離婚時の「親権」とは?監護権との違いや決まる基準・流れをわかりやすく解説

「離婚後も子どもの成長を見守りたい」と願うのは親として当然の感情です。

しかし、正しい知識がないまま話し合いを進めると、思わぬところで不利になることがあります。

この記事では、親権と監護権の違い、裁判で親権が決まる「5つの基準」、2026年施行の「共同親権」や今すぐやるべき準備について、実際の相談事例を交えてわかりやすく解説します。

目次

  1. 「親権」とは?子どもの利益を守るための2つの権利
  2. 「親権」と「監護権」の違いとは?分けて持つことは可能?
  3. 離婚時に親権者を決める「3つの方法」と流れ
  4. 調停・裁判で親権者を決める際に考慮される主な事情
  5. 親権争いがこじれそうな時に「今すぐ」やるべき準備
  6. 我が子を守るために|親権で揉めそうなら弁護士に相談を
  7. よくある質問(FAQ)

「親権」とは?子どもの利益を守るための2つの権利

親権の概要を説明する図 親権とは、民法に基づき、未成年の子どもを養育し、その財産を管理するために親に認められた権利と義務の総称です。単に「子どもと一緒に住む権利」ではなく、子どもの人生に関わる重要な決定を行う法定代理人としての責任を伴います。 親権は、大きく分けて次の2つの権利で構成されています。

1. 身上監護権(子どもの身の回りの世話や教育をする権利)

身上監護権とは、子どもの日常生活の世話や教育を行う権利と義務のことです。 具体的には、以下のようなものが含まれます。

  • 居所指定権:子どもがどこに住むかを決める権利
  • 職業許可権:未成年の子どもが仕事をする際に許可を与える権利
  • 教育やしつけを行う権利:進学先の決定や医療行為への同意など、子どもの成長に関わる判断を行う権利※

※ただし、しつけの際には体罰や子どもの心身に害を与える言動をしてはいけません(民法821条)。かつては「懲戒権」という規定がありましたが、児童虐待の口実に使われるケースがあったため、2022年の民法改正により削除されています。

2. 財産管理権(子どもの財産を管理し、契約などを代行する権利)

財産管理権とは、子どもの財産(預貯金、不動産、相続財産など)を管理し、子どもに代わって契約などを行う権利です。 たとえば、未成年の子どもが携帯電話を契約する時や、祖父母から遺産を相続した場合などに、親権者が法定代理人としてこの権利を行使します。 当然ながら、親権者が子どもの財産を私的に流用することは法律で禁止されており、あくまで子どもの利益のためにのみ使用しなければなりません。 実際に、みんなの法律相談にも、「未成年の子の財産を親が勝手に処分するトラブル」に関する相談が寄せられています。

親権の濫用になるのでは?

相談者の疑問 親権者である親が勝手に子供の荷物、お金を処分すると言っています。15歳の本人は非親権者の元で現在生活しており帰るつもりは無いとの事です。
>> 質問の続きを見る

岡村 茂樹の写真 弁護士の回答岡村 茂樹弁護士 1.親権の内容には、子どもの財産管理権限が含まれますが、これは、子どもの利益・福祉の観点から適切に行使しなければなりません。>> 回答の続きを見る

親権の対象は「18歳未満の未成年」の子ども

親権の対象者を示す図 民法の改正により、2022年4月1日から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。そのため、親権の対象となるのは18歳未満の未成年の子どもです。 18歳になった時点で親権は自動的に終了し、子ども自身が法律行為(契約など)を行えるようになります。

「親権」と「監護権」の違いとは?分けて持つことは可能?

離婚の話し合いでは、「親権は父親、監護権は母親」といった形の提案をされることがあります。 この「監護権」とは何か、そして「親権」と「監護権」を分ける場合のメリット・デメリットについて解説します。

身上監護権だけを切り離したものが「監護権」

監護権とは、親権を構成する2つの権利のうち、「身上監護権(育てる権利)」だけを切り離したものです。 つまり、監護権を持つ親は、子どもと一緒に暮らし日常的な世話や教育を行いますが、財産管理や契約を代行する「法定代理人としての権限」は持ちません。一方、親権(この場合は財産管理権と法定代理権)を持つ親は、子どもと同居する義務はありませんが、重要な契約などの決定権を保持します。 みんなの法律相談には、「高校を無理やり退学させようとする親」に関する相談が寄せられています。

子供に対する親の権利

相談者の疑問 高校生の子供がいます。父親が学校を退学させて家から出ていかそうとしています。子供は、学校に行きたいと言ってます。
>> 質問の続きを見る

弁護士の写真 弁護士の回答 扶養してない未成年の子供を親が好き勝手にできるのでしょうか
→親権の行使の濫用であり許されません。>> 回答の続きを見る

親権と監護権を分けるメリットはある?

かつて、単独親権のみだった頃は、双方が譲らない場合の「妥協案」として、親権と監護権を分ける提案が行われることがありました。 しかし、2026年4月の法改正により「共同親権」が選択できるようになった現在、親権と監護権をあえて分ける必要性は極めて少なくなっています。 ▶︎詳しく知りたい:共同親権はいつから?メリットや養育費・面会交流への影響をわかりやすく解説

親権と監護権を分けると、進学や医療同意でトラブルになることも

もっとも、話し合いがまとまらない場合などに「親権」と「監護権」を分けること自体は現在も可能です。 しかし、監護権者には「法定代理人としての権限」がないため、実務上は以下のような場面で必ず親権者の同意・署名が必要となり、トラブルになるケースがあります。

場面 起こりうるトラブル
進学先の決定 監護権者だけでは手続きできず、親権者の同意が必要
医療行為の同意 親権者の同意が必要。連絡が取れず治療が遅れる
パスポート申請 親権者の署名が必要。監護権者だけでは申請できない
携帯電話の契約 親権者の同意が必要。監護権者だけでは契約できない

離れて暮らす親権者が常に協力的であれば問題ありませんが、離婚後に関係が悪化したり連絡が取れなくなったりすると、子どもの生活や進路に重大な支障をきたしてしまいます。

離婚時に親権者を決める「3つの方法」と流れ

親権者の欄に記載がないと離婚届が受理されないことを示す図 未成年の子どもがいる夫婦が離婚する場合、必ず離婚後の親権者を指定しなければならず、決まっていない状態では離婚届は受理されません。 現在は法改正により「共同親権(双方が親権を持つ)」と「単独親権(どちらか一方が持つ)」のどちらかを選択できるようになっています。 親権者の決め方は、どの離婚手続きをとるかによって異なり、大きく次の3つに分けられます。夫婦の話し合いでまとまらない場合は、調停、裁判へと進んでいくことになります。 詳しく知りたい共同親権はいつから?メリットや養育費・面会交流への影響をわかりやすく解説

1. 協議離婚(夫婦の話し合いで決める)

最も一般的な方法です。夫婦が話し合いによって、離婚するかどうかや、共同親権にするか単独親権にするか(単独の場合はどちらが親権を持つか)を決定します。 離婚届には親権者を記入する欄があり、合意して記載しなければ受理されません。

2. 離婚調停(家庭裁判所の調停委員を介して話し合う)

夫婦だけの話し合いで合意できない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。調停委員が間に入り、双方の意見を聞きながら客観的なアドバイスを行い、合意に向けて調整を図ります。 あくまで話し合いの場なので、強制的に親権者が決められることはありません。

3. 離婚裁判(裁判官が事情を考慮して親権者を指定する)

調停でも合意に至らない場合、最終的には裁判に進みます。裁判では、裁判官が双方の主張や証拠を検討し、「子どもの利益」を最優先に考えて親権者を指定します。 裁判では、監護実績、経済力、住環境、子どもの意思などが総合的に判断されます。

調停・裁判で親権者を決める際に考慮される主な事情

調停や裁判で親権者を決める際、裁判所は「子どもの利益(子どもの福祉)」を最優先に考え、さまざまな事情を総合的に判断します。 裁判所が公式に一定数の判断基準を定めているわけではありませんが、親権者を決める際には、たとえば次のような事情が考慮されます。

  • 監護実績(継続性の原則):これまで誰が主に育ててきたか
  • 子どもの意思:15歳以上は必須、10歳前後でも尊重
  • 主たる養育者との関係:日常的な世話をしてきた親との関係
  • 兄弟不分離の原則:兄弟姉妹はできるだけ離さない
  • 経済力・住環境:住環境や養育体制が安定しているか
  • 他方の親との関係・親子交流への協力姿勢:親子交流や他方の親との関係に協力的か

それぞれの基準について、詳しく見ていきましょう。

最も重視される「継続性の原則(これまで誰が育ててきたか)」

裁判所が最も重視するのは、これまで主に誰が子どもの世話をしてきたか(監護実績)です。 子どもにとって、慣れ親しんだ環境や養育者を急に変えることは、大きなストレスとなります。そのため、裁判所は「現状を維持することが子どもの利益になる」という考え方(継続性の原則)を基本とします。 たとえば、母親が主体となり長年子どもの世話を担ってきた場合、裁判所は母親が親権者となる傾向が強くなります。逆に、父親が主に育児を担ってきた実績があれば、父親が親権者となる可能性が高まります。 監護実績を証明するためには、以下のような記録が有効です。

  • 保育園・学校の連絡帳(誰が送り迎えをしたか)
  • 通院記録(誰が病院に連れて行ったか)
  • 育児日記やスケジュール帳
  • 写真や動画(日常的な育児の様子)

みんなの法律相談にも、「監護実績」に関する相談が寄せられています。

主な監護者の判断基準について教えていただけますか?

相談者の疑問 子どもの引き渡し・監護者指定・保全請求の調査官調査についてお伺いさせてください。子が産まれてから3年間は共働き期間でその間は夫側が体調不良の対応や3ヶ月の入院も付きっきりであったが、>> 質問の続きを見る

吉田 英樹の写真 弁護士の回答吉田 英樹弁護士 お困りかと思いますので、お答えいたします。
主な監護者の判断は、出生からの通算期間だけで機械的に決まるものではなく、現在の生活実態や直近の監護状況、子の安定性が重視される傾向があります。>> 回答の続きを見る

15歳以上は「本人の意思」を重視、10歳前後でも尊重される

「子ども本人の意思」は年齢によって、どの程度尊重されるかが異なります。

子の年齢 内容
15歳以上 意見聴取が法律で義務化されている 本人の意思が重視される
10歳前後 明確な意思表示ができる年齢と判断される 本人の意見が尊重される
10歳未満 年齢に応じて、可能な範囲で考慮される

ただし、15歳以上であっても、子どもの意思が「親からの誘導や圧力」によるものではないかは慎重に確認されます。そのため、本人の希望がそのまま通る(絶対的な決定要因になる)わけではありません。

主たる養育者優先の原則や、兄弟不分離などのルール

その他、裁判所が考慮する基準として以下のようなものがあります。

  • 主たる養育者優先の原則(旧・母性優先の原則):かつては「乳幼児は母親優先」とされていましたが、現在はジェンダーの観点から見直される傾向にあります。生物学的な母親かどうかではなく、「どちらが日常的に世話(母性的な役割)をしてきたか」が重視されます。
  • 兄弟不分離の原則:兄弟姉妹がいる場合、できるだけ一緒に育てることが望ましいとされます。ただし、他の原則(監護実績など)に比べると優先度は低く、子どもの年齢が上がるほど重要視されなくなります。
  • 経済力:生活環境として考慮はされますが、決定的な要素ではありません。不足分は「養育費」や公的支援で補う前提があるため、経済力が劣る側でも監護実績があれば親権を獲得できます。
  • 親子交流への協力姿勢:他方の親との親子交流に協力的かどうかも、子どもの利益に関わる事情として考慮されることがあります。

みんなの法律相談には、「収入がない専業主婦の親権獲得」に関する相談が寄せられています。

離婚前の親権争いについて

相談者の疑問 旦那に離婚はしてもいいけど、親権は譲らないと言われました。離婚届を受理するには親権の欄は空白だとダメと記事で見たことがあります。>> 質問の続きを見る

後藤 貞和の写真 弁護士の回答後藤 貞和弁護士 専業主婦かつ子がまだ小さいということで、相談者が子育てをしてきたのなら、むしろ圧倒的に有利なのは相談者の方です。>> 回答の続きを見る

親権争いがこじれそうな時に「今すぐ」やるべき準備

親権争いが調停や裁判に発展しそうな場合、感情論ではなく「客観的な証拠」を準備しておくことが最も重要です。

日々の「育児実績」の証拠を集め始める

裁判所が最も重視する「監護実績(これまで誰が主に育ててきたか)」を証明するため、まずは日々の育児記録(母子手帳、保育園の連絡帳、写真や育児日記など)を今すぐ手元に確保し、記録し始めましょう。

【注意】勝手に子どもを連れ去る行為は圧倒的に不利になる!

親権争いが激化すると、「相手に子どもを取られる前に、自分が連れ去ろう」と考えるケースがありますが、これは絶対にやってはいけない行為です。 相手の同意や法的手続き(監護者指定の審判など)を経ずに子どもを勝手に連れ去る行為は、裁判所で「子どもの利益を無視した自己中心的な行動」とみなされ、親権争いで不利になります。場合によっては、刑法上の「未成年者略取誘拐罪」に問われるリスクすらあります。 どんなに焦っても、強引な連れ去りは自滅行為になるため注意が必要です。 みんなの法律相談にも、「子の連れ去り」に関する切実な相談が寄せられています。

助けてください。夫に子供を連れ去られました。

相談者の疑問 離婚することが決まり親権争いで今月の20日から調停することが決まっていましたが、4日前に息子を連れ去られてしまい会わせてもらえなくなりました。>> 質問の続きを見る

大岩 和紀の写真 弁護士の回答大岩 和紀弁護士 子の監護者指定、子の引き渡しの仮処分の申立を速やかに弁護士に相談の上、必要に応じて依頼されるとよいかと思います。>> 回答の続きを見る

我が子を守るために|親権で揉めそうなら弁護士に相談を

親権争いは感情的な対立が激化しやすく、当事者同士では解決が難航しがちです。 そんな時は、弁護士の無料相談を利用すれば、現在の状況に合わせて以下のような具体的なアドバイスをもらえます。

  • 法的な視点からの「親権を獲得できる可能性」
  • 集めるべき証拠や、進め方のアドバイス

また、実際に依頼した場合は、相手との直接交渉や、調停・裁判などの法的手続きをすべて代理してもらえます。 多くの法律事務所は初回無料相談を実施しており、「無料相談のみ(正式な依頼はしない)」という形でも全く問題ありません。 「相手が親権を譲らない」「自分が親権を取れるのか不安」とお悩みの方は、一度、弁護士の意見を聞いてみることをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

Q1: 専業主婦で現在収入がありません。経済力がないと親権はとれませんか?

いいえ、収入の有無だけで親権がとれないということはありません。不足する生活費や教育費は、相手から「養育費」として受け取るのが前提の制度です。そのため、経済力よりも「これまでどちらが子どもの世話をしてきたか(監護実績)」が最も重視されます。

また、実家のサポートを受ける場合には監護補助者のサポート内容(経済面、養育面)も考慮されます。

Q2: 相手の不倫が原因で離婚します。親権争いで有利になりますか?

法律上、「配偶者としての不適格性(不倫)」と「親としての適格性(育児能力)」は分けて考えられます。そのため、不倫をしたからといって直ちに親権がとれなくなるわけではありません。

ただし、不倫相手に夢中になって育児を放棄していた(ネグレクト)などの事実があれば、親権争いで大きく不利になります。

Q3: 離婚後に、一度決めた親権者を変更することはできますか?

可能ですが、親権者の変更は、当事者間の話し合いではできません。必ず家庭裁判所に「親権者変更調停(または審判)」を申し立てる必要があります。

法律上は「子の利益のため必要があると認められる場合」に限って変更が認められるため、環境の変化などを客観的に証明する十分な理由や証拠が求められます。

Q4: 2026年に導入された「共同親権」とはどういうものですか?

2026年4月1日より、離婚後も父母双方が親権を持つ「共同親権」が選べるようになりました。

基本的には父母の話し合いで「共同」か「単独」かを決めますが、まとまらない場合は裁判所が決定します。共同親権になった場合、進学や重大な医療行為などは原則として父母双方の合意が必要ですが、日常的な世話や緊急時の対応は単独で行えます。

なお、DVや虐待の恐れがあるなど、共同での子育てが困難な場合は、裁判所の判断でこれまで通り「単独親権」となります。

この記事の監修者
小田 紗織弁護士のプロフィール画像
神戸マリン綜合法律事務所
小田 紗織 弁護士
(兵庫県弁護士会)
監修者のプロフィールを見る

この記事は、公開日時点(2026年06月24日)の情報や法律に基づいています。

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