSで公開する行為は「名誉毀損」にあたる可能性はあるのだろうか
「名誉毀損に該当する可能性があるといえます(民法723条)。同条にいう『名誉』とは、客観的な社会的名誉を指すものであって、名誉感情は含まれないと解されます(最判昭和45年12月18日)。
名誉毀損が成立するためには、(1)人の社会的評価を低下させるような事実の流布をしたこと、(2)(1)についての故意または過失、(3)(1)により人の社会的評価が低下する危険が生じたこと、が必要とされます。
今回のケースでは、実名入りで赤裸々に公開された離婚内容は、社会的評価を低下させるような事実といえます。加えて、SNSに公開されれば、他人に広がることは容易に想定できることでもあり、(1)〜(3)の要件をいずれも満たすといえます」
●風俗通いはすべて「不貞行為」にあたるとは限らない
ーー公開されている投稿には、男性が風俗に数回通っていたことを「不貞行為」とする記述があったようだ。風俗に通うことは「不貞行為」にあたるのだろうか
「『不貞行為』(民法770条1項1号)とは、(1)性交又は性交類似行為、(2)同棲、(3)1、2のほか、配偶者の立場に置かれた人を基準として、夫婦間の婚姻を破綻に至らせる可能性のある異性との交流・接触をいうと解釈されています(判例タイムズ1278号45頁)。
肉体関係を伴う性的サービスや、性交渉に類似したサービスの提供があれば(1)に該当します。また、夫側が風俗通いに熱を上げて、別の女性と頻繁に交際することを継続するのであれば、(3)に該当することも考えられます」
ーー風俗店を利用した場合、全てが「不貞行為」にあたるのだろうか
「そうとも限りません。夫が風俗店を利用したことは不貞行為にあたらないと判断したとも思われる裁判例があります(平成25年3月22日東京地裁判決)。
また、クラブのママがいわゆる『枕営業』として顧客と性交渉を繰り返したものの、妻との関係では不法行為を構成しないと判断した裁判例もあります(平成26年4月14日東京地裁判決)」